長野赤十字病院の移転建て替え…「若里多目的広場が最適」とされる「今」の課題【その1】

長野赤十字病院は、施設の老朽化等から現在地周辺での建て替えを検討しています。

現在の「新病院基本構想」(建設地は未確定)では、H37年度に着工しH39年度の竣工をめざすものとなっています。

長野日赤側からの要望に応え、長野市との間に建て替え問題を協議する「検討会議」が設置され、このほど、「検討報告書(その1)」がまとめられました。

1月30日には市長と日赤院長との懇談会が予定され、新病院建設候補地等について意見交換が行われることになっています。

日赤側は、基本構想を策定するにあたり、「建設候補地についてH29年度中には目途をつけたい」としてきました。

「最適とされる若里多目的広場を活用する場合の諸課題」について、課題解決に向け、日赤側からどのような主体的な姿勢が示されるのか、そしてどのような合意を見ることができるのかが焦点でしょう。

そのうえで、H31年度中までに策定するとされる日赤側の建て替えの資金計画を含めた「新病院建設基本構想」、「基本計画」の内容を見極めていくことも重要な課題となります。

市議会での審議・調査状況等を踏め、長野日赤の建て替え問題の『今』を2回に分けてまとめてみました。まずは【その1】です。

長野赤十字病院のサイトへ

日赤病院…現在地周辺での新築移転を検討

長野赤十字病院は2016(H28)年11月に、病院施設が耐用年数を迎えることに伴い、「現在地周辺での移転新築を検討したい」考えを明らかにしたことを出発点に、2017(H28)年6月には「建て替えについて市と協議する場の設置を求める要望書」加藤市長に提出するとともに、長野市議会にも同趣旨の請願を提出、議会では全会一致で採択されてきました。

長野市との間で「検討会議」を設置、検討報告書(その1)に

市議会の請願採択等を踏まえ、昨年7月に長野市担当部局と日赤病院との間で「長野赤十字病院建て替え検討会議」(座長=久保田篤・長野赤十字病院事務部長)が設置され、まずは建設候補地等について検討協議が行われてきました。

市議会福祉環境委員会では、昨年11月に現地視察を行いました。

視察時、吉岡院長から「日赤の役割と将来構想」の提起がありました

高精度放射線治療センター。がん診療連携拠点病院としての役割はとても大きいです。

屋上からヘリポートを望む。

12月議会では、市側から中間的に「移転建設候補地として若里多目的広場が最適」との考えが示され「候補地を若里多目的広場にした場合の諸課題についてなお検討する」とされてきました。

1月19日には「長野赤十字病院建て替え検討会議における諸課題の検討報告書(その1)」がまとめられ、1月22日の市議会福祉環境委員会で報告されました。

長野赤十字病院の役割

長野赤十字病院の今

長野赤十字病院は1983(S58)年にしない北石堂町から現在の若里に移転、34年が経過。建物の耐用年数は約40年とされ、施設の老朽化から建て替えを検討する時期を迎えているとします。
吉岡院長は「移転用地がおおむね確定した段階で、建物の規模や病院の機能、病床数などの詳細を詰めるなど、時間をかけて現実的な案にしていきたい」(H28年11月信毎報道より)としてきました。

長野日赤は、長野市を含む北信地域の医療の中心的役割を担う病院で、入院・外来ともに患者の約8割が長野市民となっています。

この間、医療の高度化や専門化等に対するため増築を行い、敷地が狭隘化し、これ以上の増築ができないとされています。

公的総合病院4病院の中での日赤病院の位置

長野市内には公的総合病院が4つあります。長野日赤、厚生連篠ノ井総合、厚生連松代総合、そして長野市民病院です。

この中で、長野日赤には4つの大きな特徴があるとします。
長野市及び県の長野医療圏(長野市・須坂市・千曲市・坂城町・小布施町・高山村・信濃町・小川村・飯綱町)の医療を中心的に担う医療機関であること
大学病院に準じる高い診療機能を持つ病院(DPCⅡ群で県内では長野日赤・諏訪日石・JA佐久医療センターの3病院)として認定されていること。
北信地域の救命救急センターとして長野市を含む広範囲の救急医療を担っていること。
長野地域の災害拠点病院であり、県内唯一の基幹災害拠点病院の指定を受けていること(災害派遣チームDMATを3チーム編成可能)。

「検討会議」における検討状況

検討1…長野日赤に建て替えの必要性があるのか

「検討会議」では、まず、長野日赤の建て替えの必要性を検討。

施設の老朽化、敷地の狭隘化、不十分なバリアフリー、6人部屋の解消など療養環境の改善、医療の高度化への対応、専門的医療の提供などの観点から、現在の美容院機能や役割の維持、高度化する医療等への対応に疑念が生じているとし、「長野市の医療体制をさらに充実させるためには、長野日赤の機能や役割を保持していく必要がある」と結論。建て替えの必要性を改めて確認・是認しました。

検討2…現敷地内での建て替えは不可能なのか

現敷地内での建て替えの可能性も検討されました。

しかし、仮設施設や患者等の駐車場が確保できないこと、救命救急センター等の機器や設備の移設による病院機能の低下が避けられないこと、工事期間が長くなり、患者の利便性や医療提供隊への悪影響が懸念されることなどから、「現在地での建て替えは、病院機能や患者等の利便性の低下、医療提供体制の悪影響が懸念されることから困難である」と結論付けました。

検討3…新病院の建設候補地には何が必要か、そして何処か

建設候補地について、5つの視点から検討し、「現在地周辺」に絞り込んでいます。

➊病院の規模について、現病院施設と同程度(約25,000㎡)の広さが必要
➋患者の約8割が長野市民であることを踏まえつつ、市内外の患者等の交通利便性に配慮することが必要。
➌市内の4つの公的病院のバランスを考慮する必要。
➍基幹災害医療センターやがん治療センターなど現敷地内の新しい施設との一体的な利用による施設全体の有効利用を考慮する必要。
➎新病院への移送による患者の負担軽減や安全性確保に配慮が必要。

こうした視点から、長野市内一円では、新病院を県できる広さの土地の確保は東部地域や犀川以南地域に限定されるが、公共交通機関の利便性や公的病院の配置バランスを考えると、「現在地周辺での検討」が妥当であり、既存施設との有効利用等も可能となるとしました。

現在地周辺では若里多目的広場が最適と結論

現在地周辺では、病院西側の市営若里団地、病院北側の信大工学部グランド、そして病院東側の若里多目的広場の3カ所を候補地として検討。

検討における比較情況・評価は下記の通り。


以上のことから、「長野赤十字病院の建設候補地は若里多目的広場とすることが最適と考えられる」と結論付けています。

若里多目的広場に新病院を建設する場合の3つの課題

市側は、最適とする若里多目的広場に新病院を建設する場合には3つの課題があり、課題解決に向けた協議が今後必要となるとしています。

➊一つは建設用地としての適格性。病院用地としての安全性ということ。
活断層等は確認されていないが、埋設物の有無は未確認であり、1000年に一度と想定される犀川の氾濫・最大規模浸水想定区域にあるということです。

旧カネボウ(紡績工場)跡地である若里多目的広場では、かつて用地の一角で廃棄物の埋蔵が確認されました。既に除去されていますが、今後、埋設物の確認・処理を誰の責任で行うのかということも課題となりそうです。

また、施設建築上、浸水対策が求められることになります。

➋建設に係る土地利用規制があること。
都市計画上では「工業地域」であり、規模によっては容積率の制限を超過すること、開発許可が必要なケース等も想定されるとのことです。

新病院の規模等に係る問題ですから、「新病院基本計画」の策定時に具体的な協議が必要になってくる問題です。

➌ビッグハット駐車場の確保が必要であること。
若里多目的広場はビッグハットの専用駐車場(800台分)として利用されています。
駐車場の不足はイベント開催や誘致に影響を及ぼすこととなることから、新病院建設工事期間中の代替駐車場の確保が必要となること、病院建設後には若里多目的広場に替わるビッグハット専用駐車場の確保が必要となることです。

この点が最大の課題でしょう。

日赤側が若里多目的広場を新病院の候補地とする場合、土地は賃借なのか、現敷地との交換なのか、そもそも病院建設後の跡地利用をどのように考えているのか等々の問題がクリアーにならなければなりません。

また、代替駐車場を考える際には、日赤周辺、ビッグハット周辺の有効な土地利用を考える必要もあると考えられます。

建設候補地絞り込みに対する私の評価

老朽化している長野赤十字病院の建て替えは、高度化・専門化する総合医療機関の拠点として不可避です。市内の公的総合病院の配置バランスからも、市街地や西部地域の市民の医療拠点として、現在地周辺での移転・建て替え、若里多目的広場への絞り込みは現実的であり妥当であると考えます。

ただし、「検討会議」でまとめられた3つの課題がどのように解決されていくのかを注視する必要があることは言うまでもありません。

特に、若里多目的広場に建設する場合に、広場の土地の利用の手法や、新病院建設後の跡地利用の方向性は、大きな課題となります。

全体的に、建設地の検討にあたり、市内一円を俯瞰しつつ、多面的・総合的に検討されてきたと評価します。「若里多目的広場ありき」ではない慎重な検討結果であると受け止めています。
日赤側の「現在地周辺」という当初からの問題意識に対し、改めて全市的な検討から論点整理がされてきたことは意義があると思います。

22日の福祉環境委員会では、全体の資金計画や代替駐車場の確保の見通し、駐車場の整備・活用を含めた若里広場周辺一帯の土地利用の見直し、既存施設の有効活用という点から、ヘリポート等の活用の見直し等々について質問や意見が出されました。

私からは、若里多目的広場を建設地とする場合の3つの課題解決に向けた協議において、長野市と日赤病院との責任・役割分担を明確にしていくことを求めるとともに、他の公的病院の拡張計画の有無、公的病院のバランスが将来的にも維持されていく見通しなどについて質問しました。

市側は、厚生連篠ノ井病院も松代病院も増床が完了しており、新たな増床・拡張計画はないものと想定していること、県の医療需要の推移見込みを参考に、入院患者数全体は2030年ごろにピークを迎え、その増加率は2013年から1割弱程度に留まり、以後減少していく見込みであること等から、長野日赤の新病院の規模や機能は、こうした見込みを踏まえて構想されることになるであろうとの見通しを示しました。

いずれにしても、1月30日の市長と日赤院長との懇談が注目です。

双方の事務方でまとめられた「検討結果」について、特に課題解決に向けた考え方について、まずは日赤側からどのように明確に提示されるのかがカギです。日赤側の主体的な考えが示されることを期待したいと思います。

【その2】は、建設地の確定の後に大きな課題となる長野日赤自身の「資金計画」、そして長野市の支援の在り方について考えてみました。