地域包括ケアシステムの課題を探る

 14日、『高齢者の「生き方」を地域で支える~地域包括ケアシステムの課題を探る~』をテーマに、上諏訪温泉「湖泉荘」で地域政策フォーラムが開催されました。
 社民党長野県連の自治体議員を中心にした実行委員会で呼びかけたもので40人余りが集いました。
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 13日の私鉄中部地連の自治体議員団会議に続き、名古屋からの帰路、途中下車で参加しました。

 フォーラムでは、「NPO市民福祉情報オフィス・ハスカップ」を主宰する小竹雅子さんが「介護保険制度の課題」と題し基調講演。
 小竹さんは、介護保険制度のスタート以来、社会保障審議会をすべて傍聴し、メルマガ「市民福祉情報」を無料配信、利用者目線で介護保険制度の今とこれからを発信し続けている方です。
 【参考】NPO「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」

「医療介護の総合的確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法)」の制定に伴い、今年4月から大幅に見直された介護保険制度。

 地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化を“目玉”とする介護保険制度の大幅改定では、要支援1・2の介護予防事業、日常生活支援総合事業が、介護保険制度による給付のサービスから、市町村の事業に移行。介護予防・日常生活支援総合事業(略称=総合事業)として展開され、2年間の移行経過措置が取られることに。
 
 市町村の事業となることから、市町村ごとのサービス格差、市街地と中山間地域でのサービス格差が懸念されています。

 認定からサービスを利用するまでの流れも複雑化します。訪問介護と通所介護のみを利用している要支援1・2の認定者は、総合事業でフォローされることになり、安易に認定から外されることも心配です。

 介護予防事業等の経費は、これまでは介護給付費見込額の3%以内とされてきましたが、算定基準が「給付費の伸び率」(=5%)から「高齢者の伸び率」(=3%)に変更され、全体的に圧縮されてしまいます。

 総合事業は、全国市町村の6割がH29年度(2017年度)から実施を予定しているとのこと。
 長野市はH28年度中の移行としています。

 特別養護老人ホームの新規入居は「要介護3」以上に重点化、一定以上の所得のある利用者の自己負担は1割から2割の2倍に(在宅サービス利用者の15%程度、特養利用者の5%程度が該当すると推計)。食費・居住費を補てんする「補足給付」の要件に資産などを追加などなど問題点が山積。
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 小竹さんは「包括的支援事業=地域支援事業で、『地域ケア会議』が設置されるが、利用者、家族など介護者の参加が盛り込まれず、措置事業時代に逆戻りしている」「モデル事業実施自治体では、利用者が介護保険から卒業して、認定率が下がり、介護保険料の上昇を抑制する効果があったと報告されている。これでは、誰のためのケアマネジメントなのか。利用者の立場に立った自立支援とは真逆の方向に進んでいる」と厳しく指摘した上で、「利用者本位の介護保険制度なるよう、自治体議会から声を上げ発信してもらいたい」と強調しました。

 講演に続いて、講師の小竹雅子さんをはじめ、諏訪保健福祉事務所長の白井佑二さん、岡谷市内で小規模多機能型居宅介護等に取り組む今井祐輔さん(「和が家」代表)、水島誠一さん(「ドリームライフ」代表)らがパネラーとなりディスカッションが行われました。
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 白井諏訪保健福祉事務所長は、県の将来人口・高齢化率の推移、医療需要と必要病床数の推計をもとに、医療介護総合確保法で求められる機能別病床構成を見直す地域医療構想の策定をH28年度を目途に進めている状況や、地域包括ケア体制構築に向けた県としての総合的支援の概要を説明。

 県では、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、在宅医療の促進を前提に訪問診療が11619人/日から13857人/日に、在宅医療は21227人/日から25486人/日に増加する一方、必要病床数は、19672から16839と2000床減少すると推計しています(いずれも2014年ベース)。

 医療介護総合確保法は、在宅医療と介護の連携による地域包括ケアシステムを打ち出している点が大きな特徴です。つまり、医療面と介護の両面から地地域包括ケアを考えていかざるを得ない状況にあるということです。

 この点について、小竹さんは、「在宅復帰が強化され在宅医療にシフトしていく。介護サービスを減らして医療・看護・リハビリにシフトさせる方向は、本来の介護保険制度の理念・目的から離れ別物になっていくのではないか」と警鐘を鳴らします。

 今井さんや水島さんからは、小規模多機能型居宅介護(宅老所)や認知症カフェの運営を通して、「地域密着の小さな事業所だからできるサービス」に力点を置いてきたが、「小さいが故に新しい制度についていけない、事業として成り立たない状況に追い込まれている」と介護事業者としての窮状を訴えました。

 実際、老人福祉・介護事業の倒産は、今年1月から9月までの間に57件(前年同期の4割増し)、過去最悪ベースで推移しているとのことです。
 介護報酬の「マイナス2.27%」の影響は、小さな事業所では「マイナス8%位」にも上るとされます。

 安倍政権は「新三本の矢」で「介護離職ゼロ」を打ち出したが、喫緊に求められることは「介護労働者の離職ゼロ」との指摘は全く同感です。

 介護も在宅医療もマンパワー・人材の確保がなければ進みません。
 
 長野市の実情に照らした地域包括ケアシステムの課題は、まだ手探り状態ですが、利用者本位の制度なるよう、検証・提案していきたいと思います。