佐賀市バイオマス産業都市

 5月20日から22日、市議会・福祉環境委員会の行政視察の報告です。
 まずは、佐賀市のバイオマス産業都市構想についてです。

佐賀市…バイオマス産業都市さが

(1)九州北西部、佐賀平野の中央に位置する特例市。人口237,506人、面積431.42㎢、人口密度5,44.2人/㎢。佐賀県の県庁所在地で県の経済・行政の中心地。博多までJR特急で40分の距離にある。
(2)佐賀市の視察テーマはH26年11月に国認定を受け事業化されている「バイオマス産業都市さが」について。長野市では今年度、「長野市版バイオマス産業都市構想」を策定し国の認定を受ける準備に入っていることから視察地となったもの。佐賀市清掃工場の現場で「バイオマス産業都市さが」のコンセプトや「清掃工場二酸化炭素分離回収事業」、「藻類培養プロジェクト」等についてお話を伺った。
【写真:佐賀市バイオマス産業都市推進課から説明】
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バイオマス産業都市とは?

 地域のバイオマスの原料生産から収集・運搬、製造・利用までの経済性が確保された一貫システムを構築し、地域のバイオマスを活用した産業の創出と地域循環型エネルギーの強化により、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしいまちづくりを目指す地域をさす。
 農林水産省や経済産業省、国土交通省、環境省などの関係7府省では、H30年までに全国で約100地区のバイオマス産業都市の構築を目指している。

 バイオマス産業都市として選定された地域については、関係7府省が連携して事業化プロジェクト実現への支援が行われる。

 そもそも、バイオマスとは?…木材、海草、生ゴミ、紙、動物の死骸・糞尿、プランクトンなど、化石燃料を除いた再生可能な生物由来の有機エネルギーや資源のこと。燃焼時に二酸化炭素の発生が少ない自然エネルギーとして注目されているものだ。

佐賀市の取り組みの特徴…企業と連携した藻類培養

 認定時の日経新聞の報道より。ちょっと長いが特徴が集約されているので紹介する。

「佐賀市は東芝などと組み、清掃工場で発生する二酸化炭素(CO2)を回収して野菜栽培に使うなど、先進的な事業を手掛ける。…東芝のほか、ミドリムシの屋外培養に成功したユーグレナ、市内に事業所がある味の素など幅広い企業と連携しバイオマス産業都市としての発展を目指す。ごみを燃やす際に1日約200トンのCO2を排出している佐賀市清掃工場はCO2を回収し植物工場で活用する実験を始めた。米系環境ベンチャー企業のアルビータ(佐賀市)は清掃工場で排出するCO2を使い、藻類を培養し健康食品や化粧品などの成分を生産する。光合成を促し、ヘマトコッカスという藻類を効率良く培養する水槽などを、16億円を投じて整備する。清掃工場の近隣で来年6月ごろの稼働を計画している。ユーグレナはミドリムシからジェット燃料を大量生産する研究を佐賀市と共同で始めた。同市は下水浄化センターから出る有機物を多く含む処理水や、清掃工場から回収したCO2を供給する」

 佐賀市では「廃棄物がエネルギーや資源として新たな価値を生み出し、循環するまちづくりをめざしている点が特徴」とし、主なものとして➊既にバイオマス資源が集約されているごみ処理施設や下水処理施設などの既存施設の有効活用、➋バイオマス活用の構想段階から市のビジョンを公表し、連携する企業やパートナーの誘致への取り組み、➌市が仲介役となり企業間の連携を図るための仕組みを構築。これらを事業家プロジェクトとして明確に掲げていること、にあるとする。
 バイオマスの中心的取り組みは「藻類培養」である。
【資料】佐賀市バイオマス産業都市構想・全体概要図
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【参考】バイオマス産業都市さがのPR動画(佐賀市ホームページ)

清掃工場の排出ガスから二酸化炭素を分離回収し野菜栽培、藻類培養

 清掃工場でのごみ焼却から発生する排出ガスから二酸化炭素を分離回収するシステムは、東芝の技術で、現在、佐賀市と東芝、九州電力、荏原環境プラント4社での共同研究による実証実験中である。

 二酸化炭素の「削減」から「利活用」への発想だ。

 利活用では、二酸化炭素を植物工場に供給し、農作物の安全性と成長や品質向上に対する有効性の検証が行われているそうだ。CO2を使用したほうが1.5倍の重量増となる実証データでが取れていて、安全性にも問題は発生していないとのことである。
 オランダではCO2を活用した高付加価値型農業が既に展開されているそうだ。
【写真:清掃工場に隣接する二酸化炭素分離回収装置と植物実験工場】
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 また、(株)アルビータと協定を結び、「ヘマトコッカス藻培養実験」が行われている。ヘマトコッカス藻は、健康食品や化粧品の原料となる。
【写真:清掃工場敷地内のヘマトコッカス藻培養実験場とその内部】
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 さらに、(株)ユーグレナとの協同研究では、藻の一種であるミドリムシからつくるバイオ燃料でジェット機を飛ばすという壮大な研究も進む。

 企業との共同研究は、「藻類培養プロジェクト」として、来年には清掃工場の近隣に2haの工場を整備し、実用化に向けた一歩が踏み出されようとしている。

下水浄化センターでは、「メタンガス発電の効率化」と「下水汚泥の肥料化」、さらに「藻類培養」

 下水浄化センターでは、(株)味の素との共同研究で、メタンガスを利用した発酵バイオマス発電により、センター内の電力自給率100%をめざすとともに(現在は40%)、脱水汚泥の肥料化に取り組む。肥料は10㎏20円で販売しているそうだ。
 ここにおいても、味の素との共同研究がいわばミソである。

 さらに、下水処理で発生するガスからCO2を分離回収し藻類培養に再資源化、利活用する「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」が、国交省のプロジェクトの一環で始まる。
 浄化センターに実証設備を整備するそうで、国交省の補助金100%事業、10億円を投資する。

想定される地域波及効果

 佐賀市では、構想素案の作成段階で、環境部内に「バイオマス産業都市推進課」を設置し、推進体制を整えている。
 佐賀市の構想では、地域波及効果として次の目標値を設定する。
➊地域のバイオマス利用率…廃棄物系で75%(現在65%)
➋バイオマス発電調達量…27412MWh/年(18464MWh/年)
➌二酸化炭素の農業利用による収量・収益増加…17%の収量増・3億6744万円の収益増
➍温室効果ガス削減量…9149t-CO2/年の削減
➎雇用創出…53人
➏廃棄物処理費削減費…3億5166万円/年の削減

効果や市民からの評価はこれから

 バイオマス活用による効果や市民の評価、今後の課題については、取り組み始めた段階で、効果測定や評価はこれからという段階のようだ。
 実証実験段階とはいえ、企業との連携協定を軸に、CO2の利活用という先進分野に意欲的に取り組む姿勢は注目である。

 また、木質バイオマスの利活用にも取り組んでいて、温泉旅館などに木質バイオマスボイラーの設置導入を支援している。

 長野市では、環境部・環境政策課を主幹として、バイオマス産業都市構想素案を策定している段階で、来年度、国の認定にエントリーする計画である。木質バイオマスの利活用を柱とするようだ。
 佐賀市における企業との連携による先進分野の共同研究、産学官連携の作り方は学びたいところである。
 木質バイオマスの利活用において、従来の施策の再構築を超えて、未来に向かって発展的に展開できる事業施策の検討が重要であろう。