芸術館大ホール「見切れ席」…舞台の7割が見えるよう改修

 6日、長野市芸術館メインホール2階の「見切れ席」(舞台が見えにくい席、約90席)の改修・改善方針が市側から公式に示されました。
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★座席に下駄履かせ、最低でも「舞台の7割」見えるよう改修・改善

 視線の妨げになっている2階席最前列前の腰壁(75cm)は、安全上、音響上、重要な壁で取り外しができないため、座席の高さをあげることで見やすさを改善するとし、客席の位置や見えにくさに応じて座席を15cmから26cmかさ上げするというものです。
 座席前の足を置く通路部分も15~18cmかさ上げします。
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 座席が列単位で一体構造となっているため、改修工事は「舞台が見えにくい席」(約90席)を含む列単位で行うことになります。中央部分を除く片側109席、両サイドで218席が対象となります。

 いわゆる下駄をはかせる「かさ上げ工事」は、コンクリート製にすると荷重がかかり過ぎるため、木製仕様になるそうです。通路の歩行の安全性や座席の座り心地は確保するとされています。

 改修工事にかかる費用負担は、「見切れ席」の発生について設計者から事前に説明がなかったこと等から、設計者で負担するよう協議中としています。
 また、芸術館のこけら落としは、予定通り5月8日に行うこととし、改修工事の施工が間に合うよう設計者等と調整していくとしました。

 今日段階で課題と思われる点を整理しておきます。
 12日の総務委員会に備えたいと思います。

★見切れ席の発生の責任は何処にあるのか

 『建設基本計画』では、客席について、「1,300席程度」「客席形状は鑑賞環境の良い席をより多く確保できる形状とする」とし、設計及び建設工事を発注しています。
 より高い鑑賞性能、音響性能を求めているものですが、「より多く確保する」という仕様表現は若干曖昧さを残しているのではないでしょうか。

 市側は、設計者との舞台の見やすさ(客席のサイトライン)に関する打ち合わせにおいて、➊「敷地条件等から1300席の確保は難しい」とされたこと、➋一般的に囲み型の客席配置の場合、バルコニー席などの端席に見切れが発生している事例があることは事前に認識していたこと、➌設計者からは「中央部座席から舞台を見た視線を表した資料」により舞台の見やすさの説明があったが、見切れ席について具体的な説明はなかったこと等を明らかにし、今回の約90席の見切れ席の発生は引き渡し後に判明したとします。

 こうした経過を考えると、鑑賞性能の確保という観点から、見切れ席の発生について明確な説明がないまま設計・施工されたことになり、その責任は一義的に設計者にあると考えられます。

 したがって、改修・改善工事は、設計者の費用負担で行われるべきです。

★「舞台の7割が見える席」というのは合理的なのか

 改修工事により、特に見えづらい席で最低でも舞台の7割が見えるように「見やすさ」を改善するとしている点です。
 7割見える席=3割見えない席の存在は、メインホールの鑑賞性能の観点から考えれば、合理的な目安とはいえません。

 しかしながら、10割見えるようにするには1m以上のかさ上げが必要になるとされ、現実的ではありません。
 結局のところ、安全性と鑑賞性の妥協点が「7割」ということなのでしょうが、やっぱり釈然とはしません。

 例えば、「8割の見える化」との試算比較等がされたのかといった多角的な検討の可否を質す必要があります。
 
 また、改修によって本当に7割見えるようになるのかの確証も必要です。
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設計者の三次元CADを用いた算定より

設計者の三次元CADを用いた算定より


 設計者の三次元CADを用いた算定では、舞台床面の見える率=38.2%が最低ラインとして示されていますが、写真のように客席に観客が座ると1割程度しか見えなくなっている現状を考えると、設計者の算定が本当に妥当なのかとも思ってしまいます。
 
 市側は、観客の座高110㎝を想定した算定で確度を信頼はしているとしていますが、これまた釈然とはしません。

 7割見える化の確度は担保されているのか、やってみなければわからないということにならないようチェックが必要です。

 槇設計事務所が同様に設計した広島県三原市の芸術文化施設では、2階席が急勾配となり転倒事故が発生したことから、安全性に配慮し勾配を緩くした経過があるようですが、いずれにしても、舞台が7割しか見えない席が存在することに変わりはありません。

 改修工事によって、7割に改善される席は何席なのか、さらに8割、9割、10割に改善される席がどれだけなのか、といった検証・確認も必要です。

 やむを得ないところか?!と思いますが、そうすると芸術館メインホールの運用が課題となります。

★「見切れ席」をどのように運用するのか

 見切れ席の利用について、チケットの販売面から、どのように運用するのかといった運営・運用上の課題が浮上します。

 2階端部の「見切れ席」が2階中央部分と同じ料金というのは市民の理解は得られないでしょう。

 鑑賞性が問われる演劇や舞踊等において、「見切れ席」を販売しないという方法、或いは値段を安くして販売する方法が考えられますが、収益性の観点から得られるべき価値が損なわれるという問題が発生します。
 将来的に得られるべき価値が損なわれることについての補償をどのように考えるのか、といった問題です。

 座席の販売等の運用は、芸術館を指定管理者として運営管理する「長野市文化芸術振興財団」の範疇となります。イベント主催者の意向も考慮されるところでしょう。

 なかなか難しい問題であると思いますが、12日の総務委員会では、芸術館メインホールの運用を含め、考え方を質したいと思います。
 多分、「検討中」との域を超えないとは思いますが…。

★新年会の話題は「見切れ席」で沸騰状態

 地域の新年会では、芸術館の「見切れ席」の話題がもっぱらです。

 新聞報道等を見た市民からは「市役所は承知していたのか、いい加減すぎる」といった市行政への厳しい意見とともに、運用については「同じ料金というのは納得できない。安くするのも一つの方法だが、販売しないようにすべきでは」等々の意見が相次ぎます。

 市行政への批判については、「設計者に瑕疵責任がある」と、誤解を解きながら話をしていますが、運用をめぐる意見は様々です。

 「販売しない、使わない」という意見は、一生の思い出となる小・中学生の鑑賞会などで、見え方が異なるというのは、子どもたちにとって大変不幸なこと、という意見です。
 確かに同感です。

 運用上、また企画イベントの性格に配慮しながら、どのようにメリハリをつけるのか、基準が必要です。

 得られるべき価値の損失の問題と合わせ、市民の理解が得られるよう知恵を発揮しなければなりません。

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➡芸術館メインホール「見切れ席」を巡るその後の状況について(160512補強)
 160427「芸術館メインホール…舞台の見える率、平均74.2%に改善されたとするが…」