J1基準のサッカースタジアム整備に80億円…期待と懸念

 日本フットボールリーグ(JFL)に所属するAC長野パルセイロのJリーグ昇格に必要なホームスタジアム整備について、長野市は28日、南長野運動公園総合球技場を「J1基準」である15000人収容を充たすスタジアムに改修する基本方針を議会側に提示しました。
 総事業費は何と80億円、当初「J2基準(1万人収容)」で試算された60億円から、20億円も膨らむことに。

大規模改修が計画される南長野運動公園総合球技場、ウィキペディアより

 第一庁舎・市民会館の建て替え、新斎場の整備、ごみ焼却施設の建設など大規模プロジェクトが目白押しとなっている中、新たに巨額を投じることで、健全な財政は維持できるのか、市民負担が増えないのか、J2昇格条件である観客動員数、サポーターズクラブ数をどのようにクリアーするのか、サッカースポーツの底辺をどのように拡大していくのかなどなど、市民の理解を得るためのハードルは決して低くありません。

 国補助金の見込、新たな借金による財政将来負担の見通し、民間寄付の見通しなど、市側に説得力ある説明責任を求めていくことが重要となっています。

 AC長野パルセイロが現在、JFL1位をキープし大健闘している時だけに、ホームタウンとして、J2昇格を果たし、長野の元気の源となることを願う一人ではありますが、一方で松本山雅がJ2昇格を果たし、地方都市である長野県内で2チームが競い合う構図となっていることも、今後の選手層の動向や長野の地域性、経済界の支援などを考えると、長野県におけるプロサッカーチームの将来を見極めていくことも重要なのではと思います。

 9月議会に提案される長野市一般会計補正予算案では、南長野運動公園総合球技場整備事業費として80億円をH25年度からH27年度の債務負担行為とする提案が盛り込まれます。9月議会の大きな焦点です。

◆J2基準からJ1基準に変更
 当初、J2基準の1万人収容のスタジアムとして整備する考えが示されていましたが、1万5千人収容のJ1基準とすることで、J2で上位の成績を収めた場合、翌シーズンのJ1昇格が可能となることからJ1基準の整備に変更したとします。J1仕様とすることで、サイドスタンドの増設やスタンドの3分の1以上に屋根が必要(H24年2月からの新たなクラブライセンス制度による)となるとのことです。
 整備内容は
 ①メインスタンドとバックスタンドをそれぞれ5000人収容の観客席に改修
 ②新たにゴール裏のバックスタンド5000人分を増設
 ③Jリーグのクラブライセンス制度によりメインスタンドに屋根を設置
 ④現在の874台収容の駐車場を公園内の整備により必要台数の最小である1400台分に増設
  (再整備後の利用状況等を勘案し、新たな駐車場の要否を検討)
 ⑤ラグビーやアメフトとの併用可能な総合球技場として整備

◆総事業費80億円、新たな借金32億円
 概算総事業費は本体工事費に69億円、外構整備費に7億円、駐車場再整備に2億円、設計等委託費に2億円、計80億円を見込みます。
 財源は、国庫支出金として38億円、市債(借金)を32億円、その他として6億円、一般財源4億円を見込んでいます。

 市側の説明後、企画課長らに問い合わせたところ、国庫支出金は社会資本整備総合交付金の公園整備補助金で補助率2分の1を活用、「国とはほぼ確認できている」とします。また「その他6億円」とされる中身は、民間寄附金で3年間のスパンで寄付を募るとの考え、球技場の早期整備を求める署名が8万人分集まったことを考えると「何とかなるのでは」と。まぁ、これは期待値でしょう。
 新たな借金は公共事業債で20%の地方交付税措置があるものを想定しているとのことです。
 借金返済の見通しは、利子分を含め約40億円を10年間で返済することを考えると年間4億円の返済となることから、「大規模プロジェクトの借金返済と重なるものの遣り繰りできる範囲」と見込んでいるようです。更には、県からの補助金も働きかけたいとのことのようです。
 「とらぬ狸の皮算用」的な部分が無きにしも非ず…。いずれにせよ、国補助金の見通し、借金返済の見通し等をしっかり検証するとともに、大規模プロジェクト事業の今後の在り方を考え直す必要があると思います。

 更に、新しいサッカースタジアムの年間の維持管理費(不確かですが1億5千万円位と試算)についても見通しを見極めることが重要です。

◆2015年(H27)のオープンめざす
 市では今後、設計と施行一体のJV(共同企業体)をプロポーザル方式で契約者を選定し、来年度末から工事に着手、H27年度夏頃までの完成をめざし、2016年(H28)シーズンからの使用を見込みます。業者からの提案により、全体工期の短縮を図りたいともしました。
 ここで気になる点が整備事業の中に埋蔵文化財の調査が入っていることです。埋蔵文化財の調査は、内容によっては不測の時間が要することがあるからです。この点も状況を確認しなければなりません。

◆改修期間中の代替施設は、市内東和田と佐久市の陸上競技場で調整
 H25年度からの3年間、工事によりホームスタジアムが使えなくなることから、その代替施設として佐久市で建設中の陸上競技場や市内の東和田陸上競技場を使用する方向で調整に入っているとのことです。東和田陸上競技場は芝の全面張り替えが必要となります。佐久市の競技場を使うことで、北信から東北信エリアをホームとするような展開も見込んでいるようです。

◆期待と懸念…80億円は重い! 
 新たなサッカースタジアム整備事業の概要はこんなところですが、「80億円」は何とも重い課題です。先に記した課題の検証に、まずはしっかり取り組みたいと思います。

 駐車場整備に関連し、施設への交通アクセスの在り方、新交通システム導入の可能性と合わせて十分な検討が求められることにもなります。

 市では「公共施設白書」を策定し、合併等により拡大した公共施設の在り方の見直しに着手します。施設の維持管理費や減価償却費も勘案しながらの検討となります。単純で安易な施設の統廃合につながらないようなチェックも必要となる中、維持管理費等を見据えた公共施設全体の在り方を検証することを通して、サッカースタジアムの在り様を考えることも重要だと思います。

 時間は余り残されてはいませんが…。ご意見をお寄せいただきたいと思います。