インターネット上での人権保護を求める意見書…修正案への賛成討論

長野市議会6月定例会最終日の19日、総務委員会で審査され本会議に上程された「インターネット上での人権保護を求める意見書(案)」に対する修正案に、よりよい意見書をまとめる観点から賛成討論を行いました。

「インターネット上での人権保護を求める意見書」修正案


31番、改革ながの市民ネット、布目裕喜雄です。

議会第5号「インターネット上での人権保護を求める意見書案」に対する修正案について、原案審査をした総務委員会で「良」としてきた経過を踏まえつつも、基本的な視点の打ち出し、あいまいさを残す記述部分を精査し、かかる課題案件にあたり、長野市議会としての意見趣旨を明確化するという観点から賛成の立場で討論します。

女子プロレスラー木村花さんが匿名アカウントからの心無い誹謗中傷に悩み、亡くなるという、なんとも悲しい、痛ましい事件を受けて、かかる悲しい事件を二度と繰り返さないため、インターネット上の人権保護を求め、新たな法整備等を速やかに求める趣旨は意見書・原案、修正案に共通するものです。

さて、今日、TwitterやInstagramなどSNSで、匿名性を隠れ蓑にした卑劣な誹謗中傷行為が後を絶ちません。

現行の「プロバイダ責任制限法」の下では、名誉毀損等の成立要件を十分満たしていたとしても、相手が匿名アカウントであるためにプロセスが煩雑で、発信者情報開示や削除依頼の負担が大きく、捜査や事件化はおろか、その発信者すら特定できずに被害者が泣き寝入りするケースがほとんどです。

違法性の高い投稿の削除要請があっても当日削除はされず、SNS・掲示板運営者などの「プロバイダ」が仮に削除に応じたとしても、実際に削除されるまでには長いタイムラグがあり、その間の被害者の損失や心理的な痛みは測り知れません。

また、現行のプロバイダ責任制限法の下では、誹謗中傷等を発信している匿名アカウントの「本名」「住所」等の開示請求には、裁判所の「仮処分」が必要となり、そのためには、まず「名誉棄損罪」「侮辱罪」等に該当する事を立証する必要があり、実際の開示請求に至るまでに高いハードルがあり、誹謗中傷を受けている側の被害者に時間的・金銭的に多大なコストがかかるシステムになっています。

故に、この問題の解決を図るために、現行「プロバイダ責任制限法」の抜本的な見直しが今日、求められているのだと認識します。

今後、匿名アカウントに隠れて、人権を侵害・否定する卑劣な誹謗中傷を行う行為を根絶するために、①発信者情報開示のための要件を下げる、②費用をかけて弁護士に頼まなくても開示請求できるように、開示までのプロセスを簡略化・デジタル化するなどの法整備等が不可欠であると考えます。

しかし、かかる法整備を図るうえで、表現の自由の保障、検閲の禁止、通信の秘密の保護等、憲法第21条の基本理念が順守され、バランスある法整備が図られなければならないことは言うまでもありません。

国が直接に個人の言論内容に制限をつける「言論規制」ではなく、一人一人が自分を「権利の主体」としてリスペクトできる社会を作ることを目指しつつ、プラットフォームであるプロバイダが当時者間において人格権を認め合い課題解決をはかる法的・社会的責任のありようの強化が図られるべきでしょう。

意見書案提出にあたり、原原案の事前検討に際し、改革ネットからは、「表現の自由、通信の秘密の保護等に十分に配慮すること」を強く提案し、いったん盛り込まれた意見書原案となりました。しかし、最終的に委員会に提案された意見書案からは、かかる記述が削除されてしまうことになりました。

インターネット上での人権保護にあたり、表現の自由、通信の秘密を順守することは当たり前のこととはいえ、明確に記述されることが重要であると考えます。民主主義の根幹にかかわる問題だからです。

また、国の機関が直接に介入して削除や情報開示を行うことは、憲法21条2項の「検閲の禁止」や「通信の秘密の保護」に反するため、認めることができないと考えます。ユーザーと民間企業であるプロバイダとの関係の中でこれに対処することが求められると考えます。すでに民間事業者においてはAIによるサイバーパトロールの技術が十分とはいえないまでも構築されてきています。しかし、AI任せではなくAIと人との二重チェックを基本としています。AIが万能ではないからです。そして、かかる技術においても、匿名表現の自由も、「表現の自由」によって守られるべき重要な利益であることを踏まえた技術が確立されていることが重要です。

こうした観点から、意見書案「記書き」の2項目目、「AIによるサイバーパトロールの強化を図ることで、自動的に警告および削除できるシステムの導入」の部分は、国あて意見書とはいえ、国が実施するのか、国が民間事業者の取り組みを支援・サポートするのか、いささかあいまいな表記となっており、民間事業者を支援・サポートするにしても、民間事業者において、表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密保持の原則が順守される仕組みづくりが問われることは言うまでもありません。

原案においても、「国が主体となったサイバーパトロール強化等の取り組みではないもの」と理解し、賛成してきた経過があります。

主体の不透明性、運用の拡大への懸念など、解釈に幅を持つような趣旨はあえて記載されなくともよいのではないかと判断するところです。

今日、喫緊の課題は、ンターネット上で、名誉毀損、誹謗中傷、事実無根のデマ、プライバシー侵害、著作権侵害などの書き込みを匿名アカウントから行った個人を特定し、直ちに書き込みが削除されるなど、被害当事者の意思に基づいた解決が図れるように、実効性ある、発信者情報開示請求ができる仕組みを作ることです。

「表現の自由」と「人格権」とのバランスを取りつつ、通信の秘密保持、検閲の禁止など、人権保障の基本的原則を踏まえつつ、インターネット、SNS上等における人格権を否定する誹謗中傷の書き込みを制御していく新たな法整備が速やかに図られることが必要であることを強調し、修正案に対する賛成討論とします。

修正案が全会一致で合意され、国あて意見書となることを願いつつ、なおかつ、完全に十分でなくとも、市議会としての意思を表明していくことは重要であると判断していることも申し添え、討論を終えます。