3月議会質問より➏…個人情報の不正取得を抑止する本人通知制度の導入を提案

◆長野市で31件の個人情報・不正取得
 司法書士や行政書士が職務で戸籍謄本や住民票の写しの交付を受ける際に使われる「職務上請求書」が偽造され、戸籍情報などの個人情報が不正に取得された事態が発覚しました。
 長野市では愛知県警が摘発し有罪となった司法書士・行政書士によって、31件の個人情報が不正に取得されています。
 身元情報をはじめ不正取得された個人情報は、売買されるとともに、脅迫やストーカーなどの犯罪に悪用されるケースも発生し社会問題化しています。
 未だに同和地区等の所在を確認しようとする差別事象等が市内でも絶えません。「情報屋」と呼ばれるアンダーグランドの組織が存在し、全国的なネットワークのもと、司法書士や行政書士らによる不正取得が横行し、不正・不当な利益を上げているのです。
 職務上の権限が偽って行使され、本人が全く知らない間に自らの個人情報が取得され悪用される事態は、許しがたい犯罪行為であり、人権侵害行為です。
 人権擁護の観点から、市民の個人情報を守る手立てが必要です。

◆不正取得を抑止する本人通知制度を提案
 本人通知制度は、市町村が戸籍謄本や住民票の写しを代理人や第三者に交付した際に、本人に交付したことを知らせる制度です。
 事前に登録した市民に通知する「事前登録型」や、委任状によって戸籍等を交付した場合に委任した本人宛に交付したことを通知する「全市民対象型」の二通りの制度があります。全国では380近い自治体で導入され、県内では、「事前登録型」で東御市・上田市が、また「全市民対象型」で松本市・塩尻市・駒ケ根市・山形村など、6自治体で導入されています。佐久市でも導入が準備されています。
 愛知県警が摘発した一連の裁判では、不正取得の8割が身元調査であること、本人通知制度を導入する自治体には不正取得しないとする内部指示が行われていることが判明しています。
昨今の個人情報流出による犯罪の増加に鑑みて、県都長野市において、個人情報を守り、不正取得を抑止するために、事前登録型の本人通知制度の導入に前向きな取り組みが求められているのです。
 市長は、1月の記者会見で「今後、再び不正取得のような事態が起こるようであれば、本人通知制度の導入を検討しなくてはならない」と答えてきています。不正取得は個人情報が売買の対象であることから必ず再発します。的確な対応が求められるのです。

◆不正取得された場合に被害告知する制度の導入も提案
 本人通知制度の中には、戸籍等の不正取得が判明した場合に、取得された市民全員に不正に取得されたことを連絡告知する「被害告知制度」もあります。松本市は既に実施しています。
 「職務上請求書の」の偽造により不正取得された31件の個人情報について、本人に通知する手立てを講じるべきことから、被害告知制度の導入も併せて提案しました。

◆「被害告知は準備する。本人通知制度は国等の動向を注視して対応」と答弁
 本人通知制度については、国段階で検討されてきたものの、弁護士等特定事務受任者や第三者の権利行使など正当な理由がある請求者本人の個人情報にも配慮すべきとの意見から、制度導入は見送られ法制化に至っていないことから、市長は「国等の動向を十分注視して対応する」と答弁するにとどまりました。
 しかしながら、被害告知制度については、「国・県等からからの通知で不正取得が明らかな場合は、犯罪等に使われる可能性が高いことから、本人通知を準備する」と答弁しました。
 具体的に、通知の内容、通知の根拠、事務処理要領等の準備を進めるというものです。
 遅ればせながら一歩前進と評価したいと思います。

◆上田市・松本市の取り組み
 事前に、上田市や松本市の市民課に照会し、取り組み状況を聴きました。
 事前登録型の上田市では約80人が登録、2週間ごとに手作業で交付申請書を点検し、第三者からの申請をピックアップし、本人に通知しているとのこと。まだ全面的なシステム化はされておらず、事務量は増えているが、現員で対応しているとのことでした。「そんな大きな負担にはなっていない」とのことです。
 全市民対象型の松本市では、司法書士や行政書士からの職務上請求は対象外で、委任状による交付申請の場合を対象としています。住民基本台帳法の改正時に合わせてシステムを改良、通知文までが自動で作成でき、封筒に入れ発送する作業が手作業となりますが、毎日の業務に組み込んでいるとのこと。システム化の費用はほとんどかかっていないとのことでした。
 松本市では被害告知もされています。まずは個人情報の取り扱いについて来庁してもらった上で、状況をお話しし注意喚起を促す方法をとっているとのことでした。丁寧な対応であると思います。

 質問では、時間がなく、先行事例の具体的な取り組みを紹介するまでに至りませんでしたが、参考にしながら制度の充実と市民への丁寧な対応を求めていきたいと思います。

 日弁連は本人通知制度の導入に否定的ですが、被害の拡大と人権侵害の重大性を優先した取り組みこそ問われているのではないでしょうか。国段階で、せめて全国統一のガイドラインをまとめることが必要だと思います。
 長野市では、人間の尊厳が侵害されないよう、人権政策を総合的に推進するため「長野市人権政策推進基本方針」を策定しています。この基本方針を中身のあるものにしていくためにも、本人通知制度の導入に向け、引き続き取り組んでいきたいと考えます。