公費解体現場でアスベスト除去を調査

災害復旧・復興のプロセスでアスベストによる健康被害を発生させない!…6月8日、県アスベスト対策センター(代表=鵜飼照喜・信大名誉教授)の皆さんと一緒に、台風19号災害における被災建物の公費解体で、アスベスト除去の現場を調査・視察しました。

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豊野地区の食品加工工場(1980年・S55年築)の公費解体で、屋根や外壁・内壁にレベル3のアスベスト含有スレート波板やケイ酸カルシウム板が使用されているケースです。

岡谷市内の解体興業(株)が解体工事を請け負っています。

当該の食品加工工場は4メートル以上の浸水で、公費解体は3棟の工場施設、別棟では製造ラインが稼働中であることから、解体には特段の注意を要するとされます。

市環境部の環境保全温暖化対策課の皆さんの立入調査のタイミングに合わせ、公費解体室の皆さんに同行いただいての調査となりました。

用意してもらった「N95DS2マスク」(災害ボランティアに19年12月から無償配布されたマスクです)を着用。

大気汚染防止法が改正され、レベル3の建材は湿潤化し手ばらしで取り外し、他の廃棄物とは分けてフレコンバッグに保管・管理する作業基準が法定となり、またアスベスト除去工事の実施についてA3以上の大きさで掲示することも義務付けられ、今年4月から一部施行されています。法定化されたアスベスト含有の事前調査の方法や事前調査結果の県等への報告はR4年4月以降の施行となります。

大気汚染防止法改正のポイント【アスベスト関連】

➊特定建築材料(飛散性の高い順からレベル1建材〈吹付け石綿〉、レベル2建材〈石綿含有断熱材等〉)に、相対的に飛散性の低いレベル3建材(石綿含有成形板等)を加え、すべての石綿含有建材に規制対象を拡大

➋石綿含有建材の有無にかかわらず、都道府県等に対する事前調査結果の報告の義

務付け

➌不適切な除去作業を行った場合(隔離等をせずに吹付け石綿の除去作業を行う等)

の直接罰の創設

➍作業結果の発注者に対する報告と作業記録の作成・保存の義務付け

*①③④は21年4月1日、②は22年4月1日に施行。

法改正の趣旨に則り適正に処理されているかを確認する現地調査です。解体興業(株)の現場責任者の方に案内いただき、現場を確認しました。

掲示板は工場入口に適正に表示

事前調査段階の「見なし」として、外装(屋根)にスレート波板が、内装にケイ酸カルシウム板が使用されていることが表示されています。

建物内の内壁のケイカル板の除去

水をビス部分にスプレー、湿潤化したうえでビスをとり、4メートル×90センチメートル位の大きさのボードを手はがしする場面を視察。除去建材はまとめて保管し、出入り口からトラックに積み込み、シートをかけてアクアパルの廃棄物仮集積場に搬送することになります。

破砕したものは、別に管理、フレンコンバッグに梱包して搬送しているとします。

防塵服を着用しての作業で、「暑いですよ!汗だくになります」と担当者。大変です。

作業後は真空の集塵機で付着物を除去することに。

アスベスト・アナライザーの簡易調査

市では県が所有する(R2年度に購入)アスベスト・アナライザー(1台800万円もします)を借用し、立ち入り調査に活用しています。

破砕したケイカル板を調査。数秒でアスベストの有無と種類が判明します。ただし1%以上の含有判別で、法定の0.1%含有は判別できず、あくまでも簡易調査の使用になるとのことです。

 「Chrys」は 「クリソタイル」(白石綿)であることを表示。最も多く使用されているアスベストです。

屋根のスレート波板

解体前の屋根のスレート板。鉄板・発砲スチロール・スレート板(アスベスト含有)・グラスウール(非アスベスト・断熱材)の4層構造になっており、それぞれを分別しながら除去するとのこと。レベル3のため、囲い込みや封じ込めは必要とされていませんが、重機ではなく手ばらしでの取り外しが必要ですから、大変な作業になると思われます。

この現場では「適正に処理」を確認

今回の現地調査では、解体工事におけるアスベスト対策が適正に講じられていることを確認することができました。市行政の立入調査による危険の周知と対策の徹底の成果と言えるでしょう。また、当該事業者がアスベスト対策において十分な経験と知見を有していることも指摘しておくべきと考えます。

公費解体等におけるアスベスト対策に注目する理由は、熊本地震の公費解体で、十分な事前調査が行われず、解体過程でアスベスト含有建材がハンマーで破砕され、他の解体建材と一緒に廃棄さるといった事象が散見されたことが指摘されているからです。

長野市の公費解体においても、フレコンバッグ内の廃材の抜き取り調査でアスベスト建材が発見される事象が指摘されています。

解体に従事する労働者が危険を知らないままに飛散したアスベストを吸引し、30年後、40年後に取り返しのつかない健康被害に蝕まれることを防止したいからです。

「静かな時限爆弾」と称されるアスベスト健康被害は、万全な対策を講じることで防ぐことができます。

今後、建築物の老朽化による解体工事やリフォーム工事が増大する中、行政の責任、事業者の責任でアスベスト対策が徹底されることが大きな課題となっています。