サッカースタジアム…「3千万円で立見席を椅子席に」の怪?!

 H27年2月の完成に向け建設中の南長野運動公園総合球技場(サッカースタジアム)について、市側は7日、長野県サッカー協会など球技スポーツ団体や商工会議所等からの要望を受けて、立見席としてきたサイドスタンドを5,000席の椅子席に変更する場合の経費を公表、「工事中に変更する場合はプラス3,000万円、竣工後の新たな工事の場合はプラス9,000万円」との試算を明らかにし、「工事変更であれば当初の事業費80億円内にギリギリ収まる。5月を目途に総合的に判断したい」との方針を議会側に示しました。今日付けの信濃毎日新聞にも報道されました。

説明資料より。上部がメインスタンド。ゴールネット裏のサイドスタンド(赤線部分)を立見席から椅子5000席に変更を検討するとした

説明資料より。上部がメインスタンド。ゴールネット裏のサイドスタンド(赤線部分)を立見席から椅子席に変更を検討するとした


 南長野運動公園総合球技場におけるサッカースタジアムの整備は、AC長野パルセイロのJ2昇格を見据え、J1リーグ基準を満たす15,000席のスタジアムとして80億円の事業費で整備する計画としてスタートしたものですが、プロポーザル契約により71億4千万円で随意契約し、その後12月市議会で、設計労務単価の引き上げや資材費の高騰を受けて79億7千万円に契約を変更してきました。
サイドスタンドの断面図

サイドスタンドの断面図

 そもそも、サッカースタジアム整備は、J1リーグ基準を満たすことを条件に(当初はJ2リーグ基準を満たすものとされていましたが)経費を圧縮することを主眼に置いて対応し、サイドスタンドは立見席とすることを基本にして市民の理解を得てきたはずです。
 
 振り返って、12月市議会では、「2019ラグビーワールドカップ誘致のためには椅子席化が必要、しかし莫大な経費がかかり十分に検討する必要がある」(市長発言)とされ、「ラグビーワールドカップ誘致のための工事変更の検討」と受け止めてきた経過があります。

 ところが、ラグビーワールドカップは”呼び水”みたいなもので、実際は異なるようです。
 7日の市側の議会への説明では、2月下旬に行った日本サッカー協会(JFA)との協議で、JFAから次のような意見が出され、どうも「色めき立ってしまった」感があります。
➊千葉市のフクダ電子アリーナ(フクアリ)以来10年ぶりのスタジアムで注目される。
➋FIFA(国際サッカー連盟)、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)の試合では、全席椅子席であることが必要。
➌長野スタジアムの優位性として、セキュリティーの確保が容易、隣接する体育館や室内プール、テニスコートの活用でより高いホスピタリティの提供が可能、東京からのアプローチが良い、海外での知名度が高い、夏季の冷涼な気候があげられる。
➍全席椅子席になれば、なでしこジャパンや全日本男子アンダーチームの国際試合の開催が可能であり、2020東京五輪のキャンプ地として各国に推薦していくことも可能。

 これらのこと(少なくとも➊から➌の事柄)は、基本計画の段階でわかっていたことなのではないでしょうか。いやいや、わかっていなければならなかったというべきでしょう。
 国際試合の開催が可能といっても、競技団体が誘致に積極的に動かなければ実現はしないはず、現段階では何の担保もありません。

 現工事で対応すれば「(立見用の)手すりの設置や撤去費用が発生しないから著しく安価で対応できる」と強調するのですが、「9,000万円の増工より3,000万円の増高の方がお得、これで国際試合が誘致できれば地域活性化にもつながる」みたいな安易な発想が見え隠れします。

 2月のJFAとの協議に色めき立ち「全席椅子席」の方針を固め、競技団体や経済団体を市側から動かしたのではないかと勘繰りたくなるような経過です。不可解すぎます。「怪」です。

 経費面だけを考えれば、3,000万円の増工は選択肢となりうるでしょう。また立見席より椅子席の方が安全で良いでしょう。しかし、計画段階ではJリーグ側も「立見席で問題なし」とされてきた一件です。
 約80億円の事業費の財源は、5億円の県からの補助が決まったとはいえ、予定する6億円の寄附金をいかに確保していくのかという大問題も残っています。

 J1リーグ仕様のサッカースタジアム整備にあたり、果たしてどんなコンセプトでどのように市民に説明してきたのか、改めて検証するとともに、現在の立見席のままの場合で、どんな不都合や決定的なデメリットがあるのか、国際試合の誘致に可能性があるのか、市側に説明責任を果たすよう求めていきたいと考えます。

 費用の多寡はともかく、方針転換であることにもっと責任を持ってもらいたいと思います。

 AC長野パルセイロが今季優勝してJ2に昇格できることを心待ちにしている一人です。パルセイロの活躍が地域の活性化にもつながればとも思います。
 こうした願いとは別次元で、事が動いているように感じます。

 このままでは、6月市議会に再度の契約変更議案が提出されそうな気配です。皆さん、ご意見をください!

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