交通崩壊の危機を乗り越えたい【その2】

【その1】の続きです。

7月に入ってから感染者数が急増、25日までの1週間で1万人増え、累計で3万人を超える事態に。大都市圏だけでなく、長野県を含む地方でも第1波を...

深刻さ増す県内交通崩壊の危機

今日の朝刊、8月4日付の信濃毎日新聞が、県バス協会と県タクシー協会の5月・6月期の運送収入の悪化により、事業継続を危ぶむ声が強まっていると報道しました。

【出典】信濃毎日新聞8月4日・経済面

交通崩壊を防ごう…専門家の提言

交通政策に詳しい学者や交通事業者を中心につくられた「くらしの足をなくさない! 交通崩壊を止める緊急フォーラム運営委員会」が運営主体となって、4月以降、シンポジウムが取り組まれ、国交省に対する緊急提言等も展開されています。「新型コロナウイルスによる交通崩壊を防げ!」と銘打ち、コロナ禍におけるくらしの足維持に向けて、交通事業者、行政、学識、市民らと連携し、情報共有を行う特設サイトが開設されています。

全国自治体の交通事業者への支援一覧も掲載されており、日本モビリティマネジメント会議の特設サイトと併せて私も参考にしているサイトです。

新型コロナウイルスによる交通崩壊を防げ! くらしの足維持に向けて、交通事業者、行政、学識、市民らと連携し、コミュニケーション、提言、技術検討などを行う特設サイト

4月24日には、オンライン開催された「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム-新型コロナウイルスによる交通崩壊を止めろ!」の議論を踏まえ、『参加者一同のメッセージ』として緊急提言が取りまとめられアピールするとともに国土交通大臣にも提出されています。緊急事態宣言が全国化された直後の緊急提言ですが、紹介します。

➡緊急提言

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地方創生臨時交付金の活用に活路

国の新型コロナ対策関連の臨時交付金が1兆円から2次分として2兆円増額されています。2次交付分は長野県へは158億2700万円、市町村分が269億5000万円。長野市には31億円交付されることに。

既に6月補正予算等で臨時交付金を活用し、医療体制の充実や事業者支援などの経済対策、暮らしの下支えのための雇用対策や生活者支援などに充てられているところです。

長野市では、21億円の6月専決補正予算で臨時交付金14億円を充当、残りの17億円は今後の補正予算の編成に活用されることになりそうです。

新型コロナ対策に一般財源を充てることには限りがあり、臨時交付金を如何に有効的に活用するかがカギとなります。

➡公共交通分野で国が例示する臨時交付金の活用方法

臨時交付金を財源に、さらに交通崩壊の危機を乗り越えるための方策に乗り出してもらいたいところです。

とはいえ、臨時交付金は「損失補償」「人件費」「用地費」などに活用できない制限があり、国の臨時交付金の活用の手引きでは、公共交通分野においては、マスクや飛沫シート、消毒などの新型コロナの感染拡大防止、「新しい生活様式」に対応した運行支援を事例として示しています。

また、国の2次補正予算で国交省は、地域公共交通における感染拡大防止対策として138億円を盛り込みました。これは、自治体を通さずに、バス協会等を通じて国が交通事業者を直接支援する仕組みになっているようです。

先に紹介した日本モビリティマネジメント会議の太田恒平氏・㈱トラフィックブレイン代表取締役は国交省の138億円の活用や自治体における臨時交付金の活用について、次のような提言をしています。ヒントを得るという視点から紹介します。

クリックして20200607_jcomm_ota.pdfにアクセス

両備グループの提言…地方創生臨時交付金の活用に特例を

交通事業者である両備グループでつくる(一財)地域公共交通総合研究所(代表理事=小嶋光信)が提言をしています。

国土交通省は、新型コロナ対策における公共交通の維持に、自治体に交付する「地方創生臨時交付金」を活用した事例をまとめており、自治体の工夫ある取り組みが問われるところではあるのですが、

交通事業者の「損失補償」などには使えない仕組みとなっていることに対し、公共交通事業者を守るためには損失補償や人件費について特例で除外すべきと提言しています。

➡抜粋で引用

―支援金、交付金の「活用できない費用」の適用除外業種の特例が必要―

一縷の望みであるところの地方創生臨時交付金に至っては、活用できない経費として「損失補償」「人件費」「用地費」等が挙げられています。

「人件費」は新型コロナウイルス特例の雇用調整助成金をはじめとして思い切った助成が行われているので広く他産業は利用できるタイムリーな国の支援策と思いますが、「不可欠に業務を行う事業者」である公共交通には休業補償や雇用維持支援がほとんどなされない状況でした。

1.国は地方創生臨時交付金では公共交通事業は「活用できない経費」から損失補償や人件費について特例で除外すべき業種に指定すべきと提言します。

「損失補償をしない」という臨時交付金の条件は、休業も出来ず国民の生活や経済の確保という国の方針に従って運行した交通事業者には全く使えない、酷すぎる、厳しい条件です。一方で休業せず不可欠に業務を行うという「国の方針」に従って歴史上ありえないような損失が発生していながら「損失補償は無し」では、立つ瀬がありません。

今回の損失は経営努力で乗り切れる赤字ではなく、新型コロナウイルス感染による「自粛と緊急事態宣言下でも動かせ」という国の方針で生じたいわば「非常事態下の災害」でるため、業種的特例として条件から除外すべきです。

休業するな、運行せよ、しかし補償はしないでは公共交通の維持は不可能であり、このような論理的に成り立たない方針にならないように公共交通には適用できるように「特例により除外」すべきであると提言します。

ハードルは決して低くありませんが、国に対し、公共交通網の維持存続に向け特例を設け特別に支援することを求めていくことも重要といえるでしょう。

しかしながら、臨時交付金を活用した自治体の施策展開は、既に各自治体において補正予算対応が進められ、多くの自治体が医療検査体制の充実や観光振興、消費喚起のためのプレミアム商品券事業、定額給付金の対象から漏れた新生児への対応(長野市は見送り)などで使い果たしてしまう局面にあることも現実です。時間が許す限り、補正予算編成にあたり問題提起・施策提言していくことが重要です。

臨時交付金の活用にとどまらず、一般財源の投入で交通崩壊の危機を打開する時です。

地域公共交通確保維持改善事業の補助金交付要件緩和に

国の地域公共交通施策の補助金の柱は「地域公共交通確保維持改善事業」です。新型コロナ対策で補助金の交付要件が緩和されました(5月に事務通達)。

対象は、複数市町村をまたがる系統バス路線や地域間幹線バスにつながる地域内の定時定路線型のデマンド交通(デマンドタクシーやコミバス)などです。車両購入補助等も含まれます。

補助対象となるための要件である輸送人員の下限を緩和し、2020年度の直接的影響だけでなく、一度減少してしまった利用者の回帰までを踏まえた長期的な支援内容となっています。

➡ポイントは次の通り。

①2020年度における実績輸送量が新型コロナウイルス感染症の影響による輸送人員減少等により15人を下回ったとしても、補助対象外とすることはない

②2020年度における実績輸送量が、新型コロナウイルス感染症の影響による輸送人員減少等により15人未満となっても、これにより2022年度及び2023年度の生活交通確保維持改善計画において補助対象外とすることはない。

③地域内フィーダー系統確保維持費国庫補助金について・・・交付要綱別表7(補助対象事業の基準)の補助対象事業の基準について、「ト」の基準(運行1回あたり2人以上)は適用しない。

例えば、長野市では今年度の補助金交付について、増加する赤字分を適正に補填すること、交付時期を前倒しし資金繰りに資することなどの対応を示しています。

市町村において、補助金要件緩和に適正に対応されるようチェックしていくことが重要です。

地域公共交通活性化再生法の改正を踏まえた対応も

新型コロナ対策が喫緊に問われる中、地域公共交通活性化再生法が5月に改正されました。

活性化再生法は、交通事業者任せの交通政策を転換し、自治体が事業者と利用者・市民と連携し、主体的にコンパクト+ネットワークでまちづくりと連携した面的な公共交通ネットワークの再構築を図らなければならないとした点に意義があり、自治体が策定する「地域公共交通網形成計画」や「地域公共交通網再編実施計画」の実現・具体化を支援する仕組みを打ち出してきました。

しかし、これら計画の策定がなかなか進まない一方(全国で制定済み585自治体)、人口減少社会の本格化、高齢者の免許返納、運転手不足、地方バス路線事業の厳しさの激化、都道府県レベルの広域的な計画が進まないなど新たな課題が顕在化する中、地方自治体にマスタープランとなる「地域公共交通計画」(従来の地域公共交通網形成計画)の策定を努力義務(原則としてすべての自治体が策定)とし、地域の多様な輸送資源(自家用有償旅客輸送、福祉輸送、スクールバス等)も計画に位置付けることとした点がポイントです。

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国交省のページへ

過疎地域などでバス路線の存続が難しくなる前に、自治体が後継事業者を公募するなど、対策を早期に検討する制度を創設するなど、市民・住民の足が途切れないようにすることに力点が置かれたものと受け止めています。(まだ十分に読み込めていませんが…)

新制度では、採算割れなどを理由にバス事業者が路線廃止を想定し始めた段階で、自治体が対策に着手する。人口や住民の年齢層など地域の実態に応じて(1)コミュニティーバス(2)乗り合いタクシー(3)マイカーを使う自家用有償旅客運送―といった存続の選択肢を検討。事業者を公募するか、自治体が直接運営する取り組みを盛り込んでいます。

一方、地方都市を念頭に、路線バスの参入審査に地元自治体の意見を反映させる仕組みも設けられました。新規参入により、利用者を奪い合って経営が悪化したり、通勤・通学など利用客が見込める時間帯だけに運行が集中して不便になったりする恐れがあるためで、国は自治体の意見を参考に、認可するかどうか決めることにもなります。

山間地域や過疎地域、交通空白地域における公共交通ネットワークの再構築には、自家用有償旅客輸送の導入は避けて通られない現状にありますが、ライドシェアの考え方による白タク行為の合法化につながるような施策には警戒心をもって対応することが重要でしょう。

Withコロナ…新しい生活様式に対応した地域公共交通ネットワークの再構築は待ったなしの課題です。新型コロナにより利用者が激減したことを要因とする交通崩壊を防ぐ構えを行政・市民と共有し、課題解決を図るとともに、Withコロナ時代を見据えた公共交通ネットワークの再構築に改正版・活性化再生法を活かしていくとりくみが重要となっています。

「安全・安心な公共交通」を担保することも

「密」になることを理由に公共交通の利用が敬遠される現実もあります。バス事業者では、労働者の健康管理をはじめ、事務所・車両の定期消毒・換気、運転席へのシールド設置などの対応を進めていますが、より徹底させていくことも重要です。

また、「密」を回避するためのラッシュ時における増便対応なども事業者には検討してもらいたいと考えます。そのためにも、財政的支援がより拡充されることが必要でしょう。「安全な乗り物」を名実ともにアピールし、市民。利用者の理解を得ていくことが、公共交通への回帰には不可欠です。

長野県では、公共交通の安心・安全性を広報していくため、公共交通事業者の取り組みや利用者へのお願いを紹介する動画「コロナに負けない!-新たな日常のすゝめ-」公共交通編を作成し、YouTubeに公開しました。

➡長野県のPR動画

「コロナに負けない!-新たな日常のすゝめ-」公共交通編

➡交通事業車の取り組み紹介ポスター

➡安全な公共交通の乗り方ポスター

交通崩壊の危機を乗り越えるために…国・県・市に求めたい!

交通崩壊は、社会経済活動の基盤の崩壊に直結します。だからこそ、特別な支援が必要なのだと強調したいと思います。異常な気候変動による大災害への備えと併せて提案します。

国に対しては

➊地域公共交通確保維持改善事業における補助率の拡大(現行2分の1)。

➋バス・タクシー事業者に対する税の減免、自動車税等の減免の実現。

➌改正版地域公共交通活性化再生法における財政支援スキームの拡充。

➍臨時交付金の活用における交通事業者に対する特例の設定。

➎雇用調整助成金のさらなる延長と拡充などを求めていくことが必要です。

県や市に対して

➊エッセンシャルワーカーである交通労働者のPCR検査(唾液検査および抗原検査を含む)を実施するとともに、特殊勤務手当に相当する個別支援を実現すること。

➋交通事業者に対する新型コロナな対策の効果を早急に検証し、事業継続に向けた課題を洗い出し、必要な支援策を講じること。

➌県立高校、市町村小・中学校における校外活動、就学旅行等における「3密回避」のため貸切バスの増車を確実に支援するとともに自治体単独に加算措置を講じること(文科省のパッケージ支援に盛り込まれています。長野市は予算措置済み)。

➍県内都市間高速バスの運行支援策を講じること。

➎安全な移動輸送手段として公共交通利用への回帰・促進を図るため、PRと必要な対策を講じること。

➏改正版・地域公共交通活性化再生法を踏まえ、市町村における地域公共交通計画の策定を促進するとともに、県において市町村をまたがる面的な地域公共交通計画の策定をすすめ、圏域などを単位とした公共交通ネットワークの整備を促進すること。

➐地域の多様な輸送資源を総動員し交通空白地域の解消を図るとともに、市街地・生活圏域を結ぶ公共交通ネットワークの再構築を推進すること。

➑災害時における避難住民・ボランティアの移送、イベント開催時における観客等の移送に不可欠な輸送手段として、貸切バス等が十分に確保できるよう必要な手立てを講じること。また、災害時における車両の避難場所の確保に向け、交通事業者の事業継続計画(BCP)の策定を支援すること。

思いつくままの列記ですが、新型コロナ感染「第2波」到来に直面する中、医療崩壊を防ぐとともに交通崩壊も防ぐために力を尽くす所存です。