生活困窮者支援…パーソナル・サポート事業

 28日、「どうなる?!パーソナル・サポート事業」をテーマに県労働会館で「政策フォーラム」を催しました。社民党の自治体議員団会議などが中心となった実行委員会で主催したもので、自治体議員や行政職員、関係労働組合の組合員ら50人余りが参加しました。
 実際に相談支援事業に取り組んでいる当事者の皆さんからの事例を含めた問題提起が中心で、大変有意義な意見交換ができました。
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 ちょっと長いですが、報告します。

《パーソナル・サポート事業とは?》
 パーソナル・サポート事業は、生活困窮者自立支援法に基づく事業で、生活保護に至っていない生活困窮者に対する「第2のセーフティーネット」を拡充し包括的な支援を行うとするもので、生活困窮者の自立と尊厳の確保、生活困窮者支援を通じた地域づくりを目標としています。
 自立相談支援事業と住宅確保給付金の支給を国庫負担3/4の必須事業とし、就労準備支援や一時生活支援、家計相談支援、子どもへの学習支援は国庫補助2/3の任意事業とされています。
 法が施行される来年度からは、福祉事務所を設置する市は独自事業として、また福祉事務所のない町村は県が実施主体と事業化することになります。

《県が先行モデル事業…寄り添い重視の「信州型」へ》
 長野県では、法制定・施行を前に、内閣府の「パーソナル・サポート・サービス・モデルプロジェクト」としてH23年度から事業を開始、そしてH25年度は厚労省の「生活困窮者自立促進支援モデル事業」として継承し、県内4カ所に相談と支援を行う「パーソナル・サポート・センター」を設置、「寄り添い型」の信州型モデル事業として先行的に展開してきています。
 H26年度からは来年度の法施行を見据えて、長野市や松本市をはじめとする関係6市と共同して県内6カ所に「生活・就労支援センター”まいさぽ”」を開設、県社会福祉協議会に委託する形で「信州パーソナル・サポート・モデル事業」に取り組んでいます。設置カ所は後述の「まいさぽ信州」のチラシを参照。

《相談支援の当事者を招き》
 この日の政策フォーラムでは、県健康福祉部地域福祉課の井出毅係長から「生活困窮者自立支援法と信州パーソナル・サポート・モデル事業の概要」について説明を受けるとともに、H23年度から3年間「パーソナル・サポート・モデル事業」を県から受託し取り組んできた「長野パーソナル・サポート・センター」の前センター長である美谷島越子さん(県労福協)から「実績と課題」について、今年4月から設置された長野生活・就労支援センター“まいさぽ長野”のセンター長、土屋ゆかりさん(長野市社協から県社協に出向)から「“まいさぽ長野”の現状と課題」について、それぞれ問題提起を受け、長野市社会事業協会「ほっとらいふ」相談室の吉澤利政さんをコーディネーターにパネルディスカッションを行いました。

《制度の隙間に着眼…出口の見えない若年層支援が急務》
 長野パーソナル・サポート・センター長を務めた美谷島さんは、3年間の活動を振り返り、長野・松本・上田・飯田の4地区のセンターで2,121人からの相談を受け、相談内容や支援では42,385件にのぼり、内、同行したり家庭訪問した件数は3,750件で、寄り添い型の支援の重要性を指摘しました。
 モデル事業の成果として、➊制度の隙間に落ちてしまい、どこに相談に行ったらよいのかわからないという状況で、これまで潜在化していたケースが浮き彫りになったこと、➋分野や地域を超えた広域的な協働のフィールドができたこと、➌関係機関や地域とのネットワークの基盤づくりができたことなどを指摘。
 一方、課題として、➊失業・家庭崩壊・借金・病気など複合的な課題が絡み合う生活困窮者の支援は、行政においても縦割りを排除して取り組むこと、➋一般就労に距離のある若年層に対して多様な社会的受け皿を作ること、➌緊急な支援が必要な貧困者に対しシェルターやフードバンクによる食料の提供や生活費の貸与等の迅速なサービス提供が必要なことなどを指摘、経済的困窮と社会的孤立を併せ持つ生活困窮者を早期に発見し、問題解決に向けた総合調整を図りながら、社会につなぎなおす支援のネットワークの重要性を強調しました。

《早期発見・継続支援、中間就労の確保…行政の政策支援が不可欠》
 “まいさぽ長野”の土屋センター長は、4月から6月までの相談者は186人、相談件数で538件に上り、本人相談者の年代では20代が20人、30代が20人、40代が41人と若年層が約6割に上っていると報告。”まいさぽ長野”は県社会福祉協議会が県から受託しているもので、長野市社協からの出向をはじめ須坂市・千曲市の社協からも参画。主任相談支援員であるセンター長のもと、相談支援員4人、就労支援員1人、キャリア支援専門員1人、合計7人態勢です。
 3ヵ月で見えてきた課題として、一つに若者の自立支援体制が未整備であること、二つに生活困窮者自立支援法の領域が生活保護と重なりながらも極めて広いこと、三つに相談を受けても一般的就労の場や中間的就労の場など「出口」が見えない層が存在することをあげ、生活困窮者支援には➊早期に発見し支援につなぐ仕組み、➋長期・継続的な支援の仕組み、➌家計管理相談の強化、➍本人に適した職業訓練を受ける仕組み、➎障害者就労でも一般就労でもない「中間的就労」システムの構築、➏困窮者(無業者)を排除しない地域づくりが必要だと強調しました。
 さらに、個別支援、地域支援を支えるためにも行政の政策支援が不可欠であることを指摘しました。
 ★「まいさぽ信州」のページ
 ★まいさぽ信州のチラシ
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《必須事業・任意事業一体の包括的な支援へ》
 生活困窮者に対する自立支援は、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなる恐れのある者」(法第2条1項)と規定される生活困窮者に対する、生活保護に至らない第二のセーフティネットと位置付けられていますが、生活保護費の増大を抑制するため生活保護から遠ざける仕組みとして作用しないか、懸念されます。
 また、「本人の状況に応じた支援を行う」とされつつも、自立相談支援事業は必須であるものの、相談事業と一体の就労支援や緊急支援、家計再建支援、子ども・若者学習支援が任意事業とされていることから、相談窓口(担当)だけを開設し、あとは行政機関や専門機関に振り分けるだけで終わりかねない問題を孕んでいると思います。
 特に県が担当する町村に居住する生活困窮者に対するサービス格差が心配です。本格実施に向け、拠点市における県との共同事業、広域的支援の仕組みの構築を県に質問しましたが、「10圏域ごとに検討中」との段階です。
 必須・任意一体の包括的な支援となるよう、県の強いリーダーシップが問われるとともに、本格事業を担うことになる市において(社協に委託するとしても)、生活困窮者に対する認識の共有を図り、社会的に排除されないよう早期に発見する仕組み、中間的就労の場の確保など、法施行を前に、事業者・支援団体と連携し、具体的な準備に取りかかる必要が差し迫っています。

 貧困と格差が拡大する中にあって、セーフティネットである生活保護を十分に機能させるともに、生活保護を排除することなく困窮者に対する支援が包括的に有効的に展開できるパーソナル・サポート事業となるよう取り組みたいと思います。

《9月市議会のテーマに》
 6月議会では、池田清市議が質問に取り上げましたが、今回のフォーラムで得られた実例や、パーソナル・サポート・センター当事者が提起する課題を踏まえ、引き続き、9月議会のテーマにしていきたいと思います。

《政策フォーラム第2弾、第3弾》
 なお、「政策フォーラム」は、第2回を7月27日(日)13:30から松本市・勤労者福祉センターで「福島からの避難者に対する支援策」をテーマに、第3回は9月6日(土)13:30から長野市・県労働会館で「県の契約に関する条例について」をテーマに計画しています。

 また、長野地区では、市民ネットの議員が中心となって8月27日に『介護保険制度の「改正」を考える…現場から見える課題』(仮称)をテーマに長野市版政策フォーラムを準備しています。