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公共交通対策特別委員会の視察より(その➌)…市営バス維持の高槻市

 今回は1月23日に訪問した高槻市の取り組みです。

◆高槻市…直営市営バスの維持へのこだわり
➊面積105㎢に人口35万7千人、人口密度は3,370人/㎢。大阪府の北部で、京都府に隣接、大阪と京都の中間に位置し、両都市のベッドタウンとして60年代後半から人口が急増。中核市。市域は北部が北摂山地につながる山並みと丘陵地帯で、南部が芥川・檜尾川流域の平野で構成される。ほぼ東西に伸びるJRと阪急電鉄線を境に北部と南部に分かれる。
 JR東海道本線(京都線)は大阪駅から新快速で14分、京都駅から新快速で12分。阪急電鉄(京都線)では、大阪・梅田駅から特急で21分、京都・河原町駅から特急で21分。JRと阪急電鉄が基幹交通軸である。

JR高槻駅南口、地上のロータリーにバス停留所


JR高槻駅北口、バスロータリーとして整備


➋調査テーマは、高槻市直営で維持される市営バスである。S29年2月に大阪府下衛星都市唯一の市営バスとして誕生し、来年2月には60周年目を迎える。市交通部のもと、自動車運送事業管理者を置き、公営企業体として経営される。
公営バスは現在25自治体で運行されているものの、赤字経営がほとんどで、民間への移管という形で撤退を余儀なくされるケースが相次ぐ中、また大阪市・橋本市長による大阪市交通局の“公営バスたたき”が顕著化する中、公営バスの維持を前面に押し出している点が特徴である。

高槻市営バスの概要…24路線運行で1日当たり約6万人が利用、1,000万円/日の運賃収入
 乗合157両、貸切7両、計164両の車両を保有し、98系統24路線で運行する。営業キロは118.02km。阪急バス(6.5km)、京阪バス(5.9km)、近鉄バス(2.1km)などと13.3㎞競合するものの、隣接市からの延長で、JR高槻駅・富田駅や阪急高槻市駅を起点とする高槻市営バスの営業に大きな影響はないとされる。停留所は245カ所、最長間隔で2.2㎞、最短は100m、平均で480m間隔で運行する。ダイヤは2分間隔の路線もあるという。
 従業員は正規職員213人に、再任用7人、非常勤75人、臨時18人、計313人を擁する。運転手がほとんどと思われるが、給料体系は市職員の給与表による。
 運賃は210円の均一料金、ただし北部の一部山間地域では対キロ区間運賃制を導入する。
 市営バスの輸送人員は、S50年の3000万人をピークに減少、H21年には3割減の2000万人までに落ち込んではいるものの、6割減である全国平均を大きく上回る輸送人員を確保している。通勤・通学定期券利用者が約3割、回数券・階数カード利用者が2割、無料で乗車できる高齢者が2割を占めている。電車との乗り継ぎが55%というのも電車・バスが公共交通の柱になっていることを伺わせる。

声明をいただいた高槻市交通部の皆さん。高槻市営バスの制服を着ていらっしゃいました。


経営状況
 S40年代の需要の増大に伴う資本の投下や職員の確保に伴う人件費の増大で、S50年頃には不良債務が膨れ上がるが、数次にわたる経営健全化計画により、H9年度(1997年度)からH20年度までは単年度収支黒字を維持する。
 H21年度からは、営業利益が赤字になっているものの、生活交通路線維持補助金や一般会計からの繰入金で経常利益は黒字となっている。
 H23年度で、営業収益は33億300万円、営業費用が約33億3900万円で営業利益は▲3600万円、他会計補助金等の営業外収益により、約2億5千万円の経常利益を計上している。
 人件費は約25億円で75%を占める。ハス事業は労働集約型の事業であるがゆえに、人件費比率が高いのだが、75%は率直に驚きである。しかも、バス車両の更新では、自動車Nox法などの排ガス規制への対応は完了しているというから、体力がある事業体といえよう。

高齢者運賃無料化補助金6億円、身体障害者・知的障害者等運賃無料化補助金に9千万円
 高槻市では70歳以上の高齢者に無料乗車証を交付する。対象人員21,340人、輸送人員3,374,110人をベース(明確な根拠はないらしい)に6億円(固定額)が一般会計からの補助金となる。無料乗車券を維持するか否かが課題となっているようだが、長野市の高齢者「おでかけパスポート」が1回100円であることを考えると、一部負担化は避けられないのかなと思う反面、何とか維持してもらいたいと願うところでもある。 交通事業者サイドから見ると、固定化された補助金とはいえ6億円の収入は、営業収益の約1/5の占めるもので大きいし”美味しい”ところである。高齢者の対象人員が既に倍になっていることからも、いがれにせよ見直しは迫れれよう。
 さらにもう一つ、身障者・知的障害者・精神障害者の運賃も無料とされ、一般会計から9千万円が補てんされている。しかも、市外在住の身体及び知的障害者を対象に、運賃が割引(普通券・回数券などが半額、定期券は3割5分引)となる福祉割引制度も設けている。
通常、身障者等への乗車割引は、バス事業者がサービスとして行っているもので、行政からの補助金はない。
高齢者や障害者の外出支援の福祉施策として制度化されているものであるが、市営バス=公共交通の利用増につながる施策でもあり、長野市への取り入れを検討したいものである。
もう一つの補助金である不採算路線運行等補助金は、対キロ区間運賃制となっている山間地域路線への補助金で、生活交通路線維持補助金と位置づけられるものであるらしい。
いずれにせよ、運賃補助で6億9千万、一般会計をはじめとする他会計繰入金が2億8600万円等、合計で9億7000万円を超える資金投入が、経営を支えているといってもよい状況に見える。

視察の折にいただいた高槻市営バスのグッズ。上はシャープペン付きのメモ帳。


「高槻モデル」の全国発信~経営健全化の取り組み
 H16年11月の公営企業審議会答申で「高槻モデル」を全国に発信することを打ち出す。すなわち、「自家用車に頼らず、公共交通機関だけで便利に移動でき、充実した生活が送れる都市の実現を市営バスが率先して進める」というもの。
この答申に基づく「市営バス経営健全化計画(H18年度~H22年度)」に続き、現在は「市営バス経営改善計画(H23年度~H27年度)」の推進中である。
 前段の「経営健全化計画」では、利用者へのよりよいサービスの提供と企業として経営基盤の強化と一層の自立性の確保を掲げ、8項目58事業を計画、期間後の評価として「所期の目標を概ね達成」したとされる。
後段の「経営改善計画」では、市営バスの役割を「市民の。市民による市民のための市営バスの実現」を目指すものと位置づけ、「直営方式による路線維持型」経営形態を継続し、市民に必要とされる市営バスをめざすことを基本方針ととする。
 計画策定段階では、H24年度以降に赤字基調が見込まれること、通勤利用者の減少と急速な高齢化が進展することを課題とし、「採算性」と「公共性」の維持が強く求められるとする。具体的には、人件費の抑制と高齢者無料乗車証制度など公共負担のあり方の検討がポイントになると思われる。
 高槻市営バスの運転手の人件費は約700万円とされ、民間バス事業者で400万円から500万円であることを考えると、その格差は大きい。民間バス事業者の運転手賃金が低過ぎることが問題なのだが、市営バスの場合、運転手の賃金見直しで大きく収支バランスが変わることは間違いない。
 非常勤や臨時職員の導入で人件費の抑制が図られているが、運転手の安全運行へのモチベーション低下が懸念されるところでもある。

高槻市役所前の高槻駅方面の時刻表。2分から5分の間隔で、ほぼ全車車いす対応。


 【参考】「高槻市営バス経営改善計画・概要」
     「高槻市営バスの案内」…高槻市ホームページ
所感として…
*高槻市営バスの経営状況は耳にはしていたが、実際の話を聴き、「よく直営で維持している」というのが率直な感想だ。交通部次長は、市営バスが維持できるのは「地の利」とする。大都市近郊のベッドタウンであり半径6km~7km範囲に市街地が集中していること、東西の基幹交通軸としてのJRと私鉄が存在すること、そして鉄道主要駅を起点とし南北に広がるバス路線網が「市民の足」となっていること、羨ましい限りだ。

*パーソントリップ調査における鉄道・バスの公共交通分担率について質問したところ、「何ですか、それは」との答え…。分担率を踏まえ公共交通への利用転換を図らなければならない必然性がないということなのであろう。必要不可欠な「市民の足」となっていることが、この点からも窺える。

*確かに「地の利」なのだが、2分間隔での運行や高齢者・障害者の無料・均一1day企画カードなど各種運賃割引制度など、市の福祉政策と相まって、利用促進のインセンティブとなる仕組みが作られていることも大きいといえよう。市営バス故に市の施策と一体となる相乗効果を生んでいると思われる。民間事業者では基礎体力がない限り困難な仕組みである。便利なマイカー利用をちょっと我慢し公共交通利用に転換するインセンティブとして、各種割引制度やポイント制度導入について、バス事業者の自立的な取り組みを促すとともに、行政からの支援策をしっかりと位置づける必要がある。

*とはいえ、公的負担のあり方(一般会計からの繰入・補助)が課題に上るように、公営企業体としての自立がこれからの大きな課題になろう。通勤利用者の減と高齢化の進展の波に耐えられるか、見極めたいところである。

*かつて、長野市において交通局を設置し、交通局のもとに長電バスと川中島バスを統合する運行管理会社を作り、理想の路線網展開ができないかと考えたことがある。アルピコの私的整理の際にも再浮上した課題であった。市長もその一人であったが、長電グループとアルピコグループの思惑を超えられず、実現には至らなかった。
 後に触れるが、岡山県の両備グループは中国バスの再生にあたり「公設民託」という手法をとっている。市内の2つのバス事業者がグループ全体の事情から経営危機に陥らないとは限らない。公が担うべき公共交通の役割については、深く洞察・研究・調査が求められるところであろう。

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