「保健所の共同設置」に対する期待と疑問

 長野県と長野市の間で、県と市がそれぞれ設置している保健所の共同設置に向けて具体的な検討を始めることで合意し、11月17日には長野圏域の9市町村が参加する検討会議が発足、共同設置の可否の判断に向け、効果や課題の整理、設置場所や組織体制、財政負担などの検討が始まっています。

 共同設置によって保健所がどのように変わるのか、メリットやデメリットはどこにあるのか、なかなか見えていないのが、今日な問題です。

 市民サービスに直結する問題となるだけに多角的・多面的に慎重に検討される必要があります。
 12月市議会の論点の一つです。

長野市保健所の存在意義と効果

 長野市はH11年(1999年)、中核市移行に伴い、県内の市では唯一保健所を設置し、ガンなどの生活習慣病対策や母子保健、予防接種、食品衛生、捨て犬・猫の管理、公害対策など、保健衛生の拠点となっています。

 県から権限移譲された長野市保健所では、12の保健センター(旧市8・合併地区4)を擁し、地域住民に密着したきめ細かな保健衛生サービスが提供されています。

 長野市が独自に保健所を設置していることで、保健・医療・福祉の連携による総合的な保健衛生行政が推進でき、医師や看護師、保健師、薬剤師、獣医師、臨床検査技師などの専門スタッフが揃い、専門的支援や緊急事態への迅速な対応が可能になったとしています。事務量等の負担は増えたものの、自主的・自立的に運営できる領域が増加したことに大きな効果があったとします。
 一方、医師であることが必要な保健所長、獣医師、薬剤師、臨床検査技師等の専門職種の確保に苦慮していることは事実で、市役所内での人事異動が難しく、スキルアップする機会が少ないことが課題とされます。

そもそもの“言いだしっぺ”は「県」

 H23年の地方自治法の一部改正により、保健所などの行政機関や長の内部組織等が共同設置できるようになったことを踏まえ、県庁内でH25年度に「県職員による政策研究」の一つとして「保健所の共同設置」が採用され、県からの依頼を受け、市保健所から職員が参加し、事務レベルでの共同研究がされてきたようです。

虫食い・飛び地解消が目的?新たな県市連携の模索?

 県保健所は、長野圏域の長野市以外の市町村を引き続き管轄していますが、管轄区域が長野市周辺に虫食い・飛び地状態になっていることを課題としています(県資料より)。
 地理的に飛び地になっていようと、県の管轄・役割・責任がいささかも変わるものではありませんし、長野市以外の市町村、そして住民にとっては、飛び地は全く関係ありません。

信濃毎日新聞より

信濃毎日新聞より


 長野圏域において、何かしら、県の監督権限だけを残して、保健所行政を「長野市」に丸投げしようみたいな発想がないのか、穿った見方もでてきます。

 県の資料によれば、「共同設置をステップに更なる展開⇒県・市連携で新たな取り組み」を方向性として打ち出しています。
 また、県と市でミッションが同じ業務の課題整理をして、メリット・デメリットを整理したとされているのですが、情報開示されていません。これからです。

 また、県の検討段階では「長野県環境保全研究所」の在り方も対象となっていたとか、定かではありませんが…。長野市への照会では「検討対象になっていない」とのことです。
 いずれにしても、県の本音を確認しなければなりません。

3つの制度を研究⇒共同設置を選択

 長野市側の説明資料では、県との政策研究において、➊権限の移動を伴わない機関等の共同設置方式、➋事務執行が受託側・長野市に一元化される事務の委託方式、➌法人の新たな設立が必要な広域連合方式の3つの方式を検討。

 ➋の委託方式は、受託団体である長野市に指揮命令権及び責任が一元化され、県は長野圏域の指揮命令権及び責任がなくなるというもの。長野市の事務方式が継続されることで事務の効率化が図れるとされます。

 ➊の共同設置は、県と市がそれぞれの管轄区域の指揮命令権及び責任を保持することになり、上司が知事と市長の二人いるイメージ。仕事を切り分けたままでは、共同化の効果が小さいとされます。

 どんな議論を経たのか不明ですが、➊の共同設置方式を選択したことになります。

 事務委託方式の方が、長野市の責任は大変重くなりますが、圏域における保健衛生行政の一元化、全体的な底上げが図れる効果は大きいと思うのですが、どんなもんなのでしょう。
 共同設置による「県」にとってのメリットが見えません。

長野市にとって期待される効果は?

 市は、期待される効果として、
  「専門職の確保が容易となり、採用後のスキルアップが図れる」
  「重複するポストの削減、機材等の共有化によるコストの削減」
  「保健医療分野における県と市の連携」
  「災害時における県から市への応援が容易」
  「住民の県保健所と市保健所の混同を解消」
 などを挙げています。

 これらの点は、ある程度、納得できます。もっとも「混同」はそんなに多くないと思われますが、専門職の確保・スキルアップは大きな課題であることは間違いありません。

「独自性を担保し、市民サービスは低下させない」…長野市としての構え

 市は、共同設置の検討にあたり、
  「長野市の独自性を担保しつつ、事業の質を図る」
  「市民サービスを低下させない」
  「共同設置により職員の増員は行わない」
 の3点を基本的なスタンスとし、
  「大規模災害時や健康危機管理時などにおける指揮命令系統の明確化」
  「県と市の2つの方式が存在するため仕事の分担・進め方等の調整が不可欠」
 なことを課題として挙げています。

 この姿勢はしっかりと堅持してもらいたいと思います。

“前のめり”な市長の姿勢が気がかり

 市長は会派説明の折に「共同設置に合意したもの」と説明、同席していた保健福祉部長から「まだ決まっていません。検討することに合意した段階」と諌められる場面が…。
 共同設置ありきで、前のめりで”それいけドンドン”になることが懸念されます。

 市保健所の総務課長とも話しましたが、現場サイドはかなり慎重な姿勢が伺えます。特に長野市職員が圏域他市町村のサービスに関与するのか否か、課題は山積って感じです。そんな印象を受けています。

 共同設置方式を一概に否定するものではありませんが、「何故、別々ではいけないのか」、説得力ある検討を求めたいと考えます。
 また、長野圏域を構成する他市町村の懸念や不安の意見にも真摯に耳を傾け、圏域全体の保健衛生行政の底上げ、住民サービスの向上が図られる道を選択していくべきであると考えます。

 共同設置方式によらずとも、長野市にとって専門職の確保・スキルアップについて県からの支援が得られないのか(例えば人事派遣交流といった形で)、といった点についても確認していきたいと思います。
 
 、中核市となった長野市が、独自に保健所を設置し、市民に身近なところで独自の保健衛生事業を展開してきていることは、長野市民の大きな財産であると思いますから。