ここがおかしい!地方議員の厚生年金加入問題

9月市議会定例会で「厚生年金への地方議会議員の加入を求める意見書」が新友会と公明の賛成多数で可決し、国に意見書を提出することになりました。

この意見書に反対したことは既に報告しました。

9月市議会定例会は26日、新しい委員会所属などの議会人事を行い、閉会しました。 市提出のすべての議案を可決 25日には、18億5,800...

専業の地方議員は国民年金に加入していますが、地方議員のさらなる老後保障のために、常勤の首長や自治体職員と同じように厚生年金に加入できるよう国に法整備を求めるものです。

「意見書」では「地方議会議員が厚生年金に加入できるようになれば、民間会社の社員等が議員 に転身しても切れ目なく厚生年金の適用を受けることができ、老後や家族を心配することなく選挙に立候補できる環境が整う」ことになり「多様で有為な人材の確保に大きく寄与すると考えられる」とし、老後保障に加え、議員のなり手不足の課題解決の方策ともなるとの考えを示しています。

果たして、そうでしょうか。

問題点➊…議員の身分に関する問題は全議員の合意形成が不可欠

全国市議会議長会や町村議会議長会は、2011年に廃止された地方議員年金制度に代わる新しい議員年金制度の創設を国に求めてきました。自民・公明両党で今年の通常国会での法案提出を目指しましたが、議員優遇との批判がある中、断念してきた経過にあります。

国における新しい立法措置を促進するため、全国市議会議長会が、国に意見書を上げるよう働きかけてきています。長野市議会では会派代表者会議で意見書の提出について協議されてきましたが、合意に至らない中、議員有志の提案で意見書可決が強行された形です。

しかも、意見書の採決にあたり、改革ネット・共産・無所属の5人の議員が反対討論を行う一方、賛同者からは賛成討論が行われませんでした。市民に対する説明責任に背を向ける姿勢といえるのではないでしょうか。

議員の身分・処遇に関する問題は、全会一致となる丁寧で慎重な議論・検討が求められて然るべきです。合意形成に向けた十分かつ慎重な議論を排除し、数の力で押し切るようなことは許されません。

問題点➋…年間3,500万円の新たな公費負担に市民の理解が得られるのか

議員が厚生年金に加入する場合、保険料を事業者である市が2分の1を負担することになり、長野市の場合で年間3,500万円の公費負担が必要となります。全国では年間200億円の新たな公費負担が生じると試算されています。

議員年金制度が廃止された時点で、現職議員は保険料の8割を返還受領するか(実際には7割でしたが)、年金として受給するかを選択することになりました。廃止以前に3期以上務めいわば退職された議員は継続として受給資格者となっており、かかる受給資格者への給付は今後約50年続くとされ、廃止後の累計で1兆円超の公費負担が必要と推計されています。

この公費は、市議会の場合は市議会議員共済会への負担金として賄われています。長野市の負担金はH30年度で1億770万円余、全国では352億円に上ります。この負担は50年間続くことになります。
つまり、過去の議員に対する議員年金の支給のための公費負担に加え、厚生年金加入に伴う新たな公費負担が上乗せされることになります。

議員への優遇策、特権として批判が高まる中、廃止された議員年金を姿を変えて復活させる何者でありません。

意見書の提案者及び賛同者は「議員の特権ではない」と強調しましたが、到底、市民の理解が得られるものとは思えません。

問題点➌…議員のなり手不足の課題解決につながるのか

議員のなり手不足は町村議会をはじめ、人口規模の少ない市議会では深刻な課題となっています。
「議員の厚生年金加入」は、なり手不足の課題解決につながる方策の一つとされますが、本当にそうでしょうか。

私は、町村議会や人口規模の少ない市議会では、報酬の引き上げこそが必要であると考えます。報酬引き上げ分を地方交付税で措置する(公費を投入)方がまだ納税者の理解が得られるのではないでしょうか。厚生年金制度が選挙に立候補する動機付けとなるとは思えません。

私は、例えば、最初の最低1期4年間に限定し、サラリーマンとの兼業を認める社会的な仕組みづくりを進めることが重要ではないかと考えます。

さらに、議員の老後保障という観点からは、国民年金の被保険者として、暮らすことができる最低年金の引き上げこそが求められる課題でしょう。国民年金制度に対する信頼と十分な保障を確立することです。

問題点➍…議員職は職員と同じように常勤なのか

国に求める法整備は、地方公務員等共済組合法において、常勤として扱われる首長や自治体職員と同じように、新たに議員を被保険者に加えるものとなります。

議員も常勤として扱うことになるものと思われますが、議員の職務形態はそれぞれ異なり、労働時間の拘束が明確にあるものではありません。ましてや、保険料の半分を市が負担するということは、議員は誰に雇用されていることになるのでしょうか。

議員は、選挙による市民の負託に基づき、4年間の任期に限り身分が保障されている職です。地方公務員法上、「特別職」に規定されていますが、地方公務員法の適用からは除外されています。

市議会議員を市長と同じように「常勤として扱う」手法は、余りに手前みそでご都合主義との批判を免れません。

長野市議会として市民への説明責任を果たすべき

市民団体から、意見書可決を受けて9月26日、「(議員の厚生年金加入の)問題を理解、納得するためには、公正で正確な情報と、市議会における議論の経過を、丁寧に市民に伝えることが必要不可欠」として市民向けの説明会の開催を小林治晴議長に要望、議長は「(議会内で)相談して、しかるべく検討したい」と述べたと報じられています。

議員の身分・処遇に関する問題で、新たな公費負担が生じるだけに、長野市議会としての議決責任、説明責任が問われます。