小・中のあり方調査研究特別委・視察報告【その2】…京都市

小・中のあり方調査研究特別委・視察報告【その2】は、京都市です。

京都市・教育委員会の概要

言わずと知れた「京の都」、1200年を超える悠久の歴史に育まれた京都府最大の都市。人口147万人余をようする政令都市。国内の市で8番目の人口を有する。

改装中の京都市庁舎、京都市会フロアーの委員会室で京都市教育委員会学校指導課・島本由紀参与らから説明を受ける。

歴史ある京都市庁舎

説明いただいた教育委員会学校指導課の島本参与ら

小学校164校、中学校73校、市立高校(工業高・音楽高・美術校など)10校、総合支援学校8校、市立幼稚園15園を擁し、H29年度からは政令指定都市として府から教員1万人の給与事務が移管される。約600億円の経費が市の経費となる。

明治5年の学制発布に先立ち、「竈金(かまどきん)の精神」で明治2年に町衆の手により64の学区制小学校「番組小学校」を創設・運営。以来、市民ぐるみ・地域ぐるみの教育が推進されてきた歴史と伝統を持つ。流石、京都市である。

小中一貫教育特区の認定…H16年度から

京都市教育委員会における小中一貫教育は、内閣府の構造改革特区制度を活用した「小中一貫教育特区」の認定に始まる。学習指導要領の基準によらない教育課程の研究・実践を可能とする。

特区認定の中学校ブロックにおいて、小学校における英語科や小中一貫した読解カリキュラムの開発など、小中間の連続性を高める特色あるカリキュラムを構築し、小中一貫教育のスタイルを築いてきたとされる。

また、全ての小中学校に「小中連携主任」をおき、小中の連携強化を図る取り組みを始めている。

H23年度から全市で小中一貫教育を展開、その背景

H23年度からすべての中学校ブロックで小中一貫教育を実施・展開する。

小中一貫教育導入の背景には、教育課題の複雑化と、小学校は小学校、中学校は中学校の不合理さを克服して、学力向上を目指すことにあるとされる。

京都市の小中一貫教育の類型、義務教育学校に移行も

H19年度に施設一体型一貫校(山間部で1中・1小)、施設併用型一貫校(市内部1中・2小)を皮切りに、施設一体型一貫校、施設併用型一貫校、連携型一貫校の3類型をとる。

いずれも学校選択制をとっていない。

ただし、施設併用型は【5-4制】で、小学校の過大化に伴い、小6年生が中学校と同じ校舎で学ぶ方式をとるもので、変則的と思われる。

H31年度・32年度に施設一体型一貫校を各1校開校予定とされる。
また、H30年度から校長1人校6校を義務教育学校に移行する計画

小中の統廃合にあたり、学校・学級の適正規模基準を設けていない点がポイントの一つ。

「京都市の小中一貫教育」京都市教育委員会のリーフ

「連携型一貫校」の具体的な連携内容

73中学校ブロック(中学校区)の約9割が「施設連携型一貫校」である。
小中間の連携として
*小学校専科やTT(チーム・ティーチング)授業を中学校教員が担当(乗り入れ)
*小中相互による授業研究、中学校ブロック単位での合同研修
*生徒指導関連や学力関連情報の共有
*中学校における授業体験・部活動体験
*児童会・生徒会の交流、小中の合同行事
*宿泊行事等の小小の合同行事

「5つの視点」の設定と「5つの実践」

小中一貫教育を推進するため、H20年に教育委員会から「5つの視点」を設定し、H28年度から「5つの実践」を各中学校ブロックに指示。

小中一貫教育・京都市の5つの視点
1.小中一貫教育目標の設定…小・中学校で目指す子ども像を共有し、子どもたちの「生きる力」の育成を図る

2.教育課程・指導形態の工夫・改善…教育課程(カリキュラム)の編成や指導形態などの工夫・改善を図り、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の育成を目指す
【例】京都市スタンダード(教育課程指導計画)に基づく教育活動の実践、中学校教員による小学校での授業

3.教育活動の連続性の確保…子どもたちの教育活動の連続性を高める
【例】小学生の中学校体験入学(授業体験、部活動体験)、小中合同や小小合同での行事(文化的行事、体育的行事、遠足等)

4.教職員間の連携・協働…小中学校の教職員間の「連携」と「協働」を深める
【例】京都市小中一貫学習支援プログラムや全国学力・学習状況調査の結果の共有・分析、小中合同研修会や授業研究の実施

5.家庭・地域との連携・協力…家庭や地域との「連携」・「協力」をより一層推進する
【例】小中合同でのPTA・地域行事の実施、 小中合同の学校運営協議会の設置

小中一貫教育・京都市の5つの実践
「5つの視点」に基づき、【9年間の教育目標の設定】【9年間の系統性を確保した教育課程の編成】【小中一貫教育を担保する組織運営上の工夫】を実践する指針として「5つの実践」を小中に指示する。。

1.各中学校ブロックで、小中学校の校長が協議し、地域の子どもの現状と課題や義務教育卒業時に目指す子ども像、さらに目指す子ども像の実現に向けた「つけたい力」及び「軸となる取組・活動」などを明らかにした、『小中一貫教育構想図(グランドデザイン・戦略マップ等)』を作成する。

2.『軸となる取組・活動』について、9年間の系統性のある年間計画を作成するとともに,「学びの約束・ルール」などを明確にする。

3.小中一貫教育の企画・立案や各教科等における取組の推進体制について、小中学校合同の部会などを設け、教職員間の連携と協働を図る。

4.「つけたい力」の実現状況や「軸となる取組・活動」の評価を学校評価のPDCAサイクル(計画⇒実践⇒評価⇒改善)を用いて絶えず点検し、その質の向上を図る。

5.小中一貫教育構想や「つけたい力」などの内容について、学校運営協議会や学校評議員と協議するとともに、保護者・地域への周知に努めるなど、家庭・地域との更なる連携・協力を進める。
また、小中学校合同の学校運営協議会の設置に向けた検討を進める。

これら「5つの視点」「5つの実践」をもとに「京都市小中一貫教育ガイドライン」がまとめられている。

小中一貫教育ガイドライン

学習支援プログラムの実施

京都市教育委員会の独自の取り組みとして、学力の向上と自学自習の習慣化をめざし「小中一貫教育学習支援プログラム」を実施する。

小学校3年から中学校3年まで、「既習事項の復習⇒確認テスト⇒補充学習」の流れのプログラムを定期的に実施。

子どもたちが学習の成果や課題を把握するとともに豊富な教材により補充学習ができるとされる。
また、教職員は、日々の学習指導の改善や小中一体となった学力文責、取り組み充実のための資料として有効に活用されているとする。

小学校6年生の最後のジョイントプロクラムは、確認テストを中学入学直後に実施し、子どもたちの学習状況を小中で把握・共有し、中学校へのスムーズな接続を図ることができるとする。

教育委員会としての成果と課題

小中一貫教育の実践により、中1ギャップの減少、授業改善などの教職員の意識改革、学力向上への寄与等が成果であるとする。

特に「一体型一貫校」の場合は、学力向上に効果があり、私立中学校への受験者が減少、9年間の切れ目のない教育活動により時間的なゆとりが生まれる、小中一つの職員室により、情報共有が進み「小中の文化の違い」を乗り越えるなどの成果を指摘する。

一方、課題として、教職員の負担感の増大(打ち合わせや研修の時間、移動の時間)➔部活時間の縮減等により緩和、「6年生=最高学年」という意識の低下、9年間の系統性に配慮した指導計画の作成や教材の開発などがあるとされる。

さらに進学先が複数にまたがる小学校を有する地域における小中一貫教育のあり方が課題とする。「4中9小」、「2中5小」というケース。小学校の足並みがそろうよう小小連携を図るとともに、年1回の合同研修会の取り組みを進めているとされる。

また、一体型一貫校の場合は、一人校長のため、地域との連携等、校長の負担が増大していることも課題とした。

小中一貫教育の究極のポイントは、先延ばしにすることなく、9年間、各学年でやるべきことをやりきって次につなぐことであり、「小小連携こそ重要」と強調する。

ブロック内の牽引者次第であり、校長のリーダーシップが問われるとする。

学校統合は地域主導が原則

学校統合に長く関わってきている島本参与は、「学校の統合・再編は地域主導が原則」と強調する。地元からの統合要望があって初めて教育委員会として方針化し、地元も参画する準備委員会で協議を重ねる手法をとる。

また統合校の跡地活用では、売却せずに教育施設や福祉施設として活用(京都マンガミュージアムや京都芸術センター、漢字ミュージアムなど)。近年ではホテル等に貸し出す活用もしているとする。

若干の考察

1.特区認定から始まる小中一貫教育ではあるが、小中学校の規模のあり方は別として、地域とのつながりを大事にしつつ、学力向上の観点から義務教育9年間を一体的にとらえた「教育課程再編」、「学習支援プログラム」などを実施している点、「5つの実践」=「小中一貫教育ガイドライン」など教職員の実践指針をまとめている点は教員の資質向上と相まって参考にすべきところであろう。

2.小中一貫教育の究極のポイントとして、1学年、1学年ごとの発達段階に応じた学びの保障こそが大事であり、とくに小小連携、学校長のリーダーシップが強調された点は、教訓として共有したい。

3.中山間地域における学校統合、市街地における学校統合と二つの側面を持ちながら学校の統廃合が進められているが、適正規模という基準を設けず、「地域主導が原則」としている点も参考にすべきところである。

4.「施設連携型一貫校」における具体的な連携は参考にしたい。複数の小学校から複数の中学校に進学する割合が多い通学区制をとっている長野市にとって、まずは「連携型」の有り様を整理する必要性を痛感する。