市立公民館のコミュニティセンター化を質す【3月議会の質問より➍】

市教育委員会では、社会教育法第20条に基づき設置・運営されている市立公民館(全29館)を社会教育法の適用を除外し、市長部局の所管となるコミュニティセンター(略称・コミセン)に移行させる方針を固め、新年度では6月議会に条例案を提出し、モデル事業に着手したいとしています。

「コミセン化望ましい」…社会教育委員会議の答申

昨年7月に市教育委員会は社会教育委員会議に、「公民館のあり方について」を諮問。

同会議では市立公民館の果たすべき役割や事業、課題の他、住民自治協議会からの意見や要望、コミセン化を進めた先進事例の状況などの勉強会も開催し12月には「多様化した住民ニーズを踏まえ、地域の拠点施設としてより地域活動に活用できるよう利用上の制約を緩和することが適当である」「モデル地区設定による施行を実施し、課題を洗い出すとともにその対応を図りつつ、これからの時代に合った制度を導入することが望ましい」とする答申をまとめました。

社会教育委員会議「公民館のあり方について」答申書
社会教育委員会議に提出された「公民館のあり方」に関する資料

➡以下掲載している図表は、社会教育委員会議に提出された「公民館のあり方」に関する資料より抜粋。

利用制限の緩和を求める住自協の声

住民自治協議会の活動が活発化するにつれ、市立公民館の利用について、地域活動やまちづくり活動に制約がかかるとの問い合わせや要望が増えてくる中、公民館に利用を断った事例などを調査したところ、福祉活動での利用や子どもたちの学習や部活動、軽トラ市など、地域住民の物販や会議室を持たない地元事業者の会議の場としての利用制約などが挙げられたとします。

特に依拠している意見は、「公民館で地域づくりにつながる物販ができない」「放課後の学習の場として利用できない」との声です。

こうした意見が、社会教育法の適用を除外し、物販や民間利用ができる公民館の利用制限緩和を図る背景となっています。

住自協や地域各種団体の公民館利用を促進し、“まちづくりの拠点”としての役割を果たすことを否定するものではありません。地域住民の利用拡大について運用で制限を緩和することができないのかとも考えますが、法準拠のハードルは高いようです。

拙速に進めるべきではないと釘をさす

戦後、社会教育法に基づき、長きにわたり社会教育、生涯教育の拠点として中心的な役割を担ってきた公民館の位置付け・機能の見直しは、これまで公民館が果たしてきた役割をしっかりと評価・検証した上で、慎重に進めるべきであると考えます。

なぜなら、社会教育法の適用を除外する規制緩和により、社会教育・生涯教育の拠点としての役割が希薄にならないかを懸念するからです。

また、諮問された社会教育委員会議の議事録を見ると、公民館の歴史的な評価・検証の議論が希薄で、利用制限緩和のみのメリット・デメリットに集中した検討が行われているからです。

拙速に進めるべきではないと釘をさしながら、コミュニティセンター化を質しました。

そもそもコミュニティセンター化とは?

全国的に公民館の管理・運営を教育委員会から首長部局に移し、社会教育法の適用を除外し、「まちづくりセンター」的なコミュニティセンターに見直す動きが強まっています。


香川県高松市や広島県呉市などの取り組みが注目され、コミセン化を審議した社会教育委員会議でも取り組み状況を勉強したとされます。

コミュニティセンターは、公民館の機能を保持したうえで、地域と行政のつなぎ役として、住民への的確な情報提供や各種情報の連絡調整、さらには地域諸団体への側面的支援、諸団体間の調整、自立への支援の役割を担うものと一般的に整理されています。

さらに、こうした機能拡大に応じて、職員も公民館時代の2人~3人体制を、コミセンでは4人~6人体制とするなどの態勢強化を図っている自治体(例えば出雲市)もあります。

文科省では、教育委員会が担っている公民館や博物館などの公立社会教育施設の事務を首長部局に移管し、公民館を地域おこしの拠点に位置付ける検討を進めているようです。

「営利目的」の利用緩和

コミセン化の大きな特徴は、社会教育法が禁止する「営利目的の事業」「特定の政治の利害に関する事業」「特定の宗教の支持・支援」などの公民館利用の制限を緩和することにあります。

特に留意すべき点が「営利目的の事業」の緩和です。

営利目的を含む民間開放により、地域の団体利用が弾き飛ばされてしまい、地域コミュニティの拠点としての機能が損なわれてしまうこと、営利目的行為が例えばSF商法等の場として利用され、住民の安全・安心な暮らしを支えるコミュニティ機能が阻害されてしまうことが極めて危惧されます。

社会教育法より
(公民館の目的)
第20条  公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。
(公民館の運営方針)
第23条  公民館は、次の行為を行ってはならない。
1 もっばら営利を目的として事業を行い、特定の営利事業に公民館の名称を利用させその他営利事業を援助すること。
特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。
2 市町村の設置する公民館は、特定の宗教を支持し、又は特定の教派、宗派若しくは教団を支援してはならない。

まずは、公民館の歴史的な評価・総括をすべき

この問いに対し教育次長は、「市立公民館には社会教育や生涯学習の拠点として、また地域コミュニティやまちづくりの拠点としての機能が求められており、個人の学びを自治や地域振興により一層の役割を果たすことが重要」と答弁し、コミセン化しても社会教育・生涯学習の拠点としての役割は担い続ける必要があり、さらに発展させていくことが必要であるとの認識を示しました。

また、答申をまとめた社会教育委員会議における検討は、「公民館のあり方について十分熟知されている委員」の審議であることから、公民館が果たしてきた役割、これから果たすべき役割について『十分に検証されている』との趣旨を滲ませたいとする答弁でした。

公民館の役割…さらに1年間かけてじっくりと総括すべきでは

私は「コミセン化は拙速に進めるべきでない」と強調し、「少なくとも1年間じっくりと公民館が果たしてきた役割を議論・総括したうえで、モデル事業の試行段階に進むべき」と求めました。

教育次長は「議会でも何回も質問されており、地域からもいろいろな意見をいただく中で、前々から検討・研究を重ねてきた。29年度から組織的に研究・検討し、段階的に今に至っている」として「拙速に進めていない」との趣旨を強調しました。

しかし、社会教育委員会議への諮問・答申は、議会側は新聞報道で知るところとなった経緯があります。公民館にアンケートを含む意向調査が実施されていたことは承知していましたが、答申は“青天の霹靂”状態です。

議会・議員のアンテナが低いと言われれば、それまでの話ですが、唐突感、拙速感は否めません。

直営公民館、指定管理公民館、そしてコミセン、利用者は混乱しないか

公民館のコミセン化により、市立公民館は直営と指定管理に加え、コミュニティセンターという新しい施設ができ3つの形態となります。市民、利用者を混乱させることにならないかと質問しました。

これに対し教育次長は「できれば一気にコミセン化にしたいとの思いがあったが、住自協や社会教育委員会議の意見を踏まえてモデル的に実施し、検証したうえで進めていく」と答弁しました。
つまり、一気にコミセン化できれば混乱しないのだが、一時的な混乱はあり得るとの認識を示したものと理解します。

民間の営利目的事業は排除すべき

社会教育法の適用除外とする公民館の利用制限緩和は、主に貸館事業における制限緩和として作用することになります。
コミュニティセンターは地方自治法を根拠法とすることから、公共施設全般への禁止事項、「公序良俗に反しないこと」「施設の破壊・滅失行為を行わないこと」の2つが適用されるだけとなります。

特に問題となる点が、前述した通り「営利目的の事業」の制限緩和です。
私は、住自協や地域の団体のまちづくりに資する営利活動への利用開放は「是」としますが、原則的に民間事業者の営利目的事業は排除すべきであると考えます。

地域の団体の利用が制限されてしまうこと、地域コミュニティの機能を阻害することにつながりかねないからです。

条例制定にあたり、民間の営利目的事業を公民館利用から排除すべきであると質しました。

「地域づくり・生涯学習推進が最優先、営利目的の利用は制限」と答弁

教育次長は、「条例・規則において施設利用の目的を明確に示すとともに、地域づくり、市民福祉の向上、生涯学習の推進を最優先とし、営利活動のための施設利用や販売行為などについて制限を設けていく」「併せて、運営審議会や運営委員会を引き続き設置し、住民本位の運営を原則とする」と答弁しました。

具体例として香川県高松市の条例を示しました。

「地域住民によるまちづくり活動の場、生涯学習及び地域福祉の推進に資するための諸活動等を提供し、市民福祉の増進に寄与するため、センターを設置する」と設置目的を明確に規定し、規則において「許可なく物品等の販売をしないこと」を定めているとされます。

また、使用者が営利を目的として使用するときまたは入場料もしくはこれに類するものを徴収するときの使用料を、規定する額の3倍の額にし、施設の設置目的となる利用と営利目的の利用を区分しているともされます。

私は、高松市条例より、地域コミュニティの拠点という位置づけを柱に、より規制的な利用基準が必要であると考えます。

コミセン化の流れ止まらず…条例制定への備え必要

公民館のコミセン化は粛々と進むことになりそうです。しかし、一方で公民館の現場サイドには指定管理への移行の是非・可否を含めコミセン化に対しいろんな疑問がくすぶり続けています。

私は、社会教育法に基づき社会教育、生涯教育の拠点である公民館の活動は、住民自治協議会の活動による住民自治の取り組みが進む中、当然にして地域性に根差した活動を重点とし、「学び」を通した地域コミュニティの拠点、まちづくりの拠点という側面・役割を持つに至っていると考えています。

公民館の学びを通したまちづくりセンターへの移行・発展は、住民自治協議会の住民自治の取り組みをさらに発展させる観点からも、長野史的には時代の要請であると受け止めるからです。

その意味で、地域に根差した社会教育・生涯教育、学びの拠点としての役割が担保されること、地域住民参画による運営が原則として担保されることを前提に、公民館のコミセン化を一概に否定する考えには立っていません。

市教育委員会では、高松市の条例を参考に長野市コミュニティセンターの条例原案を考えているようです。

高松市条例をしっかりと吟味し、これからの取り組みに活かしたいと考えます。

包括外部監査の意見と公民館活動への支援

市立公民館のコミセン化に関連して、市立公民館の管理運営をテーマとした今年度の包括外部監査の意見と市立公民館への支援強化についても取り上げました。

次号で報告します。

追記:2018年9月議会でも取り上げました

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