長野県…感染警戒レベルに新基準、積極的疫学調査を緩和し対象を限定

4月、新年度が始まりました。寒の戻りでしょうか、風も強く「春うらら」といった陽気とならず、コロナ感染第6波も収束どころか、リバウンド拡大が心配される状況です。十分な感染防止策を講じご自愛ください。善光寺御開帳が始まります。感染防止策が講じられるものの、新たな感染拡大を誘引させないことを願うばかりです。


長野県は29日の新型コロナ感染症対策本部会議で、これまでの対策を再検討し、オミクロン株の特性や陽性者の状況等に基づき、県独自の感染警戒レベルを新基準に見直すとともに、濃厚接触者等に対する積極的疫学調査の緩和方針を当面の対策として決定しました。

オミクロン株の特性として、致命率が季節性インフルエンザの致命率よりも高いこと、感染・伝播性が高い一方で、若年者や基礎疾患のない者等は重症化しにくいと考えられること、第5波と比較し新規陽性者数は約6.8倍に急増し20歳未満の年代で陽性者が多い傾向にあり、重症及び中等症の割合が高齢者を含むいずれの年代においても減少していることなどを踏まえ、「救える命が救えなくなる事態を回避する」との基本目標は維持し、「新規陽性者の抑制」を図りつつ、「重症化リスクの高い方を守ること」を対策の重点にするというもので、特に高齢者の新規陽性者をできる限り抑制し、確保病床使用率は20%以下をめざし、重症者用病床使用率を20%未満(8人以下)を維持することを目標とします。

ワクチンの追加接種…4月末までに約124万回の接種へ

3月27日時点で県全体で高齢者の8割が3回目接種を完了、64歳以下では5割が完了しているとし、今後も64歳以下の接種率向上が課題とします。

長野市のワクチン接種状況は2回目の接種から6カ月経過した18歳以上のうち、3回目の接種をした人の割合で74.8%(3月24日現在)です。【下表】

そのため、重症化リスクの高い高齢者・基礎疾患を有する方及びその同居の家族への接種を、こどもの同居家族、こどもが多く集まる施設の従事者等への接種を呼びかけ、4月末までに約124万回の接種(高齢者9割以上、全体で8割以上)をめざし、予約なし接種や夜間接種など接種促進のための利便性を向上するとします。

また、5歳から11歳の小児接種については、重症化リスクの高い基礎疾患を有する子どもやその同居の子どもへの接種を勧奨するとともに、希望する子どもへの接種機会を確保するとします。

保健所に当面1万個の抗原定性検査キットを備蓄

症状がある場合は引き続き、医療機関の受診を促すことを基本に、検査体制を拡充するため、保健所に当面10,000個の抗原定性検査キットを備蓄し、や極東における感染不安がある方向けの薬局等における無料検査を当面の間継続するとします。

自宅療養者への健康観察・生活支援物資提供を継続

入院医療が必要な方が入院できないという状況にはないとし、二次にわたる振り分け診療を継続、療養先判断を行う一次振り分け診察医療機関を増やすことをめざすとし、病床のひっ迫により圏域内での入院が難しい場合は、全県を対象に入院調整を図るとします。

第6波の特徴として、学校や保育園等の集団感染や家庭内感染の拡大により多くの子どもとその家族が自宅療養となったこと、自宅療養者のうち、症状が悪化し入院に移行した者の割合は、第5波では約1割だったが、第6波では1%に満たないことをふまえ、自宅療養者に対する健康観察センターによる健康観察と生活支援物資の提供は継続するとともに、自宅療養者の症状悪化時は保健所で症状に応じて指定医療機関の受診・入院調整、または登録医療機関による電話診療を実施するとします。

積極的疫学調査を緩和…集団感染とハイリスク者に限定

感染者の濃厚接触者を特定しPCR検査を実施、感染状況を把握する「積極的疫学調査」について、一般事業所や中学、高校では集団感染の発生時などを除いて行わないよう対応を変更、医療機関や高齢者施設などの調査を重点とし、濃厚接触者への行政検査も高齢者や基礎疾患がある「ハイリスク者」らに限定する体制に転換します。

信濃毎日新聞より

県感染症対策課によると、これまで事業所や中学、高校には濃厚接触者に当たる従業員や生徒を調べてもらい、自宅待機を求めるなどの対応をしてきた。ただ感染「第6波」の爆発的な拡大に伴い、一般事業所への調査は「必要性が高い事業所ではやるが、全てはできない」状況だったとします【信毎報道より】。

第6波の感染急拡大を受け、長野市保健所は濃厚接触者及び接触者の追跡調査を実施してきています。市内の感染者が高止まりしている一因として、「積極的疫学調査を緩めることなく愚直に実施し、感染者の把握に努めていることがある」(保健所長)とされます。

長野市保健所所長の問題提起

今回の県方針の転換に先立つ形で市保健所長は、第6波のもとで「保健所の負担軽減ではなく、新型コロナ感染症対応の見直しが必要。具体的には保健所業務の目的を『感染拡大防止』から『重症化防止』に転じ、①感染者の全数届出の中止、重症者・集団発生サーベイランスの実施、②感染者は保健所を介さず、一般医療の中で対応、③重症者が迅速に入院治療を受けられるための診療ネットワークの強化、④ハイリスク者施設における集団的感染への支援といった対応に切り替えるべき」と強調し、「国・県における適切な対応の実現が望まれる」と問題提起しています。背景には、国の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」における「国内感染期」(感染者の接触歴が疫学調査で追えなくなった状態)の対応があります。

市保健所長の問題提起と県の方針転換との間には、なお乖離があるようにも思われます。

★長野市保健所の発表より。毎日、約1,000人の感染者を対象に健康観察し、加えて濃厚接触者に対するPCR検査の実施及び健康経過観察が実施されています。

長野市保健所の運営は限界にあります。保健所の業務ひっ迫状況の改善は待ったなしといえますが、疫学調査で感染源を特定できないケースが増加している中で、”公衆衛生の砦”である保健所における新型コロナ対策として何を重点とすることが有益なのか。この点については、改めて別稿で整理したいと思います。

オミクロン株の特性を踏まえ、高齢者等の重症化リスクの高い方への対応を重点とする方針はわからないわけではありません。しかし、積極的疫学調査を緩和し、濃厚接触者の特定を限定することにより、結果的に集団感染を発生させるリスクを負うことになるのではないかが懸念されます。

いずれにせよ、県の「一律に積極的疫学調査を行わないことで保健所の負担を軽減する」方針が、今日の感染状況の収束、感染のリバウンド、BA.2株への変容とその特性、第7波の到来対策に有効に作用するのか、見極めが重要であると考えます。

県独自の感染警戒レベルに新基準

新規陽性者数と入院者数の相関関係が、オミクロン株の特性により変化し、圏域ごとに整合しないことから、県全域の感染警戒レベルを廃止し、圏域ごとに判断することに。確保病床の入院患者や重症者の割合などを指標にした基準で、医療提供体制への負荷を判断することになります。

新規陽性者数が高止まりしている一方、確保病床使用率が低い現状を踏まえ、「直近1週間あたりの新規陽性者数」の基準を、人口10万人あたり「10人」から「30人」の3倍に引き上げます。

新基準でも、長野市を含む長野圏域は特別警報Ⅱ「5」のままです。

また、医療ひっ迫状況を注意喚起する医療アラートを見直し、確保可能な県内513病床の使用率が50%以上で「医療非常事態宣言」、35%以上で「医療特別警報」、25%以上で「医療警報」とし、感染警戒レベルとは別建てで判断します。

いずれも、オミクロン株の特性を踏まえ、高齢者や基礎疾患のある方など重症化リスクの高い人への感染抑制に重点を置く基準の変更となります。

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