青木島遊園地の廃止問題を考える【その1】

市議会12月定例会は明日19日が最終日で、物価高騰対策やコロナ対策で事業者・生活者、医療機関等を支援する経費を盛り込んだ補正予算案をはじめとする議案が採決されます。

今議会で急浮上した論点の一つが、市内の青木島遊園地の廃止を巡る問題です。12月2日付の信濃毎日新聞「声のチカラ」に「公園廃止、うるさいから?子どもの声への苦情おさまらず」との記事掲載をきっかけに、全国ニュースともなり、SNS上を含め大きな関心と波紋を広げている事案です。

SNS上では、苦情を申し立てている個人を特定した誹謗中傷が相次ぎ、深刻な事態も招来させています。心が痛みます。人権・プライバシーを尊重する冷静な議論が必要でしょう。

12月議会では9日、遊園地廃止方針の見直しを求める質問に対し市長は「苦しい判断ではあるが、このまま手続きを進める」と答弁し、廃止方針を変えない考えを改めて示しました。

12日の市長定例記者会見では、「地元が18年間という長期間に及び、いろいろ意見を調整された結果として、地元区長会から廃止要望がなされた。そういった経緯を踏まえて、手続きを踏ませていただく」とこれまでの考えを述べたうえで、「子どもたちの遊び場は今後どうなるのかということが、多くの方々の大きな関心、心配だと思う。その点については、市議会で答えた通り、小学校のグラウンドを使わせていただく、あるいは近隣にも公園、遊園地があるため、子どもたちの遊び場が、これで一気に失われるということではない」とも述べています。

そのうえで市長は「現地に赴き、廃止を要望した地元区長会からこれまでの経緯などについて直接声を聴く」と述べ、地元との意見交換の実施について言及、「遊園地のことだけでなく、将来の地域づくりも含めて、直接声を聴く機会にしたい」と述べました。時期など詳細は未定とされます。

市長が行うであろう地元区長会との意見交換が事態打開のカギになるのかは未知数でしょう。

私が委員長を務める13日の福祉環境委員会でも、保育園や児童センターを担当するこども未来部の所管事項として議論になったところです。

「子どもの声がうるさい、煩わしい」と感じる声にどう応えるのか。子ども達にのびのびと遊ぶことができる遊園地を残したい!包容力、包摂力のある社会にしたい!私もそう思います。

しかしながら、子どもの声や迎えの車の渋滞・騒音などを理由に保育園の開設が困難となる事例等が示す通り、青木島遊園地の問題は、市民一人ひとりに利害の受け止めが複雑・多様化してきていることを象徴する事案であり、私たちの社会の包容力、包摂力が問い直される問題だともいえます。

私は5日のブログで、行政が市民からの苦情に適切にかつ合理的に対応できたのか、遊園地周辺の住民の合意が十分に図られたのか、周辺住民・子ども達の生活・遊びの環境をどう考えるのかといった観点から、今後の対応を考えたいとしてきました。

私は、住宅街にある遊園地、しかも児童センター・保育園の施設に隣接する遊園地において、子ども達がのびのびと遊べる環境をつくり守る観点と静かで平穏な住環境を守る観点、この二つをいかに調和させ両立させるのかが問われていると考えています。

青木島遊園地の開設から廃止決定に至るいきさつは、住民要望により市が借地し整備した遊園地が、近隣市民の苦情・要望から、遊園地内の植栽や出入口の変更など改善策を講じてきたものの、使われない(使えない)遊園地となり、児童センター保護者会など住民主体の維持管理が困難なことから、今年1月の地元区長会からの「廃止やむなし」との要望に至り、市として「苦渋の決断」で「廃止」を決めたというものです。かなりざっくりとした経過ですが。以下、経過の概要をまとめました(文責は筆者)。【12月20日追加・補強】

市としては、対応に苦慮しつつも、苦情に応え改善策を講じてきた経緯にあると受け止めたいと思います。子どもの活動を制限しながらですが…。ただし、18年間の経過の中で、➊所管の公園緑地課のみの対応で、保育園や児童センター、区長会等を所管する担当課を横断した総合的な対応が十分だったのか、➋地域住民との協議において、問題や対応について区長会だけでなく、広く周知し理解を積み上げていくことが十分だったのかといった課題は指摘しなければなりません。さらに市は今年2月に「廃止方針」を決めていますが、地元の議員らに報告したのは今年10月で、議会全体には報告等がされてきていません。これほどの大きな関心事になることを予想しなかったのでしょうが…。

子どもの声を煩わしいと感じる感度は人それぞれです。「1軒からの苦情」がクローズアップされていますが、1軒であろうと、苦情に対し「受忍の限度内でしょう。我慢してください」と理解を求めつつ門前払いするのではなく、何とか調和を図ろうとしてきた市の姿勢は、十分性に課題を残すものの「了」としたいと思います。その意味で、調和・両立が困難なことを受けた地元区長会からの要望を受けての「廃止決定」はやむを得ないものと受け止める一人です。地域の間に対立と分断をさらに広げることにつなげない道として…。

しかし、「遊園地がいつの間にかできて、いつの間にか廃止に」といった声があるように、地元住民の間での遊園地開設時、そして遊園地廃止要望に至る過程での住民合意が十分になされていたのだろうか、また住民合意形成において市行政が的確な指導・助言を行ってきたのだろうか、疑問というか課題は残ります。住民自治の醸成といった観点からも見つめなおすことが大切なのではないでしょうか。

市長は地元区長会との意見交換の考えを示しています。廃止方針への理解を求めるにしても、少なくとも、子ども達の安全な居場所の確保について、これまでの答弁以上の明確な代替案を示すことが必要ではないかと考えます。

児童センターの児童に対し、青木島小学校のグランドを利用する考えを示していますが、春休みや夏休みの長期休業中に限定するものとなっています。平日利用も可能とする方策を検討すべきでしょう。

また、私は、地元青木島の区長会にとどまらず、青木島児童センターや保育園の保護者会、近隣の未就園児保護者など多方面の声を聴くことが大切であると考えます。そして何よりも我慢を強いられている子どもたちの声を聴く機会を設ける姿勢をもってもらいたいと願います。

さらに、遊園地の借地契約においてあと2年を残していることを考えると、来年3月の廃止を地権者の理解を得て契約満了まで延期し、未就園児を中心とした利用の道を残すこと(市が維持管理する)、その間に住民の声を改めてしっかりと聴き新たな遊園地整備等を検討できないものかとも考えます。いろんなチャンネルを通じて市側に届けたいを思います。

この間、私自身、市民の皆さんからも、全国からも「議員はどう考えているのか、何とかならないのか」との意見や問い合わせを沢山いただいてきています。青木島遊園地の廃止問題について、余り論点を整理しないままですが、私なりの事態の受け止めと今後の課題についてまとめた次第です。ご意見を賜りたく存じます。

Related Images: