市議会総務委員会・行政視察➋…[西宮市編]

 総務委員会の行政視察の続報です。兵庫県西宮市の視察テーマは、「危機管理と情報システム」です。

■H7(1995)年1月17日の阪神淡路大震災で壊滅的な被害を被った西宮市で、災害直後から被災者支援、復旧・復興支援のために独自に構築された被災者支援システム及び復旧・復興支援の関連システムの概要、要援護者データのシステムについて学んできました。

■訪問したのは西宮市情報センターで、西宮市CIO補佐官兼西宮市情報センター長であり、被災者支援システム全国サポートセンター長を務める吉田稔氏から説明を受けました。
 吉田氏は、被災当時、情報政策課長補佐で、自らの家も全壊となる被災者の一人ですが、ホストコンピュータやネットワーク回線が大きなダメージを受けた市庁舎において、「住民の命と生活を守るため」に「スピーディーな決断」を駆使し、被災者支援システムを構築し、被災者支援、復旧・復興支援をリードしてきた一人です。

西宮市情報センター長の吉田稔さん

西宮市情報センター長の吉田稔さん


■西宮市が構築した「被災者支援システム」は、住民情報を初期データとして被災者台帳に取り込み使用するもので、被災者の速成情報を管理する「被災者台帳」と被害を受けた住家属性情報を管理する「被災者住家等台帳」の二つのシステムで構築されています。主な機能として、罹災証明や被災家屋証明書の発行、義援金や被災者生活再建支援制度の給付管理、町別の被害状況の集計などを可能としています。

■この「被災者支援システム」を中核にして、避難所毎に避難者の入・退状況を管理する「避難所関連システム」、救援物資の管理を行う「緊急物資管理システム」、「仮設住宅管理システム」、「犠牲者・遺族管理システム」、「倒壊家屋管理システム」、WebGISを利用した被災状況の集計・分析を行い復旧・復興計画の一環として利用する「復旧・復興関連システム」の6つのサブシステムがリンクし、総合的な「危機管理・災害業務支援システム」として構築されているものです。
 現在は、「要援護者管理システム」も開発・導入されています。
 阪神・淡路大震災における現場の実践に裏打ちされたシステムであり、3.11東日本大震災の経験を踏まえ、「複数災害の管理機能」や「避難者受入れ機能」などが追加され、より即応的なシステムとなっているものです。

■そして、最大の特徴は、LASDEC(財団法人・地方自治情報センター)の共同アウトソーシング事業の一環で共同利用可能な汎用ウェブシステムとしてリニューアルされ、LASDECの地方公共団体業務用プログラムライブラリーに登録され、総務省から全国の自治体に無償で提供され、なおかつ随時バージョンアップが図られていることです。そして、現在、900近い自治体(全国の半数以上)で運用されているとのことです。
 すなわち、特定の機器やメーカー等に依存することなく、安価・短時間で構築できるシステムであり、使用料としてのコストがかからないということです。

吉田氏の説明からポイントを抜粋します。かなり過激なところもあります。
「危機管理において情報システムを利用することが如何に重要で、絶対不可欠かを再認識した。超強力的なリーダーシップ、決裁なしの問答無用の対応が求められる。危機管理に聖域はない。公僕として、独裁力を駆使し被災者支援のために身を捧げる。これらの再認識が震災の教訓である」

西宮市内の商店街の被災状況。1階が2階に押しつぶされている状況。「1階に寝てはいけない」と強調

西宮市内の商店街の被災状況。1階が2階に押しつぶされている状況。「1階に寝てはいけない」と強調


「自治体への無償配布後、運用団体は50程度であったが、意識ある自治体では、被災者業務支援だけでなく、定額給付金、子ども手当、新型インフルエンザ等でも利活用されてきた。余分な仕事はしたくない、やらないという自治体職員が多く、導入への大きな阻害要件となっていた。しかし、東日本大震災で危機管理意識が一気に高まり、導入自治体が増加。最近の島根豪雨や埼玉竜巻災害でも効果を上げている」
「自治体に必要な情報システムを知らない節操のない民間業者や良識のない学者の横やりと横行がはびこっている。これを打破しなければならない」
「備えあれば憂いなしを、住民の人命第一にして取り組み完遂させることが自治体の務め。最善を望み、最悪に応えよ!である」
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 吉田氏の情熱とバイタリティに圧倒された感があります。しかし、被災の実体験から、実践に裏打ちされ役に立つ被災者支援の総合システムであることは大いに注目すべきです。住民情報を基底とした危機管理システムは不可欠です。しかも、大幅なコスト減を実現できることは魅力です。

長野に帰ってから、市の危機管理防災課に、この被災者支援システムの導入検討の経過や今日的な問題意識を照会しました。
 実は、H21年1月に総務省から無償配布されたことから、H21年3月議会で、公明党の議員が西宮市が開発・構築した被災者支援システムを取り上げています。
 この段階で、当時の総務部長は次のように答弁。
 「被災者支援システムは、地方自治体が災害時に救援・復旧・復興業務を行う上で、非常に有効なものであると言われている。例えば、被災者支援の台帳システム、避難所関連システム、緊急物資管理システム、仮設住宅管理システム、また犠牲者遺族管理システムなど、災害時における利用実績もあり、その効果も実証済みである。本市においても、既に災害時の業務用システムとして有効活用の可能性を検討するため、本年二月に稼働させたところであり、今後、庁内で(仮称)総合防災情報システム検討委員会を立ち上げまして、具体的な災害時の利用方法について検討、検証していく。また、長野市の状況に合わせて災害時要援護者台帳システムや統合型GISなどの既存システムとの連携、さらに市職員やボランティアの動員管理システムなどを加えていきたい。なお、本年九月に行う長野市総合防災訓練において、このシステムを稼働させ、現地対策本部と避難所をネットワークで結んだ実証実験も行う予定」…かなり前向きな答弁となっています。
 しかし、現段階では、導入に至っていないとのことです。

 総合防災情報システムは、既に公募型プロポーザルでNECと契約する決定が行われていますから、「検討の結果、民間事業者に委託する形で独自システムを構築する」方向を選択していることになります。被災者支援システムの利点等も検討し、必要なシステム補強を行っているとのことでした。

 総合防災情報システム検討委員会における具体的な検討・検証の経過、実証実験の評価、費用対コストの検討など、今一度、確認し、コストに見合った総合防災情報システム、被災者支援システムになりうるのか、検証することが重要です。

吉田氏からメールをいただきました
 長野に帰った夜に、西宮市情報センター長の吉田氏から視察のお礼メールが届きました。丁寧な対応と同市のシステムの全国化に向けた情熱を改めて痛感した次第です。長野市の危機管理防災課における検討経過(今のところの結論のみですが…)を伝えながら、感謝のメールを返信しました。