災害時の避難行動要支援者の個別避難計画作成で実証実験

長野市は、災害時の避難行動要支援者の個別避難計画(以下、個別計画)をR7(2025)年度までに全市的に作成する方針を明らかにしました。22日に開かれた市議会・災害対策等調査研究特別委員会で示されたもの。

5年で個別避難計画の作成に取り組む…国の方針受け

R3年度に、県社会福祉協議会が開発中の「災害福祉カンタンマップ」づくりを活用し、事業者を中心にモデル地区で実証実験を行い、R4年度には、その成果を住民自治協議会や福祉・介護事業者に説明し、ハザード状況等を勘案し優先度を踏まえた個別避難計画策定対象地区(手挙げ方式も検討)での取り組みをすすめ、R5~R7年度にかけて全地区で作成する考えです。

国が災害対策基本法の改正(今国会で成立予定)で、個別避難計画の作成を市町村の努力義務としていること、また、法改正を見越し内閣府が「要介護度3以上の高齢者や身体障害者手帳1・2級を所持していている者等の自ら避難することが困難な者のうち、ハザードマップで危険な区域に住む者や、日常から見守りが必要な独居または夫婦二人暮らしの者など、個別計画策定の優先度が高いと地方公共団体が判断する者について、概ね5年程度で個別計画の作成に取り組むこと」を事務連絡していることが背景となっています。

中々進まない個別避難計画づくりを打開

市ではこれまでに、避難行動要支援者名簿を作成し、本人の同意を得て、消防局・消防団、警察、民生委員、社会福祉協議会、住民自治協議会・自主防災組織に提供、一人ひとりの状況に応じ、誰が支援し、どの避難所にどのように避難するかを事前に決めておく個別避難計画の作成を働きかけてきています。

長野市の避難行動要支援者の範囲は①75歳以上の一人暮らし高齢者②75歳以上の高齢者のみ世帯③要介護度3以上④身体障害者手帳1・2級⑤視覚障害者及び聴覚障害者⑥療育手帳A1・A2⑦精神障害者保健福祉手帳1級⑧難病の方を対象にしています。

R2年6月で、避難行動要支援者は36,147人、提供名簿登録者は26,480人です。

しかしながら、地区役員の交代で引き継ぎができていないことや、要介護度が高い人や重度障がい者など専門的支援が必要な場合は地区役員だけでは作成できないこと、さらに要支援者の心身状況が変化し更新が難しいことなどの事情から、個別計画づくりは進んでいないのが実情です。

H30年で個別計画作成済の行政連絡区は477中80地区(16.8%)にとどまり、H25年段階の157地区(32.8%)から半減しています。

真に避難支援を要する市民を対象に優先的に個別計画づくりへ

災害時の避難行動において、災害対策基本法は「災害時又は災害が発生する恐れがある場合に自ら避難することが困難で支援を要する者」(49条)=要支援者と「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」(8条)=要配慮者に区分し、それぞれへの対応の基本を定めています。

しかし、要支援者であっても家族の支援などにより避難判断・避難行動ができる場合があること、一方、要配慮者であっても避難判断・避難行動を自分でできない場合もあることから、真に避難時に支援を要する市民を正確に把握し個別計画を優先的に作成していくことが重要だとの判断です。

地区の互助だけでは限界…福祉・介護事業者を中心に実証実験

台風19号災害の経験から、優先度の高い要支援者の避難誘導は地区・地域の互助だけでは限界があることが明らかになりました。

真に避難支援が必要な市民は、例えば、福祉・介護事業所による通所サービスや訪問サービスを利用しているケースが多く、個々人の心身状況を把握していることから、福祉・介護事業所の取り組み支援が重要として、県社協のクラウドデータベースシステムを活用した「災害福祉カンタンマップ」を利用して、実効性のある個別計画の作成に取り組むことになりました。経費は100万円を見込みます。

今年度は、モデル地区を決めて福祉・介護事業所を中心に「カンタンマップ」の作成・個別計画の作成の実証実験を行います。モデル地区は調整中とされます。

災害福祉カンタンマップとは?

「災害福祉カンタンマップ」は、要支援者を避難優先度の高い順にA・B・Cの三段階に区分し、「マップ」に落とし込み、避難場所をはじめ支援者、持出品などを表示させる仕組みで、土砂災害警戒区域や浸水想定区域に対応するものになります。

実証実験では、福祉・介護事業所で、優先度の高いAの避難行動要支援者の個別計画を作成するとともに、地区の互助で避難支援の可能と思われる優先度B・Cの避難行動要支援者については、住民自治協議会が避難支援を行う者とのマッチングを行い、個別計画を作成します。

市では、福祉・介護事業者が個別計画を作成することで、地区住民の互助だけでは対応できない避難困難者のより実効性のある個別計画の作成が見込めること、クラウドデータシステムで個別計画が作成できると、未作成の要支援者の確認が容易になり、より効率的に作成の働きかけができること、クラウドで運用するため、更新が容易なため、継続的な支援体制づくりが見込めることなどの成果を期待しています。

福祉避難所の位置づけも変更に

国では、福祉避難所ごとに、あらかじめ受入対象者を特定し、本人と家族のみが避難する施設であることを明示して指定する新たな制度の創設を予定しています。

これにより、これまで指定避難所に避難したうえで、要介護者や障がい者など専門的なケアーが必要な場合や高齢者、障がい者、乳幼児等の要配慮者のうち、一般の避難所では生活が困難な場合に、必要に応じて二次避難所として開設される福祉避難所に移動していましたが、高齢者避難準備や避難勧告・避難指示が発令された段階で、予め福祉避難所に指定される福祉・介護事業所に避難することになります。

大きな転換です。国では、今年5月以降に「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」と「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を改定し公表する予定です。

逃げ遅れゼロ、災害関連死ゼロに向け、実効性ある個別計画へ

災害時に自ら避難することができない避難要支援者や要配慮者の方の「逃げ遅れゼロ」を実現し、施設等における十分なケアーで「災害関連死ゼロ」を実現することは、災害対策上の最大課題です。

要支援者で福祉・介護施設のサービス利用者は、居住地区に限らず、広範な地区・地域にまたがります。また、通常の入所者がいる施設で避難者をどこまで受け入れることできるのかといった課題があります。さらに支援優先度ABCの線引きや地域の中での支援担い手の確保も課題でしょう。

要支援者の状況や施設側の実態に効果的に対応できるのか、実証実験の取り組みと検証が待たれます。

避難所開設マニュアル案や防災アプリの活用は別稿で

特別委員会では、上記項目のほか、委員会等での意見を取り入れた「避難所開設マニュアル案」が示され審議するとともに、4月から運用が始まった、スマートフォンで利用できる「防災アプリ」についても改善の意見を出し合いました。

別稿で報告します。