地方議員のための議会基本条例講座

 昨日4日、上京して、加藤幸雄・元全国市議会議長会-調査広報部長を講師とする「地方議員のための議会基本条例講座」を講聴してきました。政務調査費の活用です。

 市議会内で始まっている「議会基本条例検証・議会活性化検討委員会」の協議にあたり、全般的な課題を復習するともに、議会報告会の在り方など具体的な各論の取り組み状況を押さえたいとの狙いで参加したのですが、どちらかといえば「基礎編」で、質問もしましたが明快な回答に乏しく、ちょっと期待外れ…。でも、復習にはなりましたし、「新たな課題」の指摘は興味深く聴くことができました。

 加藤氏の講演は、第1講が「議会制度と議会の役割」、第2講が「議会改革と議会基本条例の制定」の2部構成。議会基本条例に関しては、議会組織基本条例・議会運営基本条例・議会基本条例に類型化、また改革先行型と理念先行型の類型を示し、具体的には栗山町議会、伊賀市議会、横須賀市議会の3つを比較し、横須賀市議会の基本条例を「お勧め」とします。

 条例制定に向け、「議会の意思の形成が重要」であり「全議員によるブレーンストーミング(各人が自由に発想を出し合う集団思考法)が欠かせない」との指摘は頷けます。基本条例に定めなければならない事項として、「議会報告会」「反問権」「議員間討議」「文書質問」をあげるとともに、新たに規定すべき事項として「災害時の議会」「委員会の資料要求」「予算委員会の常任委員会化」を提示。

 問題意識としては共有できるものです。「災害時の議会」は要検討です。全員協議会を開き、首長の出席を求め、災害対策・復旧復興計画を協議するというもので、予め制度化して条例に規定するという提案です。大災害時の議会対応として、考えておかなければならない課題だと思います。

 因みに、横須賀市議会の条例は、定例会の回数、議員定数、常任委員会、議員報酬、政務調査費などを具体的に規定するとともに、文書質問も規定されています。議会報告会の規定はありませんが、議会に関わることを総まとめにし、最高規範性を定めていることが特徴です。
 議会基本条例と会議規則や委員会条例との整合性という観点から、研究すべき課題と言えそうです。

 議会報告会や市民との意見交換会の実際の運用と効果などについて質問したのですが、具体的な事例は把握できていないとのこと。加藤氏曰く、「長野市のような規模の自治体議会の議会報告会は、なかなか難しいとは思う。知恵を出し合って、前例を作ってもらいたい」と逆にエールを送られてしまいました。私としては、テーマ別の意見公聴会的な取り組みができないものかと思案しているのですが…。

 「反問権」は、一般的な言葉のニュアンスとは異なり、長野市議会の条例で定めるように「市長等及びその補助機関である職員は、議長又は委員長の許可を得て、議員の質疑又は質問に対して、その趣旨の確認等のため質問することができる」といった、市長に質問の趣旨確認のための質問は認めるという理解が通常です。私はこれでよいと思っていますが、最近は「反問権」に加え「反論権」を規定する条例ができています。北海道の鹿追町議会基本条例や三重県松阪市議会(今は素案段階)の動きです。
 二元代表制とはいえ、議会と首長が制度上、対等・平等ではない現実を考えると、「首長に反論権」というのはどうなんでしょうか?首長の政治的資質にもよりますが、どのように運用されるのか、興味はあります。

 その辺りの事柄を、講座の後、町田市議会・議会事務局から参加していた香川純一氏と意見交換。香川氏は「議会事務局実務研究会」(議会事務局法務担当職員の関東地区のネットワーク)の事務局長を務めているとのこと。反論権をはじめ、政策立案・政策提案の議会に対するサポート、議会事務局の機能などなど、面白い意見交換ができました。

 この講座に参加したため、同日の「長野市第35回人権を尊重し合う市民の集い」は欠席に。千葉県の差別禁止条例をテーマとした毎日新聞・論説委員の野沢和弘さんのお話にも、とても関心があったのですが…。ちょっと言い訳です。

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