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公共交通対策特別委員会の視察より(その➍)…” 公共交通救世主”と称される両備・小嶋会長と

 公共交通対策特別委員会の視察の最終日・24日は、民間交通事業者である岡山県を本拠地とする両備ホールディングス(株)です。
 小嶋光信会長をはじめ、原雅之・ホールディングス取締役専務、磯野省吾・岡山電気鉄道(株)取締役専務ら役員の皆さんと意見交換をさせていただきました。
 小嶋会長は、猫の「たま駅長」で有名な和歌山電鐡・貴志川線の再生をはじめ、地域公共交通の救世主として全国から注目されています。
 
 調査テーマは、公共交通再生の取り組みと「エコ公共交通大国おかやま構想」
 意見交換というよりも、地域公共交通が抱える課題や抜本的な対策についての考え方をお聴きし、示唆をいただいた視察でした。多忙な中、時間を差し繰っていただいたことに心から感謝です。

左から原・専務、磯野・岡電バス専務、小嶋・両備H代表、総務部長…両備H社屋の会議室にて


頂いた土産です。貴志川線のたま駅長グッズ、絵葉書・あぶらとり紙・ボールペンです。

1.両備グループ、両備ホールディングスとは?
 両備ホールディングス(株)(以下、両備H)は、岡山県南部を主要な営業エリアとする両備グループの交通・運輸部門の中核企業であり、情報部門・生活関連部門を含めた両備グループ全体の中核企業である。
 「運輸・観光関連部門」「情報関連部門」「生活関連部門」にわたり52社を擁する両備グループ全体の代表を務めるとともに、交通・運輸部門を束ねる両備ホールディングスの代表取締役会長(CEO)である小嶋光信氏は、「地域公共交通の救世主」「公共交通再生請負人」と称される注目の人である。

両備Hのパワーポイント資料より


2.経営理念は「忠恕」、行動規範は「知行合一」
 「忠恕」とは、創業者である松田与三郎翁の教えが込められる戒名からとったもので「真心からの思いやり」を意味する。経営方針は「社会正義」「お客様第一」「社員の幸せ」、そして新たに「安全・安心・エコで健康」が加わる。行動規範として「知行合一」を掲げる。「知行合一」とは陽明学の命題の一つで「行わなければ、しっいるとは言えない。知っていても行わないのは、まだ知らないとの同じ」との意である。「なるほど」と思いながら聴いた。

3.公共交通政策への危機感がスタート
 両備Hは、三重県の津エアポートラインや和歌山電鐡貴志川線、中国バス、そして直近では岡山県の井笠鉄道(バス)など、他県の交通事業の再生にも取り組んでいる。
 その背景にあるのが公共交通政策への危機感だとする。一つに規制緩和と地方財政の悪化により地方公共交通は不可避に壊滅すること、2つに公共交通を民間任せにしている先進国は日本だけであり、「交通権」の概念が必須であること、3つに公共への誤った費用対効果の概念導入により公共交通事業は衰退せざるを得ないことをあげる。
 なぜなら、マイカー社会では、交通弱者を中心とした地方公共交通は経営の維持が民間レベルだけではできないからであり、現行の赤字補てんを中心とする補助金では、延命治療的な行政対応しかできず抜本的な再生策とはならないからとする。

4.歩いて楽しいまちづくり運動⇒エコ公共交通大国岡山構想
 両備Hは、公共交通は地域活性化のツールの一つと位置づけ、歩いて楽しいまちづくり運動を提唱する。
 その集大成が「エコ公共交通大国岡山構想」である。H22年5月に岡山市に提言したものだ。
 具体的には、公設民営による官の役割と民の役割を明確にした施策により、LRTと新世代バスによる「歩いて楽しいまちづくり」であり、環境にやさしく、高齢化社会に対応した先進的かつ総合的都市交通システムの提言である。

資料より…エコ公共交通大国おかやま構想①


資料より…エコ公共交通大国おかやま構想②


資料より…エコ公共交通大国おかやま構想③


資料より…エコ公共交通大国おかやま構想④


両備H小嶋代表の「都市交通の大改革」資料より①…④の補足として


両備H小嶋代表の「都市交通の大改革」資料より②…④の補足として

5.「交通権」を定める交通基本法の制定、公設民営を支えるスキームへの転換
 小嶋氏は先の民主党政権時代、交通基本法制定の国交省の委員を務め、法制定をリードしてきた一人である。法案は閣議決定がされたものの、解散で廃案となり、この自公政権下での仕切り直しが問われているものだ。閣議決定案では「交通権」の言葉が消滅してしまったが…。
 地方公共交通再生の切り札となる「交通権」「公設民営」を「社会主義的」とする批判に対し、「地方の実情と公共交通の氏名を理解できない大都市的発想」と反批判、「公設民営方式」は高齢化の進む地方では住民の交通権を保障する最低限の社会的移動手段の確保を裏打ちするスキームであり、いわば「人道主義」に立った発想とする。
 こうした発想とスキームで、延命治療的な地域公共交通政策から夢のある地域公共交通政策に転換できると強調する。

両備グループ代表の小嶋光信氏…バイタリティと優しさがにじみ出ている方です。


6.井笠鉄道の再生…公設民託方式
 昨年10月に突然発せられた井笠鉄道の事業廃止による路線バス廃止決定に際し、両備Hは、「公設民託」方式により、中国バス井笠バスカンパニーを立ち上げ、井笠鉄道バス路線の再建に取り組んでいる。「公設民託」は小嶋氏の造語だそうだが、突然の事業廃止への緊急的再生策として打ち出し、国交省等の理解を経てスタートしているものだ。
 ここでは、詳細を略すが、交通事業者が突然の破綻に対し、法制度上の緊急避難的措置とはいえ、住民の足であるバス路線を守る再建スキームの一つとして注目したい。

7.高速道路無料化で2兆5千億円というのなら…
 小嶋氏の持論であるが、民主党政権時代の高速道路無料化政策に対し、2兆5千億もかけるのであれば、地方の公共交通を全て「タダ」にしても1兆円、どちらが国民生活目線となるのかと問いただす。
 先の「エコ公共交通大国」構想の中においても、国民的事業として年間2000億円、10年で2兆円の投資を提唱している。財源として環境税創設を指摘する。
 発想のダイナミズムを感じるところだ。

8.バスや電車の社会的存在としての問題点
 小嶋氏から「皆さんは公共交通を使って仕事をしていますか」と問われ、私を含め委員全員が手をあげることができなかった。小嶋氏は「マイカーが無くては仕事になりませんからね」と述べた上で、「公共交通を使っていない人が公共交通を論じても限界があるのでは。生活実感を持った議論・検討が必要」と諭された。
 そして、岡山市でのパネルディスカッションでの、とある女性の発言を紹介、曰く「90%以上がマイカーや自転車・徒歩であり、輸送割合が大部分を占めるマイカーこそ公共交通」との発言に腰が抜けるほどビックリしたとのこと、氏が「公共交通というのは、利用者の多い少ないということでなく、免許を持たない子どもたちや運転できない高齢者という交通弱者の移動手段として、社会が備えていなければならない交通手段」と説明し、渋々納得されたとのエピソードだ。
 長野県に講師として来県された折でも、地元の委員は全員、バスや電車を利用していなかったとの経験も披露。
 ここにバスや電車の社会的存在としての問題点が露わになっているとするのだ。地方のマイカー時代の恐ろしさは、一番働き盛りの社会人たちが公共交通の必要性を痛感してないこと、世論として声の小さい交通弱者だけが必要性を感じる交通手段だということが、ミスリードとなった規制緩和と地方公共交通の衰退に歯止めがかからなかった一因であり、公共交通利用の世論形成に最も障害となることだとする。
 つまり、良識と好意から公共交通の維持を考えるのではなく、公共交通の議論をする時は、行政と有識者、学識経験者に加え、少なくとも半分は実際に利用している利用者の委員を入れることが肝要ということだ。何とも恥じ入りながら、指摘を聴いたところである。

9.所感として…
 所感としてまとめるには、消化しきれていないのだが、長野市における公共交通政策、新交通システムの導入、公共交通ネットワークを展望する中で、活かしたい発想を整理したい。
公共交通の「公共性」…歩いて楽しいまちづくり
 公共交通は地域活性化の手段であり、あくまでも目的は地域が活性化するように、いかに公共交通をオペレーションするかということ。言わずもがななのだが、オペレートしうる能力が課題。
 交通弱者である公共交通利用者の生活実感に基づいた議論の必要性。廃止となった屋代線、一度も屋代線に乗ったことのない委員が多数であったことを思い起こしたい。
交通権の保障、公設民営のスキーム
 交通権に基づく交通基本法の制定はこれからの大きな課題であるが、国において地方における公設民営を支えるスキームをしっかり作らせること。自治体自身の財政力が乏しいとはいえ、新交通システム導入にあたり、公設民営による公共交通ネットワークのあり方を検討すること。交通事業者に社会的責任の自覚を促し、公共交通を担うモチベーションを保持してもらうことが大前提ではあるが…。
公共交通における費用対効果論の誤り
「公共という事業は、儲からなくても国民に保障しなければならない事業。公共的事業の非能率・非効率の是正はしなくてはならないが、誤った費用対効果の概念導入により、地方では全ての公共事業が廃止・縮小しなくてはならなくなる」との指摘は大きい。長野市においては「公共交通網が都市インフラ(都市の装置)である」との認識に立って、地域公共交通の再生を喫緊の課題と位置づけ対策を講じているが、費用対効果=採算性に偏った検討となっていないか、特に新交通システムの導入の是非論に関し、改めて具体的に検証することが重要である。
利用向上・促進策に関連して
*太陽光発電で賄う電気バス(電池バス)の導入…社会実験中の電動バスの電源を太陽光とすること(これは実験開始時から提案はしているが)
*時刻表見えルン♪の開発…LEDランプを使用したバス時刻表照明装置。自社開発のものであるが、5000円程度で設置できるらしい。
*広告付きバスシェルター(フランス生まれ)…、長野市内でも中心市街地を中心に導入されているものだが、さらに広げたい。
*競合会社との共同運行…岡山市は確か6社くらいのバス事業者が参入しているが、一部で共同運行によりクリームスキミング(いわゆる良いとこどり)や行き過ぎた競争を改善したとする。バス事業者の判断に追うところが大きいが、2社が共存・競合する長野市において、共同運行的な路線再編・運行ができないものか、追求してみたい課題である。中心市街地ぐるりん号で、既に共同運行されている実績を持つのだから、広げていくことは可能かとも思われる。

市内電車に導入されているLRV、「MOMO2」…議会事務局から頂戴した写真から


 長くなってしまいました。しかも断片的です。自分の頭を整理する意味でまとめたものなのでご容赦を。
 2月4日に特別委員会が開かれ、視察の成果を整理することにもなっています。全体的に整理し直して、意見を述べていきたいと思います。

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