青木島遊園地の存廃問題…荻原市長が出した答えは結局「廃止」でした。
3月1日、最大会派・新友会の代表質問に答える形で「遊園地は廃止とし、4月中には土地を返す予定」と表明しました。
住民説明会を大きな転機として、遊園地の存続を再検討するとしてきただけに、再度の「ノー回答」には、期待を裏切られた想いです。
この議会での本会議質問では、改革ネットとして、青木島遊園地問題に集中した質問を展開してきています。
「借地の継続利用が困難」を理由とする廃止決定
市長は、遊園地の継続利用を断念した理由として、「市が去年に廃止を決定したあと、土地の所有者が新たな土地利用を計画していて、これ以上、土地を借りることができないため」とし、「遊園地の存続を選択肢として真剣に検討し調整してきたが、結果として存続を望んだ住民の期待に応えられなかったことは大変申し訳なく思う」と陳謝しました。
そのうえで、地域の拠点である小学校で子どもの身近な遊び場をつくることなど、「荻原ビジョン」を命名する構想を示し、子育てしやすい街づくりを進めるとしました。
「荻原ビジョン」は現実的な解決策となるのか
「荻原ビジョン」なるものは、放課後子ども総合プランを進めるにあたり、学校施設を活用し児童センターをこどもプラザに統合していくとともに地域に開放していくこと、市内の公園・遊園地を親子そろってくつろげる空間に見直すこと、この二つを掲げ、青木島遊園地廃止後の「解決策」として関係する施設整備の方向性を5点示しました。
➊青木島児童センターを青木島小学校内の「子どもプラザ」に統合し、放課後も学校外に移動することなくのびのびと過ごせるようにする。
➋統合に伴い、青木島小学校の敷地内に遊具などを増やして子どもたちが毎日、自由に遊べる環境を整える。
➌現在、送迎用の車両が狭い道路に入り込んでいることから、保護者の送迎用の駐車スペースを確保し、車の動線を大きく変える。
➍学校の機能を充実させて社会とのつながりを深める。
➎老朽化した青木島保育園や児童センターの活用について考える。
現実的で実効性のあるビジョンとなりうるのかが問われます。
市長は、今回の事態の反省点として、「地区の役員に任せすぎてしまった」とし「重要な決定にあたり、住民の意見の聞き取りや、情報の知らせ方にも課題があった」としますが、すべて後付けの釈明に過ぎず、後手後手に回ってしまった経過をなぞるだけ、市民の期待と声を裏切る背信行為と言わなければなりません。
交渉難航知りながら、情報開示せず…存続再検討は見せかけか?
代表質問や一般質問で明らかになったことは、昨年R4年2月に地権者に遊園地の廃止を伝え、借地契約の中途解約を申し出、3月には「廃止のあたっての原状復帰に関する同意」がなされ、これにより解約の合意が成立していたとすること。今年1月後半から2月後半にかけ、「少しでも長く借りられないか」、地権者や関係者(不動産業者)と協議を重ねてきたが、新たな土地利用の計画が進んでおり、合意が得られなかったとしていることです。
遊園地の継続利用にあたりクリヤすべき最大の課題は借地契約問題であることを指摘してきました。
R7年3月末までの借地契約において自らの都合でR5年3月末での中途解約を申し出、地権者と解約に合意した市側が、改めて自らの都合で借地契約の継続を申し出、協議を重ねたが、合意に至らなかったということなのでしょう。
市長自らが交渉に臨んだのかとの問いには「地権者・関係者に手分けして交渉を進めてきた」と繰り返し述べ、明快に応えようとしていません。直接交渉に臨んだと信じたいところです。
一方で、地権者に責を帰すべき事由は何一つありません。遊園地の廃止に異議を唱えていた地権者にすれば、市側の強い廃止意思により、しぶしぶ了解し、新たな土地利用に向け準備を始めたということでしょうから。
今更となりますが、周辺住民の相違に欠く遊園地廃止決定、借地契約の中途解約そのものが、市民の利益を損ねる行政行為であったといわざるを得ません。
問題は、2月11日の住民説明会において、土地の継続利用交渉が難航していることを承知しながら、交渉途中を理由に情報を一切開示せず、「存続を含め再検討する」と約束し、あたかも「遊園地の存続・継続利用が可能である」がごとき印象操作を市長自ら演出していたということです。市長の苦しい胸の内は察しますが、極めて不誠実な対応といわなければなりません。
結局のところ、市行政全体の意思としては「廃止ありき」だったということではないでしょうか。
また、今議会初日における「施政方針」においても「様々な課題や制約を勘案する中で、近く私が考える解決策を示したい」と述べましたが、「制約」の内容には言及せず、先送りしたにすぎません。
「何のための住民説明会だったのか、アリバイ作りではないか」との批判は至極当然でしょう。市民に対する重大な背信行為と言わなければならず責任が問われます。
遊園地にかかる土地の賃貸借契約は公契約です。継続利用に向けた交渉経過は明らかにされるべきです。
地権者の方は、新たな土地利用として不動産業者と既に契約されていることが推察され、不動産業者にしてみれば、土地利用を進める途上での、新たな遊園地使用の申出により、損害を被ることになりますから、市側にその損害の賠償を求めることも考えられます。
いずれにしても、土地の賃貸借契約の中途解約にあたっての違約金の支払い、契約変更の締結の状況、損害賠償の求めを含め、どんな交渉をした結果なのか、納得できる説明を市民に、そして議会にすべきでしょう。
青木島小学校施設を子どもの遊び場に…実行性があるのか
市長が「解決策」として示した青木島児童センターの小学校敷地内・こどもぷらざへの統合を柱とする「荻原ビジョン」の現実性が問われます。いつまでに事業を完結できるのか、その目途さえ示されていません。
青木島小学校の空き教室の状況をどこまで踏まえたものなのか、現状の校舎活用で新たな放課後子ども総合プランを実施する施設整備計画はどこまで煮詰まっているのか、グランドの敷地が他の小学校に比べ7割程度という狭いグランドに、子ども達の安全確保を前提に遊具等の設置が十分に行えるのか、送迎用の駐車スペースは何処に整備できるのか、3月春休み中のグランド使用は可能なのか、4月以降の児童センター利用児童の遊び場はどのように確保されるのか(支援員確保の目途が立っていない)、何一つ明確になっていません。すべてがこれからです。
「課題の提起」「市長の問題意識」という限りにおいては、理解できる部分もありますが、「解決策」というには程遠く、まだまだでしょう。
そもそも、「荻原ビジョン」なるものが、こども未来部、教育委員会と連携し協議されたうえでの考え方なのか、疑問を禁じえません。担当部長らは答弁で「市長からの指示を受けて、検討を始めた段階」と明かしています。
市長の想いだけが空回りしているのではないでしょうか。トップダウンにすらなっていない危うさが拭えません。
さらに存続を求めてきた周辺住民にどんな説明責任を果たすのか、議会での表明で事足りるのか、住民自治力を強調する市長の対応が求められます。
改めて再考を求める
遊園地の継続使用を可能とするハードルは極めて高いと思われますが、市長の責任において改めて「再考する」ことを求めたい。この3月議会中に明確な方向性を市民と共有することが重要です。委員会審査を見据え、徹底した集中審議が必要です。