長野市…パートナーシップ宣誓制度基本方針まとめ、12月1日運用へ

長野市はこのほど、LGBTQなど性的少数者らのカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ宣誓制度」の基本方針を決定し、12月中の導入をめざすとしました。

本日22日付の信濃毎日新聞によれば、実施要綱をまとめ12月1日から運用を開始、11月21日から予約受付を始めるとのことです。

H30(2018)年9月議会に当事者から提出された「LGBTなど性の多様性を認め尊重する人権施策の実施に関する請願」が全会一致で採択されてから4年の歳月を要しました。私は、願採択以降、パートナーシップ制度の導入について度々質問で取り上げてきましたが、荻原市長のもとでようやく実現にこぎつけることができたものです。

9月市議会定例会で「LGBTなど性の多様性を認め尊重する人権施策の実施に関する請願」が全会一致で採択され、この議会に市としての対応が報告され...
2018年9月議会にLGBT当事者から提出された「LGBTなど性の多様性を認め尊重する人権施策の実施に関する請願」を全会一致で採択して以降、...

同基本方針では「性的少数者の方の生きやすさの選択肢を広げることにより、性的少数者の方が自分らしく安心して暮らしていけるよう、性的少数者の方を含むお二人が、お互いを人生のパートナーとして宣誓する「長野市パートナーシップ宣誓制度」を導入する」ことを明確にし、「制度の導入により、宣誓されたお二人の思いを受け止め、応援していくとともに、市民や事業者の皆様の理解を深め、多様性が尊重され、誰もが幸せを実感できる社会を目指す」とします。

6月に行われた基本方針に関するパブリックコメントでは98人から141件の意見が寄せられ、「すべての人の人権が尊重され共生社会を創っていくための一歩として、長野市パートナーシップ宣誓制度を提案されたことは素晴らしい」「性的少数者は、性的多数者が当たり前に持っている権利が侵害されている場面が多く、生きづらさを感じている」と制度導入に前向きな意見は2割程度にとどまり、「婚姻制度の形骸化や同性婚の合法化につながる」「新たな制度を導入しなくても性的少数者の悩みに個別に対応すれば良い」「制度導入により少子化が進むのではないか」との慎重意見が7割を占めたとされています。慎重意見の多さには、組織的な取り組みが背景にあったのではないかと推察されます。

長野市パートナーシップ宣誓制度の基本方針のページ…パブリックコメントの結果と市の考え方が公表されています。

慎重意見に対し市は、「既存の婚姻制度に影響を与えるものではない」とした上で、「性的少数者の生きやすさの選択肢を広げ、差別や偏見の解消や理解の促進につなげる」などと制度の考え方を強調し、制度導入に舵を切りました。

揺らぐことのない市行政の姿勢は評価したいと思います。

市では、パブリックコメントや当事者、支援団体の意見を踏まえ、当初案の趣旨にあった「生きづらさを少しでも解消する」との表現を「生きやすさの選択肢を広げる」に変更しました。これも前向きな姿勢の表れとみてよいでしょう。

宣誓できるのは一方、または双方が性的少数者のカップルで、ともに18歳以上であることなどを条件とし、宣誓制度の導入で市の裁量の範囲において行政サービスを提供するとし、市営住宅入居、医療機関での面会や病状説明などを受けられるサービス例を挙げます。

◆「パートナーシップ宣誓制度」の基本方針より

これまでの日本社会の仕組みは性的少数者が「いない」ことを前提に成り立ってきたといえます。同性婚は認められず、長年一緒に暮らしたパートナーでも遺産が相続できない、税の控除もない、アパートの契約ができなかったカップルも少なくなく、多くの自治体では公営住宅に入居できない状況が続いてきました。男女別しかないトイレや更衣室、健康診断などは、生まれながらの性別と異なる性で生活する人の大きな負担となっています。

導入までに、受けることのできる行政サービスが例示にとどまらず、先進自治体の事例を参考にさらに豊富化され、生きやすさの選択肢が具体的に広がることを望みます。

民間では、八十二銀行や労働金庫、長野信金、JAバンクなどの金融機関が、自治体が発行するパートナーシップ証明により、住宅ローンの連帯債務や連帯保証、所得合算の対象者として、戸籍上の夫婦以外に同性パートナーを加える取り組みを進めています。地方都市でも徐々にですが性的少数者の権利擁護・権利拡大の動きが広がっています。

県知事は、「同性パートナーシップ制度」について、来年4月の施行を目指す方針を明らかにしています。県が窓口となり、パートナー同士の申請を受け付けて証明書を発行する想定で、詳細は他県の導入事例を参考に検討するとします。導入されれば、県内限定ですが転居しても自治体間連携が図れることになります。

都道府県で制度を導入しているのは9府県。県内では松本市と駒ケ根市が導入済みです。

さらに「パートナーシップ宣誓証明制度」等を導入している先進自治体では、宣誓の対象者に子や親を含め「ファミリーシップ制度」として拡大実施し始めています。ファミリーシップ制度は、法律上の効果があることを証明するものではありませんが、これまでのパートナー二人での宣誓を基本とし、一方の子又は親を含めた当事者が、家族として、日常生活において相互に協力し合うことを宣誓されたことを公に証明するものです。同じサービスの対象となります。

長野県の制度に注目しつつ、県のサービスを上回る制度をめざしたいものです。

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