郡山市…子ども総合支援センター『ニコニコこども館』

長野市議会福祉環境委員会の行政視察の報告です。

まずは、5月23日の福島県郡山市です。

放射線被害の影色濃い経済県都…

人口332,824人、面積757.20km2、人口密度440人/km2。福島県中通り中部に位置する中核市である。日本遺産にも認定された明治政府初の国営農業水利事業「安積開拓・安積疎水開削事業」により飛躍的に発展し、東邦有数の交通拠点都市を形成。「経済県都」とも称される。仙台市、いわき市に次いで東北地方で3番目に人口の多い都市である。

東日本大震災と福島原発災害からの復興途上にあるが、市役所庁内には市民のための「食品等放射能測定」のコーナーが継続して設置されている。郡山駅前にも放射線測定器が設置されている。放射能被害の深刻さがうかがえる。

郡山市公式サイト「自家消費野菜等の放射能検査を実施しています」

郡山市の視察テーマは、子育て支援の拠点施設である郡山市子ども総合支援センター『ニコニコこども館』である。郡山市こども部こども支援課長に案内をいただく。

郡山市子ども総合支援センター「ニコニコこども館」のページ

震災前のH21年(2009年)4月1日に郡山市役所の西隣にオープンした「ニコニコこども館」には、郡山市の子育てに関する支援体制が集約されており、子育ての情報・窓口・機能を1箇所に集めたことにより、利用者にとって分かりやすく利用しやすい施設となっている。

施設整備に約14億円、1日当たり約710人が利用

施設は元ホテル(教職員共済のホテル)の土地建物を廃業とともに市が取得し、総事業費12億円で整備。特定財源は国のまちづくり交付金3.9億、市債約1.54億の5.44億円。その後、内部改修や拡張工事などで1.9億円をかける。年間の運営費は約6,900万円。

1日当たり約710人が利用、開設後9年間で211万人が利用する施設となっている。整備当初は1日当たり300人を想定していたそうだが、予想をはるかに超える好評ぶりといってよい。

郡山市では、「ニコニコこども館」を拠点に、市内に東西南北4箇所に地域子育て支援センターをサテライト的に運営、相互利用が進んでいる点が特徴。

まさに「子育て総合支援センター」

1階は「遊びのフロアー」、保育士が常駐する親子の交流広場=ファミリー広場、ファミリーサポートセンター、一時保育の受付や子育てに関する情報提供のコーナー=子育て支援室、大型遊具を設置したプレイルームなどがある。

2階は「健康と福祉のフロアー」、一時保育室をはじめ、児童手当や子ども福祉医療費助成の窓口、母子手帳の交付、妊婦・乳幼児健診や子どもの健康に関する相談窓口が開設されている。

3階は「体験活動フロア」、屋上の広場を開放する「サンサン広場」、工作・昔遊び等の体験活動ができるこども体験活動室、研修室や世代間交流室を設け子育てサークルやボランティア活動の拠点として利用されている。

4階は「親子学びのフロア」、絵本・育児書等を取り揃えた子育て図書館をメインに、運動体験コーナーや家庭内で起こる事故防止の参考となる事故予防モデルルーム、読み聞かせの部屋等を整備。

5階は「子ども相談と教育支援のフロア」、不登校児童・生徒への生活・学習支援を行う「ふれあい学級」と学校不適応自動・生徒の個別指導を行う「すこやか学級」、不登校や発達障がいの相談支援窓口「総合教育支援センター」、「こども家庭相談室」やカウンセリング室等が設置されている。

行政窓口は土・日も開設

午前8時30分から午後6時まで開館(貸館は一部午後9時まで)。休館日は毎月第3土曜日とその翌日と年末年始の6日間のみ。

因みに長野市の子ども広場・じゃんけんぽんは、毎月第1・第3水曜日と年末年始が休館日、午前10時から午後6時までの開設となっている。

特に相談窓口をはじめ、母子保健窓口が土・日も職員配置で開設され、午後6時まで対応できるという点は驚きである。

直営が基本…職員体制73名

ニコニコこども館は、保育士・保健師・歯科衛生士・事務など正規職員36名、保育士・相談員・教諭OBなどの嘱託職員18名、臨時19名の計73名体制で運営され、さらに行政と子育て支援に関わる民間団体などが協力し、地域全体で子育てを応援する体制を築いている。一時保育、ファミリーサポートの事業はそれぞれ郡山市がNPO団体に委託、また郡山女子大学短期大学部幼児教育学科と連携し、授業の一環として子育てサロン等のサポートに学生がボランティアとして参加しているそうだ。

元気な遊びの広場…PEP Kids Koriyama(ペップキッズこおりやま)

屋内遊び場の福島原発事故により、放射線によって外で自由に遊べない子どもたちの肥満や体力低下などが問題となる中、屋内の子どもたちの遊び場として整備されたのが「PEP Kids Koriyama(ペップキッズこおりやま)」である。震災の年、2011年の12月にオープン、2000㎡規模の施設である。

元気な遊びの広場PEP Kids Koriyama(ペップキッズこおりやま)のページ

概要の説明を受ける。

「遊び、学び、育つ」 をコンセプトにした東北最大級の屋内遊び場で、70㎡もの砂場や三輪車のサーキットが人気だそうだ。他にも、イベントが豊富で、季節のイベント、臨床心理士による子育ての悩み無料相談やベビーマッサージなど親子で楽しめる。森や動物、四季の風景が自然を感じられる癒しの内装が施され、入館料は無料。そのため1日4回整理券を配布して、多くの人が利用できるようになっているとのことだ。

利用対象は、生後6か月~12歳の子どもとその保護者。

1日当たり935人が利用し、年間利用者は38.5万人に上る。開設後6年間で200万人を突破したそうだ。

地元企業の㈱ヨークベニマルが土地・建物を無償で提供、また遊具等の寄附(約1.2億円相当)をされる中、「郡山市震災後こどもの心のケアプロジェクト」として整備されたもの。

原発事故の被災地故の屋内施設の整備であるが、1日も早く、自由に外で遊べる環境を取り戻したいものである。

屋外施設と屋内施設の併用、財源確保が課題

担当課からは2つの課題が指摘された。

一つは、震災後の放射線量が増加する中で、ニコニコ館や「」などの屋内施設を整備してきているが、屋外活動の安全宣言を機に4つの屋外の遊び場をH29年度に整備してきたが、「いまだ不安を感じる」保護者が多く、屋内・外の施設の併用・利用をいかに図るかが課題。

2つは、財源の確保。屋内施設の「PEP Kids 」や屋外施設は国の災害復興交付金10/10を充当してきたが、H32年には復興庁が閉鎖され交付金の削減または廃止が想定される中、「子育て支援の施設・運営の質を下げずにいかに維持するか」とされた。

国の災害復興の継続が求められるところではあるが、今後の施設維持は被災地の重荷になる可能性は否定しがたい。子どもたちの持続可能で自由な遊び場の確保は原発事故被災地の大きな課題である。

郡山市の子育て支援策…学びたい点

子育て支援機能をワンストップ化する拠点施設の整備という点に尽きよう。

長野市で考えると、子ども広場である「じゃんけんぽん」(もんぜんぷら座内)や「この指とまれ」(篠ノ井)の施設と保育園等で開設する市内19箇所の地域子育て支援センター、市役所内に開設する「子ども相談室」、教育委員会・教育センター内の「相談窓口」などを統合した中核施設といえる。

また不登校児童生徒の「中間教室」、さらに子育て支援に関する手続きや母子保健福祉に関する手続き窓口も本庁から独立して併設されている点が大きな特徴である。

特に行政手続き窓口が基本的に土日も開設されていることは特筆すべきである。

サテライト的な地域子育て支援センターが4箇所という事情は長野市(保育園併設で19箇所)とは大きく異なるところであるが、ニコニコこども館と4つの子育て支援センターの相互利用(センターを巡回)が進み、センター毎の特徴ある運営がされている点も特徴といえよう。

子育て支援のワンストップ中核施設とネットワーク作りという整備発想に基づいているものと思われる。ネットワーク作りは新しい視点として検討したいところだ。

施設・機能の集約化にはメリット・デメリットがあるが、長野市内2箇所の子ども広場に子育て支援機能と行政窓口機能をある程度一元化するようなことが検討できないかと考える。現在の施設規模を考えるとなかなか難しいのだが…。

特に、当面、耐震補強で10年間施設の長寿命化を図る方針が示された「もんぜんぷら座」の10年後の施設のあり方を展望し、子育て支援機能の一元化・拡充が図れないか、十分に検討したいところである。

それにしても、放射能汚染による子どもの遊び場の確保(屋内⇒屋外)について改めて考える機会となった。過酷な原発事故を防止するためにも脱原発社会の実現が急がれることを痛感したところである。