長野市民病院の地方独立行政法人化を考える[その1]

 長野市民病院は、H7年6月に開院以来、生活習慣病を主体とする急性期高度医療の提供や救急医療の充実を図り、地域の中核病院としての使命と役割を担ってきた長野市民の医療機関です。

 今年の3月市議会では、長野市民病院の経営をH28年4月に地方独立行政法人に移行するため、新たな法人の「定款」や、市民病院の経営を評価監視する「評価委員会設置条例」が賛成多数で可決されました。

 この議決により、来年4月の地方独立行政法人への移行の法的な整備が整ったことになります。市民病院の地方独法化に関する、これらの議案に対し、私も賛成してきたところです。
 *長野市民病院のホームページ
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権限強める病院理事長の専断を防止
病院経営をチェックする市議会の参画・関与の強化を提唱

 しかしながら、市民病院が地方独立行政法人(以下、地方独法)となることで、公立病院の役割である政策医療が後退しないよう設置者である市の責務がより重要になるとともに、経営権限を任される理事長等の判断が「一人歩き」し、経営ありきで利潤追求を優先するような病院経営に陥らないように厳しく監視する仕組みが求められることになります。

 私は、市民病院の地方独法化を審議してきた福祉環境委員会において、市民のための市民病院であり続けること、公立病院としての責務と役割の継続、市内の他の総合的病院との役割分担の制度設計、病・病連携のあり方、そして設置者である長野市及び市議会の関与の強化といった観点から、この問題を質してきました。

3月議会における委員長報告…「市議会の積極的な参画」求める

 過ぐる3月議会の福祉環境委員会は、その委員長報告に「長野市民病院の地方独立行政法人化に関しては、市の附属機関として設置される『長野市民病院評価委員会』の役割が大変重要となることから、運営方針、中期目標及び中期計画などの重要項目の審議について、市、病院及び市議会それぞれの役割を踏まえ、市議会の積極的な参画を要望する」と盛り込みました。

 地方独立行政法人法では、市民病院が提供する医療、サービスの向上、経営改善などの基本を定める「中期目標」(長野市が評価委員会の意見を聴き作成)や、これに基づく「中期計画」(地方独立行政法人が作成)は、いずれも議会の議決が必要とされ、議会の責任と関与が定められています。
 この意味で、議会の責任は今まで以上に極めて大きなものとなります。

 しかし、中期目標等の策定過程における議会の関与や経営チェックに対する議会の責任が希薄であることから、「市議会の積極的な参画」を求めることになったものです。

「評価委員会委員への議員の就任」求める最大会派

 実は、委員会審議において、最大会派「新友会」や「改革ながの」を中心にして、「設置される評価委員会に議会代表を委員として加え、議会の関与を強めるべきである」との意見が展開されました。

 長野市議会は、執行機関が設置する付属機関(審議会・委員会等)に議会代表を構成員とすることについて、「執行機関が設置する付属機関等は、本来、政策形成や行政執行をスムーズに行うために、調査・審議等を行うものであり、このような政策形成過程において議会が執行機関と同じ立場で係ることは、議会本来の機能と相反するもので好ましくない」(H13年5月18日)との考えをまとめ、「法令に定めのあるもの及び公民館運営審議会を除き、議員は付属機関等の委員に就任しない」ことを行政側に通知し、今日を迎えています。
 ただし、例外的に都市内分権審議会には議員が委員として参加しています。当時の鷲沢市長の新たな政策として都市内分権が構想化され住民自治協議会として具体化されるにあたり、議会側の意見を反映していくことが重要であるとの認識によったものです。

 市側は、H13年の議長通知を踏襲しつつ、「市議会総体の意見がまとまれば、委員として構成することはやぶさかではない」とする一方、「評価委員会への議会代表のオブザーバー参加や評価委員会と議会との意見交換など検討したい」としてきました。

二元代表制の原則に立ち、議会との協議の場のルール化を求める

 私は、最大会派等の意見に対し、例外的対応はあるものの、H13年段階に市議会が決めたルールは、二元代表制にあって原則的に維持・尊重すべきルールであると考えていること、医療や経営の専門家等6人以内で構成されるとする評価委員会に議会代表(今回は福祉環境委員会委員長を想定)が加わっても、市議会の全体的な意見反映とは必ずしもならないことからなどから、評価委員会委員と市議会との定期的な協議と、その協議の場における市議会の意見の反映に一定の拘束力を持たせる仕組みが必要であると主張してきました。

評価委員会運営要綱(案)示す…「市議会との意見交換」「議会の意見は十分に斟酌する」と規定

 5月7日に市側は、地方独立行政法人による病院経営のチェックにあたり、市議会の参画・関与を強めるための仕組みとして、市の附属機関として設置され、地方独立行政法人長野市民病院の経営を中立的・専門的な立場から評価する「評価委員会」の運営において、「市議会福祉環境委員会との意見交換会の実施」を評価委員会運営要綱に規定する考えを議会側に示しました。

 運営要綱(案)によれば、「委員会は、地方独立行政法人法第11条第2項の事務に関し、長野市議会福祉環境委員会の意見を聴く機会を設け、その意見を十分に斟酌して当該事務にあたるものとする」と規定したいとするものです。

 この案に対する最大会派等の評価や動向は承知していませんが、要注目でしょう。

改めて「評価委員会条例」に規定できないか、追求したい

 「斟酌」という用語は、法令上は「参酌」に統一されていると思うのですが、いずれにしても何とも曖昧さを残す表現です。
 運営要綱に規定する現在の考え方そのものは、一歩前進であると受け止めていますが、市議会との意見交換会の開催、議会意見の反映は、評価委員会の審議への市議会の積極的な参画・関与の基本となる事柄ですから、「要綱」ではなく「条例」に書き込み、より拘束力を持たせることが望ましいと考えます。

 これまでの市民病院の土地や建物、医療機器等の基本財産は、市から法人に継承されることになります。市民病院は地方独法化しても市民の税金は引き続き投入されます。であるからこそ、市議会の責任は重大であり、市民病院の経営に対し議会の関与をよりしっかりと担保していくことがより重要であると考えるからです。

そもそも地方独立行政法人化とは何ぞや

 「市民病院の地方独法化を考える(その1)」は、既に市民病院を地方独法化するレールが議会議決により敷かれ、病院経営を評価・監視する「評価委員会」が動き出すことから、直近の動向から、まずは報告しました。

 市民病院の地方独法化は、そもそも、「地方独立行政法人化とは何ぞや」から始まる問題です。

 [その2]では、地方独立行政法人化のメリット、デメリット、設置者である市の責任と関与、そして市議会の責任と関与、さらに市民病院に求められる医療サービスのあり方についてまとめたいと思います。

【参考】長野市民病院の地方独立行政法人化について[長野市公式ホームページ]