北九州市オレンジプラン

 視察報告第2弾は、5月21日に訪問した北九州市の「認知症施策推進計画」(オレンジプラン)です。
 北九州市は、保健・福祉局に「認知症対策室」を設置し、認知症対策に特化した計画を策定、総合的な認知症施策を推進しています。
 写真は、小倉駅から伸びる「都市モノレール小倉線」と市役所に隣接する「小倉城」。
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北九州市…オレンジプラン

(1)人口976846人、面積489.6㎢、人口密度は1984.7人/㎢。九州の最北部に位置する九州初の政令指定都市。現在では、人口規模では福岡市に次ぐ九州地方第2位の都市。
市の北側は日本海(響灘)に面し、東側は瀬戸内海(周防灘)に面する。関門海峡を挟んで本州の下関市と向かい合う位置にある。
(2)北九州市では、「認知症施策推進計画」(オレンジプラン)が視察テーマ。市役所で、保健福祉局・認知症対策室の係長から説明を受ける。
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高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍に…国の新オレンジプラン

 国では、今年1月に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)を策定した。

 H24年段階では、我が国の認知症の人の数は約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計され、軽度認知障害(MCI)と推計される約400万人と合わせると、65歳以上高齢者の約4人に1人が認知症の人またはその予備軍ともいわれている。
 高齢化の進展に伴う新たな推計では、H37年(2025年)には、認知症の人は約700万人前後になり、65歳以上の高齢者の約5人に1人に上昇すると見込んでいる。
 
 新オレンジプランは、こうした高齢化に伴う認知症の人の増加を見据え、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことを基本的な考え方にして見直されたものだ。

 次の「7つの柱」をベースにする。

➊認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
➋認知症の様態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
➌若年性認知症施策の強化
➍認知症の人の介護者への支援
➎認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
➏認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
➐認知症の人やその家族の視点の重視

 そして、認知症サポーター、認知症初期集中支援チームの設置、認知症地域支援推進員、認知症カフェなどの目標数を引き上げ、市町村における取り組みを支援するものとなっている。

国の視点先取り、「認知症対策室」設置し、施策展開

 北九州市オレンジプランは、国の動向を踏まえ、市の「認知症施策推進計画」としてH27年4月にまとめられたものだ。認知症の人本人や家族の視点の重視を先んじて取り入れてきたものとされる。

 北九州市では、要介護認定者の認知症自立度別データで認知症自立度Ⅱ以上と判定された認知症高齢者がH25年に33992人、10年間に約2倍に増加していることを踏まえ、認知症サポーター5万人達成、徘徊高齢者の安全対策、官民の垣根を超えた連携をめざす「北九州市認知症施策推進会議(北九州市オレンジ会議)」の開催、さらにタクシー協会・警察・行政との間で安全確保に関する協定を結ぶ(政令指定都市では全国初)など、様々な対策に取り組んできている。
行政組織としても「認知症対策室」(h26年4月)を設置し、施策展開を図っている。

北九州市オレンジプランの理念・基本方針

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認知症初期集中支援チーム

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 地域包括支援センター(市直営)を保健・医療・福祉の相談窓口とし、認知症対策として、「初期集中支援チーム」に訪問を依頼、個別支援を進める。そして、医療的支援が必要な場合に「認知症疾患医療センター」とそれぞれが連携し、一体的な認知症支援を行う形である。

 認知症疾患医療センターに指定・委託している民間病院に、年1200万円で「初期集中支援チーム」を運営委託している。
医療センター内に初期集中支援チームを配置していることで、連携がスムーズらなるものと思われる。

認知症疾患医療センター

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 認知症高齢者の早期発見・早期対応、医療・介護サービスの構築として、認知症疾患医療センターが運営されている。

 私は、市民病院に認知症疾患医療センターの開設を予算要望してきているが、まだ実現していない課題である。

 現在、二次医療圏に一つの「地域型」として民間病院(精神科病院)に、65以上高齢者人口6万人に1か所程度とされる「診療所型」として、これも民間病院(精神・神経内科)に運営委託している。
 それぞれ委託料は400万円、120万円で、人件費にもならない程度で運営しているという。
 往診もする「診療所型」をあと2箇所増やしたいとする。

オレンジ会議

 「市民一人ひとりが、認知症を正しく理解し、だれもが安心して暮らせる『みんなで』支えあうまち」の実現をめざして、官と民が一体となって全市的に認知症施策に取り組むために設置されているのが「北九州市オレンジ会議」である。

 医療・介護分野はもとより、商工会議所、郵便局、金融機関、交通機関、小売業の代表が参画している点が特徴だ。
 
 介護離職という問題や、認知症サポーターの拡充による快適に買い物できる環境の整備、窓口や配達先での適切な対応、若年性認知症に対する理解等が協議されているとされる。
 官・民一体の取り組みは学びたい。

住み慣れた場所で生活を続けられる大切さ

 「認知症を正しく理解し、だれもが安心して暮らせる『みんなで支えあうまち』」をめざし、地域では、認知症サポーターの養成(現在55000人、H29年度に70000人をめざす)をはじめ、認知症地域支援推進員を配置、また地域支援コーディネーターを置き、地域の支援体制の強化を図る。
 
 また、「徘徊高齢者等SOSネットワークシステム」をつくり、「捜索模擬訓練」にも取り組む。

長野市における認知症施策の課題

 長野市では、新しい「安心いきいきプラン21」(H27~H29)において、認知症対策として「認知症ケアパスの作成」「認知症地域支援推進員の配置」「認知症初期集中支援チームの設置」「認知症カフェの支援」を柱に取り組むとしている。下図は「安心いきいきプラン21」の概要版より。
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 認知症施策としては前進したものの、国の新オレンジプランを踏まえた体系的な施策展開という点では課題を残していよう。
 後追いで、できる施策から実施するという限定的な取り組みになっているように思われる。(もっとも、この点は詳細な検証が必要であるが…)

 「認知症初期集中支援チーム」は、H25年度モデル事業で中部地域包括支援センターに設置されているが、この拡充とともに、認知症疾患医療センター設置による医療的支援の整備が課題である。

 北九州市の取り組みを参考に、認知症の本人、その家族・介護者の視点を大切にした長野市の認知症施策の体系的なプラン作りに活かしていきたいものである。

 説明いただいた北九州市の「認知症対策室」係長は、「命を守るネットワーク」で3年間活動していて、当事者視点の大切さを熟知し、熱い想いで施策展開を考えていることが印象的であった。
 机上ではなく、現場経験を踏まえた職員、マンパワーの養成も課題であろう。