経済文教委員会の視察報告➋高崎市「音楽のあるまち高崎」

経済文教委員会の2日目の視察地である高崎市の報告です。

高崎市

群馬県高崎市は人口370,751人、面積459.16㎢。県庁所在地である前橋市を上回る人口規模の中核市。広域交通の拠点であり、北関東有数の商業都市である。

高崎市の視察テーマは、「音楽のあるまち高崎」を掲げるまちづくりで文化芸術活動の取り組みと文化芸術を支える担い手の確保等である。

長野市民の文化芸術活動の拠点である「長野市芸術館」がオープンして1年。

「日常に音楽を」をコンセプトにする久石譲芸術監督を招聘し、さらに新日本フィルハーモニー交響楽団で専務理事・芸術主幹などを歴任された松原千代繁氏を総支配人に迎えた長野市文化芸術振興財団では、多くの自主事業を展開してきているが、市民の間に音楽を中心とした文化芸術活動の裾野を如何に広げるのか、市民に身近な音楽文化を如何に創り上げていくのかが課題となっていることから、視察地としたものである。

高崎市では、今年4月には国際大会に対応した新体育館「高崎アリーナ」が開館、さらにH31年(2019)3月には高崎駅東口に約240億円を投じ、2018席のメインホール等を擁する「高崎文化芸術センター(仮称)」をオープンさせる他、これに隣接する形でコンベンション施設の建設が県事業で予定されている。

総務部文化課の櫻井課長、文化事業担当の吉田係長、文化振興担当係長の加藤さんらから説明を受ける。

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「群馬音楽センター」を中心とする高崎市の文化芸術施設の概要

高崎市役所に隣接し、市の文化のシンボルとされる「群馬音楽センター」(S36.7開館・1932席)、このセンターに隣接して「群馬シンフォニーホール」(H3開館・大中小5つのホール)、さらに「高崎市文化会館」(S59.7開館・701席)、「高崎シティギャラリー」(H6.7開館・324席)があり、これに建設中の「文化芸術センター」(2018席)が加わることになる。

建設中の高崎文化芸術センターのパース図

建設中の高崎文化芸術センターのパース図

これらの5つの施設は「高崎財団」を指定管理者とし、高崎財団事業として展開される。

また、平成の合併により、旧箕郷町の「箕郷文化会館」(H4.7開館・601席)、旧新町に「新町文化ホール」(H3.4開館・489席)、旧榛名町の「榛名文化会館」(H7.5開館・505席)、旧吉井町の「吉井文化会館」(S54.5開館・507席)、計4つの文化施設をもち、これらは市直営で管理する。

これら4館の企画文化事業は高崎市事業として展開される。

公共施設マネジメントの観点から考えると、旧町の施設は維持管理が大変であろうと推察されるが、比較的新しい施設のため、施設ごとのイベントに特色を持たせ活用を広げる方針とされる。

全体で9つの文化芸術施設を擁する。

「群馬音楽センター」は、日本の近代建築に大きな影響を与えた巨匠アントニン・レイモンド氏が設計を手掛けたもので、築56年で老朽化しているものの、耐震基準はクリヤーしているとのこと。したがって、新たな「文化芸術センター」の建設により2000席規模のメインホールを持つ施設が二つ存在することになる。

稼働率では、「群馬音楽センター」が8割あるものの、旧町の文化施設は3割程度とされる。

群馬交響楽団の存在

高崎市の文化芸術活動は、公益財団法人「群馬交響楽団」の存在を抜きにして語ることはできない。
1945年、戦後の荒廃の中で文化を通した復興をめざし創設された「高崎市民オーケストラ」を母体に、「群馬フィルハーモニーオーケストラ」を経て、現在の「群馬交響楽団」に至るもので、地方管弦楽団の草分け的存在。

高崎市の群馬音楽センターを本拠地とし、楽団の事務局は高崎市役所内に置かれている。

1956年には、文部省により群馬県が全国初の「音楽モデル県」に指定され、1961年に建設された「群馬音楽センター」を拠点に幅広い活動を展開する。

1947年5月に始めた「移動音楽教室」では、これまでに県内延べ600万人以上の児童・生徒が鑑賞しているそうだ。

県段階では、中学校卒業までに3回、高校在学中に1回のオーケストラ演奏を聴くシステムが確立されている。

また、高崎市から委託を受けて、中高生対象の「楽器セミナー」に取り組む。

群馬交響楽団の公式サイトへ

文化スポーツ事業を支える「高崎財団」

S59年に、市民の文化促進・普及、文化施設等の管理運営を行い、文化の発展に寄与するために設立された「財団法人高崎市文化事業団」を前身とし、H17年にはスポーツ振興の財団と統合し「高崎市文化スポーツ振興財団」となり、公益法人制度改革等により、現在の「公益財団法人高崎財団」に至る。

➊「文化芸術センターや群馬音楽センターを中心とした施設を活用し、高崎らしい音楽、舞台芸術、映像、アート等の創造・発信」

➋「高崎アリーナを中心とした施設差を活用し、高崎市民のスポーツ振興、全国・国際レベルのスポーツ大会の開催を通じてスポーツ都市高崎を創造・発信」

➌「高崎の文化・スポーツ・公園等の都市施設や都市空間に全国・世界から集客を図り、高崎の都市力や経済活動、市民生活の向上に貢献できる事業を展開」

これら3つを柱に事業展開を図る財団である。

極めて広い分野を担うことから、職員は157人にのぼり、市の派遣職員11人が配属されている。

文化事業に限れば、文化芸術センターや群馬音楽センターを中心とした施設は「高崎財団」が担う自主事業として展開され、直営の4つの施設は高崎市の直営事業として実施、住み分けされている格好である。

長野市では「長野市文化芸術振興財団」にあたる組織である。

高崎財団の公式サイトへ

「音楽のあるまち高崎」を具現化する多種多彩な音楽事業と担い手育成

「音楽のあるまち高崎」を具現化する多種多彩な音楽事業が展開されている。

高崎音楽祭
H2年に市制90周年でスタートした企画で、クラシック、ロック、ポップス、吹奏楽などジャンルを超えたアーティストが出演し、クオリティの高いコンサートを中心とするイベント。

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高崎商工会議所会頭が会長を務める高崎音楽医委員会と高崎市が主催。市の補助金は2900万円。

高崎マーチングフェスティバル
市内の小中学校や市内外のマーチングバンドが参加し、市街地のパレードの他、フィールドドリルが行われる。前日には市内幼稚園・保育園の園児によるフィールドドリルも行われているそうだ。これもH2年から取り組まれている。

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高崎マーチングフェスティバル協会が主催し、市長が位階名誉会長、教育長が大会会長を務める。

H28年度では、パレードに43団体2919人(小32校、中4校、高2校、招聘団体5チーム)、フィールドドリルには22団体2250人(小10校、中3校、高2校、招聘団体5チーム他)が参加する。

総観客数は約32000人。
協会会員やPTAがボランティアで運営を支える。市の補助金は1700万円。

底辺拡大を図る「楽器セミナー」
音楽文化の底辺拡大を図るため、高崎市内の中学生(吹奏楽部生)を対象に、群馬交響楽団員の指導により正しい楽器の持ち方や音の出し方のセミナーを行っている。
H18年度から市が楽団に委託し毎年開催されているもので、これまでに学んだ中学生は延べで約3000人に上るそうだ

年に2回開催。1回目は6月に1年生を対象に、2回目は1月に2年生を対象とする。

1年生には早期の段階での指導を心掛けており、生徒からは好評とのことだ。

例えば、ナガノ・チェンバー・オーケストラのメンバーによる「楽器セミナー」の取り組みを、ぜひ実現したいものである。

高校生バンドフェスティバル
バンド活動をする高校生に発表の場を提供することで、高校生による音楽文化の創造と発展を目指す企画。

現役高校生等による実行委員会を組織し、主催者側として企画運営に携わってもらうことで、将来的な人材育成に寄与することも目的とする。

H18年から実施し、今年は第12回目となる。

会場は、市直営の新町文化ホールで、ホールの特色を演出している。

高校卒業後も運営スタッフに参加する若者が輩出されているそうだ。

まちなか音楽活動助成事業
市内の街角や商店などで行われる自主的な音楽活動を促進し、賑わいを創出するため、各地域の実行委員会が実施する音楽活動を助成するもので、H24年度から事業化している。

H29年度では、中心市街地の「高崎おとまちプロジェクト」(商店街代表者や音楽関係者で構成)が主催する路上ライブに600万円、合併町村の6地域に400万円を助成する。

高崎サウンド創造スタジオ=TAGO STUDIO TAKASAKI

プロ仕様の本格的なレコーディングスタジオで、運営責任者に音楽プロデューサーである高崎市出身の多胡邦夫氏を迎えている。

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H26年3月にオープン。多胡氏を指定管理者として運営する。

多胡氏は、浜崎あゆみやhitomi、Every Little Thing、柴咲コウ、AKB48に楽曲を提供している日本を代表する作曲家の一人。

多胡氏ご本人からレクを受けることができた。

コンピューターミュージックが主流になっている中で、生演奏のレコーディング文化にこだわったスタジオとして整備されているそうだ。

1日3万円以下の革新的な料金システムを導入する。「特別地域振興プラン」で、何らかの形で高崎市に貢献することを条件とする。
スタジオ利用料は、通常10万円、20万円が当たり前だそうだ。

H28年度で65組がレコーディングを利用、市民ラウンジは7677人が利用されているとのこと。

また、小中学生の校歌レコーディング体験が行われている。これまで23校が参加している。スタジオでの生歌を録音し、CDにしてプレゼントしているそうだ。なかなか素晴らしい企画だ。

高崎市では、この事業を通じて、市内のライブハウスや貸しリハーサルスタジオ、楽器店などの音楽関連施設の活性化にもつなげ、街のあらゆるところから新たな音楽が生み出されていく一連のムーブメントが、ビートルズに象徴される「リバプールサウンド」やエルビスプレスリーに象徴される「メンフィスサウンド」のように、『高崎サウンド』となることを目指したいとする。

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H28年7月には、「全国アマチュアミュージシャンフェスティバル」を催し、ファイナルステージでは布袋寅泰(元ボーイ)さんが出演し大いに盛り上がったとのことだ。

市はこのフェスティバルに3000万円を投入している。

自治体がレコーディングスタジオを設置整備する前例がない。市としてはかなり思い切った施策展開だ。群馬交響楽団や数々のトップアーティストを生み出している高崎ならではの取り組みといえよう。

高崎市の取り組みから学びたい点

➊歴史ある群馬交響楽団の存在があるとはいえ、実に多種多彩な音楽活動が展開されていることは驚きであった。すそ野の広い音楽文化を感じる。

高崎音楽祭をはじめ高崎マーチングフェスティバル、高校生バンドフェスティバル、全国アマチュアミュージシャンフェスティバルなど、クラシックに特化せず、若者を対象にした企画を支援している点は大いに学びたいところである。

市民が参加する音楽イベントが意識的に創造されている点は、長野芸術館を拠点する音楽文化・芸術活動に市民参加を促進していく仕掛けとして生かしたいものである。

「日常に音楽を、芸術を」を掲げる久石譲・芸術館監督のコンセプトを、いろいろな音楽ジャンルに広げていく仕掛けが必要と思われる。

一朝一夕に成果が上がる取り組みとはならないが、仕掛けは目的意識をもって作り上げていくことが重要であろう。

➌群馬交響楽団による中・高生を対象とする「楽器セミナー」は、例えば、ナガノ・チェンバー・オーケストラのメンバーによる「楽器セミナー」の取り組みとしてぜひ実現したいものである。

また、長野市を拠点に活動するアマチュアオーケストラ「長野市交響楽団」や長野市および周辺の音楽、吹奏楽愛好家による吹奏楽団「長野市民吹奏楽団」との連携も検討したいものである。

➍「音楽のあるまち高崎」を掲げつつ、「高崎財団」に対する指定管理料とは別に、様々な文化イベントに対して市が財政支援している点。

長野市も市芸術館オープンに合わせ、「表参道音楽祭」「アートメント・ナガノ」「街角アート&ミュージック」や「獅子舞フェスティバル」など、多彩な取り組みを展開してきているが、それぞれの財政支援等を検証し、今後の有り様を検討する必要がある。

➎市直営で管理する合併町の文化ホールの運営について、高校生バンドフェスティバルや市民演劇祭など、移設ごとのメイン企画を位置づけ特色を出している点

芸術館、東部文化ホール、中条音楽堂、松代文化ホール(所管は異なる)のそれぞれの役割を整理し特色ある運営が求められるところである。

余談

視察では、ダルマのお土産を頂戴しました。

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高崎市は妻の出身地で、駅東口に新しく建設される文化芸術センターの敷地に実家があり、義父は医院を開業していました。再開発に伴い、昨年、医院を閉じ、立ち退きをした経過があります。

高崎財団が主催する群馬交響楽団による「高崎元旦コンサート」は、議員になる前から数えてこれまでに5回足を運んでいます。

A席は3,000円でC席は2,000円、当日立見席は1500円と、格安な鑑賞料金が設定されています。そのため、抽選だそうですが。

「音楽のあるまち高崎」を具現化している取り組みの一つでしょう。