運転免許証返納高齢者にタクシー利用を…市に要望

福岡、大分を中心とする九州豪雨は、甚大な被害を発生させ、今も懸命な救助活動が続いています。心からお見舞い申し上げます。


7日午前、長野県タクシー協会長野支部等の代表の皆さんが、「運転免許証返納者に対するタクシー利用券の発行を求める要望書」を長野市長宛に提出しました。

要望した団体は、県タクシー協会長野支部(支部長=中村行隆・桜観光タクシー㈱専務取締役)、長野地区タクシー事業協同組合(理事長=藤本豊一・長電タクシー㈱代表取締役社長)、市タクシー交通対策協議会(会長=冨田功・平和観光タクシー㈱代表取締役社長)で、長野地区のタクシー業界の代表の皆さんです。

長野市都市整備部長、保健福祉部長に要望書を提出

長野市都市整備部長、保健福祉部長に要望書を提出

私は、長野駅前整備に伴うタクシープールの確保に係る問題で、タクシー協会や事業協同組合の皆さんと一緒に市に対応方を求めてきた経過があり、声をかけていただきました。平和観光タクシー㈱の地元議員である鈴木洋一議員と同席しました。

昨今、高齢ドライバーによる交通事故が多発し、また今年3月の道路交通法改正により高齢ドライバーの認知症対策が強化され、免許証の自主返納の増大が予想される中、高齢者の交通事故を減少させるとともに、増加する運転免許証返納者の生活の足を確保するために、運転免許証返納者に対するタクシー利用券の発行を市に要望する内容です。

県タクシー協会では、障がい者に対する運賃の1割引とともに、免許返納者に対する運賃1割引サービスを自主事業として実施しています。
例えば、初乗り710円の運賃に対し1割相当の80円を割り引いているもので、長野市内では17,064回分、268万円余(H28年度)をタクシー協会として負担しています。

因みに市の「障害者タクシー利用券」交付事業は、1級・2級の身体障害者手帳所持者に対し、1枚600円(寝台・リフト・スロープ付き時間制運賃タクシーを利用した場合は1枚700円)のタクシー利用券を年間36枚交付するもので、タクシー協会の身体障害者1割引と併用できるものです。

長野市障害者タクシー利用券交付事【長野市HP】

対応した都市整備部長や交通政策課長らからは、「趣旨を受け止め、検討したい」と述べる一方、「高齢者の足の確保、外出支援事業として『おでかけパスポート』事業(70歳以上の高齢者を対象に路線バス等の運賃を距離に応じ110円から200円とするサービスでバス事業者も一部負担)を展開しており、免許返納者に対する受け皿ともなっていることに理解をいただきたい」として、検討の難しさというか、課題が残ることを滲ませました。

左から中村支部長、藤本理事長、冨田会長。そして市の上平都市整備部長、竹内保健福祉部長

左から中村支部長、藤本理事長、冨田会長。そして市の上平都市整備部長、竹内保健福祉部長

これに対し、協会からは「バス停まで行けない、バスを利用できない高齢者の足としてドア・ツー・ドアのタクシーが利用されている。タクシーの利用促進という点からも検討を願う」と重ねて要望しました。

私からは、「高齢者の交通事故防止、公共交通機関と位置付けるタクシーの利用促進という観点から、前向きな検討」を強く求めました。

さらに、県タクシー協会の免許返納者1割引サービス事業への助成を検討することや、免許返納高齢者に対する時限付きのワンポイントサービスとして、協会の1割引サービスに、市の事業としてもう1割を上乗せすることなどを検討してもらいたいと提案しました。

長野市のH28年度での免許返納者は1,036人(県では5,210人)で、道交法改正によりさらに増えていくことが予想されます。

また、高齢者が第一当事者の交通事故件数(H28年)は、65歳から74歳までで205件、内死者8人、75歳以上では118件、内死者2人で、総じて交通事故件数が減少する中で、高齢者の事故の割合が増加している傾向にあります。

65歳以上では、事故全体の21.5%、死者数では58.8%を占めています。

高齢者の事故防止、免許証返納の促進は喫緊の課題となっています。この課題解決の中にタクシーの利用促進という課題をしっかりと位置付けていく施策展開が問われていると考えます。


全国的には、高齢者免許返納支援事業(例えば、年間約1万円のタクシー利用補助)に取り組む自治体が増えています。ただし、免許返納者に限定しない高齢者タクシー利用助成事業として実施されているものが多いようです。

前橋市では、75歳以上の高齢者、65歳以上で運転免許証がない高齢者、身体・精神・知的障害者、要介護・要支援認定者、妊産婦、免許証自主返納者等を対象に、タクシー運賃の半額(1運行につき上限1000円)を年間120回(60往復分)まで支援・助成する「マイタク」(デマンド相乗りタクシー事業)をH28年1月から実施しています。

マイタク登録者数は16,000人を超え、追加補正予算を編成し、1億4,000万円余の事業になっているとのことです。

県内では、小諸市が年間3万円(1枚1,000円の助成券を年間60枚を限度に交付。ただし半額を自己負担)、下諏訪的では年間12,000円(1枚500円のタクシー券を月2枚まで助成)、小布施町では年間25,200円(月2,100円の助成×12月)などの取り組みがあります。

いずれも、長野市の「おでかけパスポート」的な事業はなく、路線バスや地域循環バスとの併用でタクシー利用を図る事業となっていることがポイントです。

したがって、長野市の場合は、バス利用の「お出かけパスポート」事業をベースに置いたうえで、タクシーの利用促進を考える必要があるということでしょう。

知恵と工夫が求められるところです。

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