盛岡市が取り組む官民連携事業と「サウンディング市場調査」

改革ネットでの行政視察報告【その2】です。

7月3日に訪問した盛岡市の視察テーマはサウンディング型市場調査の取り組みです。

人口294,267人、面積886.47㎢、人口密度332人/㎢。岩手県の内陸中心部に位置する県庁所在地で中核市。東北を代表する夏祭りの一つ「盛岡さんさ踊り」で有名。

長野市でも一挙に取り入れられるサウンディング型市場調査

長野市において、小中学校へのエアコン整備を進めるクール化プロジェクトの方針策定を皮切りに、「(仮称)山の駅・飯綱高原」の整備など飯綱高原一帯の観光施設整備、篠ノ井地区における市立南部図書館の整備方針の策定など、物品購入整備や公共施設の整備の分野で整備方針策定に向けた事前の取り組みとしててサウンディング型市場調査を多用し始めていることからサウンディング型市場調査の実際とその効果等について見極める参考として、テーマとしたものである。

盛岡市財政部資産経営課の加藤英樹課長や都市整備部市街地整備課の藤澤正博課長補佐等から、PPP/PFIなど官民連携の取り組みについて、また中高年齢者対象の勤労福祉施設である「サンライフ盛岡」の大規模改修及び「(仮称)新盛岡バスセンター」の整備におけるサウンディング型市場調査の実際の説明を受ける。

サウンディング型市場調査とは?

「サウンディング型市場調査」は、事業案件の内容・公募条件等を決定する前段階で、公募により民間事業者の意向調査・直接対話を行い、当該案件のポテンシャルを最大限に高めるための諸条件の整理を行うもので、このことにより、民間事業者にとっても自らのノウハウと創意工夫を事業に反映し、参入しやすい環境(公募条件)とすることができるとされている。

民間事業者から広く意見や提案を求め、対話を通して市場性の有無や活用アイデアを把握しようというのがポイントである。

横浜市で始まった取り組みで、PPP(Public Private Partnership:公民連携)事業における一つの手法として、公共施設跡地の利活用や公共施設の改修などにおいて自治体での取り組みが広がっている。

具体的には、事業案の作成前に参加事業者を募り(任意・無償)、一定の時間で意見交換・対話を行う個別ヒアリングやワークショップ等により、様々なアイデアや意見を把握する調査を実施するものだ。調査結果は民間事業者独自のノウハウを除き公開される。

盛岡市の整理によれば、市場性の有無や実現可能性、アイデア等を把握する目的で行うもの(事業発案時の官民対話)と、事業案策定後に公募に向けた条件を整理する目的で行うもの(公募条件検討時の官民対話)と、二つの調査目的があるとされる。

「サンライフ盛岡」の大規模改修におけるサウンディング

老朽化した勤労者福祉センター「サンライフ盛岡」の大規模改修工事にあたり、改修方法について効率的かつ効果的な工法等をめざし、工事内容をはじめ性能発注、設計施工一括発注などの発注方法を検討するため、サウンディングを実施。

公共施設マネジメントで、いわゆる80年サイクルで長寿命化を図る方針に基づき、築後40年に実施する工事で、大規模改修により残り40年施設を使用すること、工事中においても施設を継続利用することなどを条件に民間との対話を実施したもので、サウンディングの結果、設計・施行事業者一括選定方式を用いた性能発注による大規模改修の実施を決定し、現在、3社によるプロポーザルが行われている。

施設の大規模改修に関するサウンディング調査が、コスト削減と工期短縮につながったとする。

サンライフ盛岡の大規模改修の実施に向けたサウンディング型市場調査のページへ

新盛岡バスセンターのサウンディング

JR盛岡駅の東側約2㎞に位置するS35年開業の民営バスターミナルである盛岡バスセンターがH28年9月に廃止されたことを受け、バスターミナル機能の存続が必要であるとの方針から、第三者に売却される可能性があったバスセンター敷地を市が取得、バスターミナル機能と賑わい機能を併せ持つ新たなバスセンターを整備する方針を決定。

この方針に基づき、H29年度には公民連携事業導入可能性調査の実施へ。事業採算性、事業成立条件を検討するにあたり、その前提としてバスセンター整備事業への参入遺構や条件把握のためサウンディングを実施。

事前説明会には24社が参加、コンサルが同席する個別対話には17社が参加。

盛岡市における取り組みは、公民連携事業可能性調査が先行するものであり、この調査業務をコンサル(=㈱エイト日本技術開発)に委託している点がポイントでサウンディングもコンサルが立ち合い、調査結果もコンサルがまとめている。

賑わい機能としては中低層の商業施設、高層マンションを含む商業施設などが検討課題とされていたが、調査の結果、事業成立条件として中低層の商業施設、バスターミナル機能は市と民間の共同事業という方針としたもの。

市場性を見極める民間とのサウンディング調査により、持続可能な施設の在り方を判断する条件を見いだせたとする。

(仮称)新盛岡バスセンターの整備事業のページへ

サウンディング型市場調査のメリット

盛岡市では、市場調査のメリットを「民間事業者との対話により、方針を検討する際の材料となることや、方針を説明する際に対外的な説明性が増すこと」にあるとする。

具体的には、公共のメリット、民間事業者のメリットを次のように整理する。
【公共のメリット】
*事業成立の確実性が向上。
*公式な場で民間事業者と対話したという事実が、町内意思決定の際の説得材料として有効。
*想定外の民間事業の参加やアイデアを把握できる可能性。
【民間事業者のメリット】
*公共の事業方針や考えを直接聞くことができる。
*民間事業者の考えを伝えることができる
*公募時のより良い提案の作成につながる。

サウンディング調査の留意点

新盛岡バスセンターのサウンディング調査から、調査の目的を明確にしたうえで、調査対象・調査項目を設定し、民間との対話に臨むことの重要性が指摘される。

さらに民間事業者に対する前提条件の提示が不可欠とする。

すなわち、「対話への参加実績は事業者選定における評価の対象とはならないこと」「対話での双方の発言は想定のものとし、約束するものではないこと」を前提条件として明示している点である。

参加者によっては、鄭和への参加が自業者選定時のインセンティブになると捉えることや、行政側の発言内容を自身の都合の良いように捉えることが想定されるからとする。

また、対話内容には参加者の起業ノウハウが含まれることから、その取扱いにも条件明示が必要とする。調査結果公表にあたり、企業名や企業ノウハウにかかる部分は非公表とし、事前に参加者の確認を得て公表に至っている。

サウンディング調査に当たっては、極めて「当たり前の事柄」とされる事項であるが、特にインセンティブを求める民間事業側の姿勢・問題意識を事前から排除しておくことは重要である。

官民双方の知識を持つコンサルの重要性

盛岡市では、公民連携事業やサウンディング調査をコンサルに委託している。特に市場調査では、行政と民間の双方の専門的知識をもつコンサルが入ることで、より正確かつ円滑に対話を実施することが可能になると強調する。

民間事業者が扱う金融関係の専門用語に関する行政側の知識不足が対話の支障になることがあったことを踏まえての強調点である。

優秀で机上の検討に長ける(?)行政マンが、民間のノウハウに秀でた専門的知識・知見を所持しているかどうかは未知数、むしろ「無い」といったほうが現実的であろう。

長野市の場合、教育委員会のクール化プロジェクトにおけるサウンディング調査は行政だけで民間との対話内容を評価し活かすとされているが、エアコン整備にかかるコスト削減の手法は評価としてもわかりやすいものの、ソフト的な取り組みの評価、そしてハードとソフトと連動連結する施策展開のまとめは第三者的な評価が必要なのではないかと考えるところである。

「もりおかPPPプラットフォーム」の存在と役割

盛岡市は、公共施設マネジメントの先進市の一つである。

H21年度段階で、自治体経営の指針及び実施計画を策定し、公共施設の配置のあり方の検討、維持管理手法の具体化を行うことを定めている。

H22~23年度には、岩手県立大学盛岡市まちづくり研究所で調査研究し、H24年度に資産管理活用事務局を設置、公共施設の利用状況や経営状況、建物状況の収集・分析を進める。H25年度には、目指すべき施設保有の姿など基本方針を定めた「公共施設保有の最適化と長寿命化のための基本方針」を策定。公共施設利用運営状況(施設カルテ)をまとめたうえで、H26年度に「公共施設保有最適化・長寿命化長期計画」を策定。

H27年度には、「公共施設保有最適化・長寿命化中期計画」及び「実施計画」を策定し、公共施設マネジメントを推進している。

こうした公共施設マネジメントの推進と並行して、H28年度には内閣府の地域プラットフォーム形成支援の採択・実施を経て、H29年度には、市が主体となり地域企業や金融機関が参画し、公共施設マネジメントの推進と民間にとっての新たな事業機会の創出をはかる事業案件の形成を目指す「もりおかPPPプラットフォーム」を設置。また、H30年度になって「PPP/PFI民間提案等ガイドブック(民間提案制度)」を策定している。

このガイドブック(民間提案制度)は、総合う計画や公共施設等総合管理計画の個別施設計画(盛岡市では公共施設保有最適化・長寿命化計画とれる)に掲載される公共施設の整備等を伴う事業を対象に、工事方法、民営化、PFI、有効活用策等の提案を募集するものとなっている。

因みに盛岡市ではPFI事業は未実施でこれから検討する段階のようだ。

主にアイデアを求める民間発案と、主にPFI法に基づく民間提案という類型区分が行われ、事業化が図られようとしている。

こうした背景のもとに、公共施設マネジメントと一体でサウンディング調査に取り組まれている点を注視すべきであろう。

盛岡市「官民連携事業(Public Private Partnership)の取組方針」

盛岡市「PPP/PFI民間提案等ガイドブック」

学びたい点

盛岡市におけるサウンディング調査の取り組みは、PPP/PFIの官民連携事業の積み重ねの中で進められている点がポイントであり、その意味で官民連携の基盤というか基礎が作られていることが重要なカギであろう。

サウンディング調査そのものは、民間との対話により民間のアイデアを募り、採算性があり効率的な事業手法を見出すツールである。

その根底には、行政と民間の役割分担に基づく官民連携という問題意識が十分に形成されていることが重要であると思われる。

行政=自治体の限界と、時代に求められる民間との共存共栄の意義が自覚されていなければならないと考える。

公共事業において、民間のアイデアを広く募り、良いとこ取りで事業化を図るといった安易な発想で臨むと、官民連携の所期の目的が揺らぎはしないか、懸念される。一挙にサウンディング型市場調査の手法を取り入れているが故に尚更である。

良いとこ取りが市民にとって最善の手法であり、市民効果が最大に期待できる事業総体の完結性と民間にとっての新たな公共事業展開に持続的につながることを絶えず問題意識として保持していることが重要であると考える。

サウンディング調査の有効性に期待する一人ではあるが、官民連携=PPPへの深い理解が必要であり、官民連携を進めるツールの一つとしてのサウンディング調査の意義と限界を心掛けられる行政としての技量が問われるということだろうか。

その意味で、コンサルタントの導入を含めて再検討すべきではないかとも考える。

長野市のサウンディング調査の取り組みについて、「調査目的・調査項目」「前提条件」等を精査する必要を今更ながらではあるが痛感する。

また、盛岡市の「PPPプラットフォーム」の取り組み、PPP/PFI手法導入優先的検討規定、民間提案制度等について、さらに調査・勉強が必要である。

いずれにしても、長野市のサウンディング型市場調査の取り組みが、市民益につながるようチェックしていきたい。