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子育ち・子育て対策特別委員会の視察より➋~浜松市・高松市編~

◆浜松市
(1)浜松市は、子ども育成条例およびNPO法人と協働で実施する「子育て情報サイト」の運営がテーマ。浜松市は「子ども家庭部」を設置している。

浜松市子育て情報センターで説明を受ける。NPO法人はままつ子育てネットワーク「ぴっぴ」の拠点でもある。1階は私立保育園

浜松市子育て情報センターで説明を受ける。NPO法人はままつ子育てネットワーク「ぴっぴ」の拠点でもある。1階は私立保育園になっている


(2)浜松市子ども育成条例の内容について
➊浜松市の場合は、新しい市長のマニフェストであった「子ども第一主義」の具体化、子どもや子育て支援に対する意識の共有化を目的に制定された。H20年度にアンケートや学校訪問調査を行い、条例原案を作成、H22年3月に議決、4月に施行される。
➋条例は「未来を担う子どもを社会全体で健全に育成し、支えていくための取り組みについて、基本理念を定め、市、保護者、学校等、事業主、子ども育成団体及び市民の役割を明らかにするとともに、市の基本施策を定め、これを総合的・計画的に推進することにより、子どもが生き生きと輝き、子育てがしやすく楽しいと感じられる社会の実現をめざす」ことを目的とする。
 第3条=基本理念で、「すべての子どもが人としての尊厳を有し、かけがえのない存在として尊重されるとともに、子どもにとって最善の利益が考慮されること」「子どもがそれぞれの夢と希望を持ち、様々な経験や学習を通じて想像力と豊かな人間性、生きる力を身に付けるとともに、自分や他人の命を大切にし、他人への思いやりや共生の心、郷土や国を愛する心を育むことができる環境づくりを行うこと」「市、保護者、学校等、事業主、子ども育成団体及び市民が、それぞれの役割を果たすとともに、子どもが育つ喜びを分かち合い、相互に連携を図りながら協力して一体的に取り組むこと」を定める。
「子どもにとって最善の利益の考慮」といった表現は使われているものの、「子どもの権利条約」に基づく「子ども権利条例」という位置づけではなく、「子ども育成条例」と謳うことに象徴される、子育てを社会全体で支援することを目的とする理念条例である。
 議会内においても、「子どもの権利の規定」「国を愛する心規定」などを巡り議論があったとされ(当然の議論でしょう)、賛成多数の議決によるものとなっている。
➌条例啓発では、「子ども用バンフ」を作成し、小学6年生の社会科授業での活用、中学校へのお出かけ講座を実施、また条例に規定した「子どもふれあい週間」(毎月第3日曜日から1週間)の周知、JR浜松駅構内での啓発物品の配布などに取り組む。
➍市民の条例認知度は、「内容も名前も知っている」が6.2%、「名前だけは知っている」が37.5%、「知らない」が54.6%で、周知には課題が残っているとされ、また企業や大人への周知も課題とされる。条例制定の効果については「大きな変化はないが、市の姿勢が明確になることで、職員の意識改革に効果を期待したい」と担当者は述べる。理念条例ゆえの課題とはいえるが、例えば「子どもふれあい週間」を「ノー残業デー」と組み合わせたりすることで、事業者を含め子育てを支援する市全体の取り組みを豊富化・具体化することが課題になっているように思われる。

(3)NPO法人「はままつ子育てネットワーク『ぴっぴ』」による子育て支援サイトの運営について
➊浜松市では、NPO法人と協働して制作・運営する行政情報と民間情報をミックスした「子育て情報サイト」を開設している。運営主体は、浜松市子育て情報センターの指定管理者であるNPO法人「はままつ子育てネットワーク『ぴっぴ』」だ。浜松市子育て情報センターは、子育てに関する情報の発信拠点の位置づけで、ファミリーサポートセンターの事務局も兼ね、施設の貸し出しも行っている施設である。NPO法人の原田博子理事長からお話を伺った。

「ぴっぴ」の原田理事長。バイタリティのある女性でした。

「ぴっぴ」の原田理事長。バイタリティのある女性でした。


➋「子育て情報サイト・ぴっび」は、「子育て中のパパ・ママの視点で市民と行政が一緒になって考えているサイト。手当や助成、検診や予防接種などの行政情報はもちろん、先輩ママたちからのクチコミ情報やサークル情報、ブログなどの楽しい民間情報も満載。あなたの知りたい・相談したい・つながりたいにきっと役立つ子育て最新情報をお届けする」と謳う。一言でいうと「官民協働で情報を融合させた子育て支援サイト」ということになるのだが、「行政情報と民間情報が両方わかる」「見たい情報がパッと見られる」「常に新鮮な情報を提供」している点が大いなる特徴である。H17年4月にオープンしたもので、確かに必要な情報満載の子育て支援サイトである。総務省の地域活性化部門賞をはじめ数々の受賞を得ている。月に7万~8万人の訪問者がいるそうだ。「こんなサイトがあったら便利」と思わせる内容だ。
 ⇒浜松市子育て情報サイト「ぴっぴ」
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➌子育て情報センターの指定管理者であるNPO法人の仕事は、子育て支援サイトの運用、ファミリーサポート事業、子育てに関する講座開設、育児サークルのまとめに加え男女共同参画事業と多岐にわたる。しかし、NPO法人の独自事業として、例えば「防災ワークショップ」の講座開設、「家族の減災ブック」の作成・普及、転入してくる子育てファミリー応援で「引っ越しチェックシート」による情報提供にも取り組む。独自事業と指定管理者としての事業、また指定管理者としての自主事業の境目がイマイチ理解できなかったのだが、子育てをしながら就職をめざす母親のための講習会「出張マザーズコーナー」(子育て情報センターとハローワーク浜松が主催)の開催や「子育てガイドブック」の編集・印刷・発行など、サイトの運営だけにとどまらず多彩な取り組みが展開されている。
 指定管理料は年間3400万円だそうだ。他市の取り組みにあまり踏み込むべきではないが、指定管理料以上の仕事を担ってもらっているとの印象だ。
 「子育て当事者に大変な思いをさせたくない」…市外から転入した子育てママの熱い思いが印象的だ。
➍行政とNPOとの協働、役割分担についても考えさせられる事例である。NPOの活動目的は様々あるが、いわば行政の仕事の隙間を民間の柔らかい発想で補い、効果を生み出すことに存在意義がある。行政の下請け機関であってはならないというのが基本である。この情報サイト開設に携わった情報政策課の言を借りれば「市民団体やNPOは間違っても行政の安い下請けなんかじゃない。行政だけでは実現できない目的を達成するためのパートナーであることを忘れるな!との警告からスタートした事業であることが紹介されている。しかし、「職員の異動や12市町村による合・政令市移行に伴い、対等なパートナーに対する勘違いをした対応をとる関係課や行政職員が出てきている。行政だけではできないことを実現するために民間と行政が対等に協力し合う。その市民協働の本質を理解し、敬意を払うことができる。行政側の体質を改善していくことが最大の課題」と振り返っている。
 長野市においても、NPO等に対し「行政の安い下請け」と思い込んでいないか、本当の官民協働を実現し得ているのか、自戒を求めつつチェックしていくことが必要である。
浜松駅前の広場で

浜松駅前の広場で

◆高松市
(1)高松市では、「子ども・子育て条例」「市独自の認定こども園」「保育園・幼稚園の芸術士派遣事業」について視察。

高松市役所で。

高松市役所で。子ども未来部の職員から説明を受ける


(2)高松市子ども・子育て条例について
➊市長のマニフェスト=子ども・子育て支援施策の充実・条例の制定を機に制定された条例で、「次代の高松を担う子どもが健やかに生まれ育つ環境を整備するため、子どもの成長及び子育てに関する支援のあり方を定める内容となっている。「基本理念」「子どもが有する権利と責任」「大人の役割・責務」「基本的施策」を内容とし、子育てを総合的に支援する理念条例である。
➋「高松市子ども条例検討委員会」(条例による諮問機関)において「子ども条例(仮称)の基本的に考えについて(最終報告)」に基づき、市民との意見交換会、小・中・高校生によるワークショップや子ども条例シンポジウムの開催、パブコメの実施を経て、H25年3月に全会一致で可決されたもの。
 議会における論点は、「子どもの権利をどうとらえるか」「大人の役割の中で保護者の役割をどう明確にするか」の二つだったそうだ。いずこの議会にも共通の論点である。子どもの権利に関しては、折衷案として「子どもの権利を個別に列挙せず、日本国憲法および児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子どもが有する権利を尊重する」(第4条)と規定。また、保護者の役割について「保護者は子育てについて第一義的な責任を有することを認識し」との規定を盛り込むことで、全会一致となったとのことである。
➌子ども・子育て条例の紹介バンフは、子ども目線を尊重する内容でまとめられている。小・中・高校の全児童・生徒に配布する。活用は学校の判断に委ねているそうだ。
 条例の啓発パンフの中では、「児童の権利に関する条約」に定められる「子どもの権利」について12項目を紹介(だだし、生命の危機、命が守られ尊重される規定は先進国にはなじまないとの理由から除外されている)し、条例をしっかり補強している。
 また、「自由過ぎるのも過保護なのも困る。適度な親子関係が良い」「「友達の意見も大切」「きちんと説明して」「もっと子どもの意見を聞いて」など、ワークショップで出た子どもからの意見を紹介し、子どもの声を根っこにおいていることをわかりやすく説明している点も参考にしたい事柄である。
➍「策定された条例をどう生かすか。特に事業者の取り組みをいかに促進するか」が課題として指摘された。条例制定自治体の共通の課題になっている。浜松市では今後、条例に基づき、子どものための施策・事業を展開する施設に特化した「こども未来館」の建設(市民文化センターの廃止)、赤ちゃんとのふれあい事業や子どもに関する相談機能の拡充に取り組むとする。

(2)幼保一体化「高松型こども園」について
➊高松市では、保護者の就労形態の違いや就労状況の変更によらず、すべての子どもに同じ教育・保育を提供するとともに、子どもの負担、親の負担を軽減することを目的に、幼保一体の「高松型こども園」を運営している。高松市の就学前児童数は23752人(長野市は19750人)で、保育所では公立37施設・3685人、私立が39施設・4905人。幼稚園は公立30施設・2318人、私立25施設・4430人で、保育所待機児童数はH24年度で42人とカウントされる。公立幼稚園が30園あり、市街地周辺地域に存在すること、私立幼稚園は時一に集中していることが背景となっている。入所児童の増加によりゆとりある保育が困難になっている保育所がある一方、入園児が少なく集団生活に支障が生じている幼稚園があることから、「こども園」を創設し、適正規模の集団生活を維持した教育・保育を提供すること、また小学校へ円滑に移行できる望ましい就学前の教環境を提供することなどを目的とする。さらに、「3歳児で集団生活に慣れている保育所児童と新たに入園する幼稚園児が一緒に生活することで、よりよい育ちをつくる」「地域で育つ同年齢の幼保児の交流が深まり、一体感や広がりができる」「発達に応じた給食をすべてのこども園児に提供でき、栄養士による巡回訪問で食育指導ができる」ことなどが期待されるとする。
➋開設されている「こども園」は5園で、今のところ、合併地区の児童が減少している地区に限定されている。子ども子育て新法に基づく施策としてどのように展開されていくのか、注目したいところである。今後の中山間地域における幼保児の教育・保育環境を再整備していく試みとしては興味深いのだが、公立幼稚園を持たない長野市における施策展開としては、違ったアプローチが必要と思われる。
➌「こども園」は、市長部局と教育委員会双方の指導下にあると位置づけられ、保育所長と幼稚園長がそれぞれ置かれ、その上に事務統括者として子ども園長(兼務)が置かれる仕組み。職員は「教育委員会の権限を市長部局に補助執行させる」規定により整合性を図っている。
➍幼保一体化に向けた体制として、教育部(現・教育局)所管の幼稚園関係業務と健康福祉部(現・健康福祉局)所管の保育所業務を統合し、一元的に施策実施するとともに、二重行政の壁を取り除くために、「こども未来部」が創設されている。また、保育指針と幼稚園教育要領を一つにまとめた「高松っ子いきいきプラン」を教育保育の基本方針とし、施設や地域の特性を取り入れたカリキュラムが実施されているとのことだ。事務的な整理としては一つのスタンダードなのかもしれない。
➎今後、公立公営で幼保連携型のこども園をめざし、順次移行したいとする。民業を圧迫しないことに配慮しつつ、ニーズ調査を踏まえ、国の基準による需要数により、供給計画を策定する考えも示された。

(3)芸術士派遣事業について
➊芸術系大学卒業生など、様々な芸術分野(会が・造形・音楽など)に高い地域を有するアーティストを「芸術士」として、保育所等に派遣し、保育士と連携しながら、子ども達と絵画や造形など様々な表現活動を行う事業。NPO法人アーキペラゴが事業受託している。H21年度からスタートして事業で、当初は緊急雇用創出基金事業として財源を確保したが、H24年度からは市単独事業として実施。事業費はH25年度で約2880万円。
➋施設ごとに週1回程度、9時~16時の時間帯で派遣。芸術士はそれぞれ1~3カ所の施設を担当し、曜日ごとに巡回する。
➌子どもたちにとっては、「意欲や好奇心が養われる」「自尊感情や自己肯定感が育まれる」とされ、保育士にとっても「異業種間の学びあいが教育保育の質の向上につながる」とする。施設や児童、保護者からは一定の評価があるものの、客観的視点で数値化することが難しい点が課題とされ、「何らかの形で成果を具体化することが必要」とする。
芸術士の子どもたちとの活動状況は毎年冊子にまとめられている。
➍訪問の折には庁舎ロビーで芸術と子どもたちの作品が展示されていた。自由な表現活動に生き生きと輝く子どもたちの姿が印象的だ。

芸術士派遣による子どもたちの作品。高松市役所ロビーで展示されていました。

芸術士派遣による子どもたちの作品。高松市役所ロビーで展示されていました。


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