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震災から7年…岩手県陸前高田市の「今」

西日本豪雨から1週間、被災地での犠牲者は14府県で200名に及び、約7,000人が避難生活を余儀なくされています。
改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

一日も早い復旧、復興を願います。


さて、7月2日~4日、会派・改革ネットの行政視察で陸前高田市盛岡市前橋市を訪問しました。

陸前高田市は震災からの復興状況及び防災対策の取り組み、盛岡市はサウンディング型市場調査の取り組み、前橋市はマイナンバーカードを活用し母子健康情報サービスなどを展開するICTしるくプロジェクトが視察テーマです。

まずは、3.11大震災から8年目を迎えた陸前高田市の報告です。

西日本豪雨被害における避難の重要性、避難の在り方が改めて問われているとき、陸前高田市の経験から「教訓」をしっかり見出し、長野市政に生かしたいものです

気仙沼からはBRTで陸前高田入り

気仙沼駅で。後方が鉄道、手前がバス

JR気仙沼駅からBRT(バス・ラピッド・トランジット)化されたJR大船渡線で陸前高田駅へ。所要時間は30分。JR陸前高田駅は新しい中心市街地として土地区画整理・再開発中のかさ上げされた高台の中央にある。新しい駅舎の周辺ではバスターミナル整備の工事中であった。

被災直後に高台に開設されたプレハブの仮庁舎で、「陸前高田市東日本大震災検証報告書」と震災の経験を踏まえた「避難マニュアル」の取り組み状況についてお聞きし、その後、かさ上げした高台におけるまちづくりの整備状況や防潮堤の整備状況などについて現場を案内いただいた。

伊藤議長から挨拶をいただく、

市庁舎では、議長室で伊藤明彦議長と中村吉雄・防災対策監兼課長補佐から、被災地現地では熊谷正文・興局長兼市街地整備課長らが説明をいただく。

陸前高田市の津波被害と復興の今

2011年(H23年)3月11日に発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震、この地震が引き起こした大津波によって市役所庁舎を含む市中心部が壊滅、人口24246人のうち死者は1556人、行方不明は216人、8069世帯のうち半数の4041世帯が全壊・半壊等の甚大な被害を被る。死者・行方不明者を合わせると市の人口の7%以上が失われた。

2011年12月に「震災復興計画」を策定、2011年から2013年のむ3年間を「復興基盤整備期」、2014年から2018年度までの5年間を「復興展開期」と位置づけ、復興事業が進められている。

市街地整備予定のかさ上げされた高台から。12.5mの防潮堤の中で、復興祈念公園として整備される地区を見渡す。手前の階段でかさ上げ状態がわかる。

高田地区と今泉地区の復興被災市街地土地区画整理事業の概要

震災復興計画より

多くの事業計画は2020年度完了に見直されているが、完了できないというのが現地の見通しだ。

現在、海岸線に高さ12.5メートルの防潮堤を整備し、中心地であった高田地区の土地を8メートルから10メートルかさ上げし、被災市街地復興土地区画整理事業により高田地区と今泉地区で“新しい街”を再建中。街全体を底上げして新しい土地利用・まちづくりを進めるというものだ。

旧市街地をかさ上げするのに近隣の山二つを切り崩して、現場で破砕した土砂を専用ベルトコンベア(総延長3000m)で市街地まで直接運んでいる。これにより、ダンプだけで土を運ぶと9年かかるという工期を3年に短縮できるとのことだ。

高田地区は、約186.1haで計画人口は約1560戸、4300人、事業費670億円。今泉地区は、約112.4haで計画人口は約560戸、1600人、事業費827.2億円とされる。H32年度末に工事完了を目指す。

新たな中心市街地の中核施設となる「アパッセたかた」。活気が戻りつつある…。手前側にJR陸前高田駅が設置され、ターミナルが整備中。

新たに造成された高台では、中心市街地の核となる商業施設(アパッセたかた)がオープンし、住宅や店舗がポツリポツリと移転し始めている現況である。

既に高台に移住している地権者に新市街地に戻ってもらえるかが大きな課題とされる。

私は2012年6月に震災瓦礫の広域処理問題で宮城・岩手を視察。陸前高田市も訪れたが、防潮堤やかさ上げ高台の整備は着実に進んでいるものの、街に人の暮らしのの匂いがまだないというか、6年の歳月を実感できるほどに復興が進んでいないというのが率直な印象である。

完全なる復興への道のりはまだまだ遠いものと感じるとはいえ、かさ上げ高台の整備、商業施設の復活などを見るとき、ダンプが行き交うまだまだ「茶色」の旧市街地に新しい力は感じとることができた。

教訓示す『大震災検証報告書』

陸前高田市では「宮城県沖地震」を想定し、地震と津波に対する備えをしてきたものの甚大な被害が避けられなかったことから、「今回の被災状況を的確に把握し、そこから出された反省や課題を整理し検証することを最大の目的」にしてまとめられたのが「東日本大震災検証報告書」である。

この検証結果について「本市のみならず、今後発生が危惧されている南海トラフ巨大地震等に備える自治体や、同じような環境にある世界の各都市の防災や減災に役立てもらいたい」との願いも込められている。

検証にあたっては、各地区コミュニティ推進協議会、小中学校校長会、女性団体協議会、避難所代表者、学識的立場から静岡大学防災総合センターの牛山素行教授に委員を依頼し、市民から避難に関するアンケートやヒアリング、さらにパブリックコメントを2回実施し、まとめられた。

本編は325ページに及ぶもので、被災自治体としての全体的なまとめは数少ないとされる。概要版で説明を受ける。

陸前高田市東日本大震災検証報告書【概要版】

検証作業から得られた5つの反省と教訓

➊避難が何より重要
当時の陸前高田市の津波浸水域内に居住していた人口に対する犠牲者率は10.64%で沿岸自治体37市町村で最大。
全世帯アンケートから、地震発生時にいた場所が津波浸水域となった人で、当日の行動について情報が得られた人のうち、被害がなかった人は、津波到達前までに8割の人が避難していたのに対し、犠牲となられた方は5割程度にとどまり、4割は避難していない結果となった。一方、気仙川河口部に位置し水没した気仙小・中学校などでは学校の管理下にあり教職員と素早く非難行動を開始したことで1人の犠牲者も出ていない。

このことから、人的被害を防ぐためには、積極的な避難に重点を置いた防災教育や訓練の実施が必要とする。

➋避難所に逃げたら終わりではない
津波避難場所として指定していた一次避難所67か所のうち38か所が被災するとともに、9か所で推計303人~411人の命が失われた。

避難所で多くの犠牲者を出してしまったことや県の津波予測を絶対視し「それ以上の津波の襲来はない」4として避難所の見直しを行わなかったことを真摯に反省。
当時は浸水2m未満の避難所も避難所に指定していた場合もあったが、現在は東日本大震災で津波が到達しなかった場所で、かつ、仮に津波が到達しても更なる高台へ避難できる場所を指定している。
一次避難所に避難した後も、過去の経験や記憶にとらわれず、さらなる高台に避難できるよう備えることが必要と強調する。「二度逃げ」の推奨である。

担当者は「大規模災害を想定するハザードマップ頼みではダメ。ハザードマップがすべてではないことを肝に銘じるべき」と指摘する。

➌公的な役割を持つ人の安全の確保
東日本大震災では、市職員、消防団員、行政区長、民生委員など市民の避難誘導にあたった公的な役割を持つ人が多く犠牲となった。明確な対比企俊が設けられていなかったことを教訓に、、津波到達前までに活動を終了し避難を完了させるために市職員の「初動対応マニュアル」や消防団員の「地震災害活動マニュアル」等を作成。


(犠牲になった市職員111人、消防団員51人、行政区長11人、民生委員児童委員11人)

➍災害に強い安全なまちづくり
市街地や住宅地を浸水から免れるよう高台やかさ上げ地に整備。また、12.5メートルの防潮堤や水門、避難道路の整備など、ハード面での取り組みを進める。

特に防災機能が麻痺したことから、市庁舎や消防庁舎を津波浸水域外の高台を基本に整備。

➎社会的弱者も安全に生活できる社会の実現
障がい者の犠牲者率は住民全体の犠牲者率の約2倍という報告がある。陸前高田市は1.3倍。
社会的弱者=要配慮者の情報共有やサポートなど「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」の実現を目指す。

【参考記事】180311東日本大震災で生死を分けたのは、一体何だったのか?

この記事は、震災当時、陸前高田市の副市長であった久保田崇氏(現在、立命館大学教授)がまとめたものです。参考までにご一読を。

避難マニュアルの作成・配布

東日本大震災以前にも、陸前高田市においては津波をはじめとする災害に対する訓練を行っていたが、実効性ある訓練でなかったとの反省から、:検証による教訓の周知と合わせ、避難マニュアルを作成し市民に配布。日頃からの心構えや備えを自覚的に持ってもらい、行政からの情報を待たず、自身で情報を「取りに行く」よう求めている。

市民向け避難マニュアル

避難所運営マニュアル(初動対応を含む)

災害時要援護者の支援の具体化は今なお課題とされる。老老支援となってしまう地域の厳しい現実が背景にあることと、震災では民生委員等の犠牲者が多かった教訓から、日ごろからの地域の中での助け合い・支えあいを強調し、「まずは自らの身の安全確保を最優先にしている」とする。

いざ災害時の要援護者支援は重い課題である。

防災無線情報…電話で確認できる仕組みを導入

防災行政無線は150か所に設置されているが、聞き取れないことも多いことから、防災行政無線の放送内容を電話のフリーダイヤルで確認できる仕組みを導入している。

市独自の取り組みでNTTとの契約による。

Lアラートによる「緊急速報メール」のほかに、土砂災害情報や雨量情報など登録制の防災メール配信は長野市でも実施されているが、テレガイドは未実施である。

豪雨等の最中での防災無線の効果は十分でないことから、テレガイドは防災無線を補強する情報伝達ツールとして効果が期待できる。導入を検討したい施策である。

新しいまちづくり…完全復興の道遠し

復興まちづくり情報館で復興事業の概要の説明を受け、12.5mの防潮堤やかさ上げ高台整備の現況を案内いただく。

奇跡の一本松。すでに枯死したため悪口のシンボル・モニュメントとして残されている

復興まちづくり情報館で

防潮堤の上から。海岸線では「松」の植栽復活事業が進む

新しいバスターミナル。JR陸前高田駅として整備中

防潮堤から復興整備中の高田地区を望む



帰りの切符。運賃は旧鉄道運賃と同額

 

かつての線路敷きをバス専用道路に

率先避難の重要性を痛感

「検証報告書」にまとめられた教訓は重く受け止めたい。津波被害を土砂災害、洪水浸水被害に読み替え、防災対策・減災対策に取り組むことの重要性を痛感する。

特に、言い伝えやハザードマップ等を過信せず、実際の気象情報・災害情報に照らして、命を守るための的確な避難行動=率先避難~二度逃げ避難を如何に促すのかが重要である。

陸前高田市で整備予定の「高田松原津波復興祈念公園」の一角には小学校等の震災遺構群が多く残されているが、市街地が壊滅的な被害を被る中、これら震災遺構の建物内では一人の犠牲者も出ていない。率先避難の成果といえよう。

一方で、「公的な役割を持つ人の安全の確保」が強調されている点も見逃せない教訓である。

西日本豪雨災害でも、避難指示・避難勧告の在り方が改めて問われている。

土砂災害イエローゾーンにある学校等の1次避難所の在り方の見直しも喫緊の課題であろう。

各論になるが、防災無線情報のテレガイドは検討したい施策である。

また、陸前高田市の防災担当監から、防災を担当する危機管理防災課等の職員の専門的な養成、持続的な人材配置の必要性が指摘された。学びたい点である。

国の復興予算は約32兆円、H32年度で完了とされているが、被災地の復興の「今」を直視する時、インフラの復興にとどまらず、市民の生活の復興までを見通した支援の継続が問われていると痛感する。

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