財政推計で見込まれる大規模プロジェクト事業は、総事業費で1693億円、H24年度からH33年度までの向こう10年間で853億円とされます。新たなサッカースタジアムの改修に伴い、大規模プロジェクト事業全体の見直し、事業の圧縮が必要との観点から、長野広域連合で進めるごみ焼却施設の建設にあたり、事故が相次ぎ技術的にも未完と言わざるを得ない灰溶融炉建設から撤退し、事業費の圧縮を図るべきと質しました。
市側は「稼働中に発生した灰溶融炉事故は原因が究明され、安全性は確実に向上している」としたうえで、「灰溶融炉を設置しない場合、施設の建設費や維持費などの削減は見込めるが、最終処分場の埋立可能期間が15年から7年となり、更なる処分場の確保が課題となるため、現計画での建設が必要」と答弁。さらに「最終処分場の軽減を図るため、一部の焼却灰等を溶融せず、直接資源化する手法を検討する」と述べました。なかなか、「現計画通り」の壁を打ち破れません。
しかし、国では、温室効果ガスの削減を図るため、灰溶融炉の建設から撤退しつつあります。少なくとも灰溶融炉に関しては積極論から消極論に変化しています。
全国でも灰溶融炉の廃止・休止が相次いでいます(下記の通り)。
ごみ減量の更なる取り組みで、最終処分場の将来も変わってきます。時代を先取りする英断が求められていると考えます。
*灰溶融炉=ごみの焼却により生じた不燃物(残渣)や飛灰を高温で溶かす炉のこと。残渣や灰を溶融炉内で1300℃で液状化させ、さらに冷却して溶融スラグとすることで、焼却灰の減量が図られるとされる。しかし、灰溶融炉を動かすためには燃料が必要であり、CO2など温室効果ガスを発生させることになる。しかし、液状化させた段階での重大事故が相次ぎ、プラントとしての完成度に疑問の声が強い。
*灰溶融炉を既に休止している自治体は、横浜市、群馬県太田市、千葉県我孫子市、茨城県潮来市、衣浦衛生組合(碧南市、高浜市)、兵庫県篠山市、高知市、滋賀県長浜市など。廃止を決定したのは、仙台市、城南衛生管理組合(京都府南部)。廃止検討中が安達地方広域行政組合(福島県)など。
ちっよと古い記事ですが、参考までに中日新聞の報道を掲載します。中日新聞データベースでしか見れないため、リンクは効きません。
「自治体の灰溶融炉 相次ぐ休止・廃止」 中日新聞 – 2011/01/17
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2011011702000071.html
家庭などから出る一般ごみの焼却灰を超高温で溶かすハイテクの「灰溶融炉」。国の誘導策もあって導入が進んだものの、近年は休止や廃止を決める自治体が相次いでいる。「お荷物」と考える自治体がなぜ増えたのだろうか。 (白井康彦)
一般ごみの焼却灰を灰溶融炉で千三百度以上にして溶かし、その後で固めると、ガラス状の溶融スラグになる。容積は灰の半分ほどに減り、そのまま最終処分場に埋めても処分場の寿命が延びる。もう一つ、盛んに宣伝されたのが、土木建設資材などへのリサイクル。この場合、処分場を延命させる効果はより大きくなる。
国は一九九七年度から二〇〇四年度まで、焼却炉を新設する自治体への補助金交付の条件として、焼却炉と灰溶融炉のセットでの建設を求めた。当時、自治体の最終処分場確保が難しかったことへの措置だった。
これに伴い、灰溶融炉は急増。全国に約百十カ所を数えるまで広がったものの、現在は「灰溶融炉をもう使わない」という姿勢の自治体が増えている。一例が、京都府南部の宇治市、城陽市など三市三町でつくる城南衛生管理組合。昨年十月、本年度末で灰溶融炉を停止する方針を環境省に正式に申請した。
組合のごみ処理施設「クリーン21長谷山」があるのは城陽市内。見学コースからの焼却炉や灰溶融炉の様子では、さほど古びているようには見えない。焼却炉と灰溶融炉の運転開始は〇六年。建設の事業費総額は約六十二億円で、うち約十二億円が灰溶融炉の分だ。
川島修啓施設課長は、灰溶融炉運転停止の理由を「第一は地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の発生を抑えること。第二は経費削減。第三は溶融スラグの有効利用を広げる展望がないこと」と説明する。
灰溶融炉に使っていた大量の電気や灯油をカットすることによるCO2削減効果が大きいという。経費も、運転委託費や灯油代などが大きく減り、年間で約二億円減らせる見込みだ。灰溶融を止めた後は、焼却灰は最終処分場に埋める。処分場は、相当先まで確保できる見通し。
仙台市も昨年十二月、灰溶融炉を一二年九月をめどに廃止する方針を決めた。「休止」というかたちで使用を停止している自治体も多い=表。灰溶融炉の寿命のかなり前に休止したケースがほとんどだ。
◆ごみ減量化進み処分場延命
灰溶融炉の休止が増えてきた背景には、いくつもの事情がある。
ごみの減量化やリサイクルが進んだ影響で、自治体の最終処分場の寿命が延びる傾向が目立ってきたのが一つ。溶融スラグの有効活用も、期待されたほどには伸びていない。土木建設資材としてほぼ100%活用できている自治体がある一方、溶融スラグをそのまま処分場に埋めたり、処分場でごみにかぶせる土の替わりに使ったりする自治体も少なくない。
灰溶融炉は、補修費用や燃料代など運転させるための経費がかさむ。財政状態が厳しい自治体では、灰溶融炉が「絶好の事業仕分け対象」と判断されやすい。
灰を超高温で溶かす際に、大量のエネルギーを使う灰溶融炉を休止させると、CO2の発生量を大きく減らせる。休止は、地球温暖化対策としての効果も大きい。各地で故障や事故も少なくなく、安全性を懸念する声も根強くある。
こうした状況を受けて環境省は昨年三月、一九九七~二〇〇四年度に国の補助金の対象になった灰溶融炉に関して、「条件を満たせば、補助金を返還せずに運転停止や廃止にできる」という内容の通知を出した。
自治体関係者の間では、この通知の影響が大きい。城南衛生管理組合は、通知の条件にあてはまることを確認し、いち早く環境省に申請した。中部地方のある自治体の担当者も「来年度は運転を続ける方針だが、個人的にはもうやめたい」と胸中を明かした。
★今日的な現状と課題を、今一度整理する必要がありそうです。