6月議会の質問➊…中心市街地活性化の課題と投資効果の検証

遅ればせながらの6月議会における質問の詳細報告【その1】です。

住み続けられるまちづくりの観点から、中心市街地と中山間地の均衡ある発展は長野市政の大きな課題の一つです。こうした問題意識のもと、中心市街地活性化の今日的な課題について取り上げました。

イオンモール進出等、商業環境の変化にいかに対応するのか

1点目は、須坂市へのイオンモールの進出など本市を取り巻く商業環境が大きく変化する中で、本市中心市街地活性化の課題解決に向けた取り組み状況についてです。

中心市街地活性化はH19年からの第1期基本計画、H24年からの第2期計画を経て、H29年からは現在の「活性化プラン」に引き継がれ、第3期の認定を受けるまでの期間としてR7年3月まで延長される一方、長野駅から新田町交差点までをエリアとする「中央西地区市街地再生基本計画」が策定されています。

今日、須坂市へのイオン進出による本市商業、中心市街地に及ぼす影響をはじめ、区域内では、イトーヨーカドー撤退跡地に「綿半」商業施設が整備される一方、アゲインの閉店に伴う民間ベースによる施設再整備、もんぜんぷら座敷地の利活用、駅前B-1地区市街地再開発事業(末広町交差点北周辺)など、課題が山積しています。

Q&A

本市周辺の商業環境の変化、中活エリア内における環境変化をどのように認識し、賑わいと市民サービスを向上させる観点から如何に課題解決を図る考えか。

【都市整備部長】中心市街地を取り巻く状況として、須坂市への大型集客施設 の進出による商業への影響が懸念され、また、中心市街地では中央通り沿いの大型商業施設の閉店や、多くの商業施設が建て替え時期を迎える中、低未利用地が共同住宅などへ転換され始めて、今後もこうした動きが活発になると予測される。中心市街地の活性化には 居住人口の増加や、訪れてみたくなる本市の歴史・文化等新たな魅力のあるまちづくりが大切。本年2月に策定した長野中央西地区市街地総合再生基本計画では、重点プロジェクトとして、居心地が良く歩きたくなるまちを整備するウォーカブル推進事業を掲げ、街なかの交流・滞在空間の創出を目指すこと、新田町交差点周辺のエリアの整備や、(仮称)長野駅前B-1地区市街地再開発事業などを掲げている。門前町として発展してきた 歴史や伝統を生かし、都市機能の充実や街なかの快適な交流・滞在空間の創出を進めることで、にぎわいと市民サービスの向上に向けた中心市街地の魅力あるまちづくりにつなげていきたい。地元商店街団体や関係部局との連携を図りながら中心市街地の活性化に取り組む。

「住」「商業」「観光」三位一体で中心市街地の活性化を

中心市街地の課題は列挙され、決意のほどは伝わるものの、課題解決に向けた具体策には乏しいとの印象がぬぐえません。商業拠点である中心市街地にいかに磨きをかけるのか、購買意欲をそそる魅力ある商店街をいかに再構築するのか、マンション等の増加により進む街中居住を支える教育や買い物を含めた住環境をいかに改善していくのか、善行寺表参道としての歴史と伝統にいかに磨きをかけるのか、対処療法ではない骨太の方針が必要だと痛感します。「住」「商業」「観光」三位一体で中心市街地の活性化を考えたいものです。

危機感と焦燥感で対案の提起にまで至らない質問で、私自身も新しい発想に磨きをかける必要性を痛感しています。

718億円の投資が税収として還流されているのか

2点目は中心市街地活性化への投資効果の検証です。

市はこれまでにH11年(1999年)からの旧計画時代を含め、中心市街地活性化に718億5千万円を投入してきています。東口の第2土地区画整理事業360.4億円を除いても358.1億円に上ります。

エリアの核となる長野駅周辺、権堂地区周辺、善行寺周辺の中心市街地エリアの面積は216haで全市域の0.25%、市街化区域の3.6%にあたります。この限られた区域に、再開発事業や施設整備、民間投資の誘導などを通じて、まちなか居住、公共的施設等の集約を図るコンパクトなまちづくり、賑わい再生に向けた将来への公共投資として税金を集中的に投入してきました。

中心市街地活性化に係る投資効果について、活性化の4つの目標に照らし5つの目標指数からフォローアップ検証されてきています。

R3年度のフォローアップでは、コロナ禍の影響もあり、目標指標に対し「基準値未満」の達成状況が顕著です。「住みたい」「訪れたい」といった視点から事業効果を検証することは重要ですが、投資額が大きいだけに固定資産税・都市計画税の税収という視点からも検証し、投資に見合った税収としての効果があるのか、税として還流されることで、市民の必要度・満足度に応えていくことが重要であるとの問題意識です。

税収面からみると特段の効果発現せず

資産税課に依頼した調査によると、中心市街地エリア(以下、中活エリア)での固定資産税及び都市計画税の税収の推移では、残念ながらH23年(2,011年)以降の推移となりますが、2011年では27億5,700万円、11年後の2022年は26億2,100万で増減率95.06%。市全域でのかかる税収の増減率は94.7%で、ほぼ同じ傾向で推移、ともに若干減少傾向にあるもののほぼ横ばいである状況がうかがえます。また、中活エリアでの固定資産税等の税収は市全域の11.77%を占めるに過ぎません。

★資産税課作成の資料をグラフ化したもの

すなわち、税収面からみると、中心市街地活性化の取り組みは特段の効果を上げているとはいいがたい状況といえます。だから意味がないといううつもりはありませんが…。

富山市では投資効果を税収面から検証…15年で投資額を回収

この質問は、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりの成功事例と評される富山市では、中心市街地の公共投資を税収の増、投資額の改修といった点から検証されていることから、長野市の状況をチェックしようと思い立ったことが動機です。

富山市では、公共投資が呼び水となり市街地再開発事業など民間投資が活発化し、商業施設等の再開発事業における固定資産税等の増収分で、投入してきた市補助金は事業完了後から15年目に回収でき、その後は純増となる見通しを明らかにしています。また、H24年(2012年)とR2(2020年)年の固定資産税・都市計画税の比較では、中活エリアで10.7%増、市域全体で12.9%増とのことです。

一概に比較できないとしても、今後も続くであろう中心市街地活性化への集中的な投資が、税として還流されること、よって市民の必要度・満足度に直結し市民から理解され支持されることが重要でしょう。

Q&A

税収面からの中心市街地活性化の検証について、その認識と今後の対応について見解を問う。

【財政部長】税収はその時点での税制度、また、R3 年度、R4年度とコロナ禍における特別な措置として固定資産税を軽減する措置が講じられ、こうした税制改正による影響も大きく受けている。そのため、中心市街地活性化に係る事業の成果を、税収を用いて評価することは難しい面もある。事業効果を検証するための指標として何を用いるべきかについては、中心市街地活性化の目標を踏まえて検討すべきものと考える。一方で、中心市街地活性化の取組が街の魅力を高め、経済活動の活性化や資産価値の増加に波及することで税収への効果につながる部分もあると考えられることから、今後、提案を参考にしながら、他の自治体の取り組みについて研究していきたい。

公共投資…税収アップにつなげる問題意識も

予想の範囲内の答弁でした。「研究する」との行政用語は「問題意識はわかるが参考意見として聞いておく。調査課題とはする」程度の意味合いなのですが、まずは問題提起です。

まちづくりにおいて、公共投資が民間投資をよび税収アップにつながり市民に還元される、そうした好循環を目的意識をもって創っていくことが必要不可欠だと考えます。こうした問題意識が無駄な公共投資をそぎ落としていくことにもつながるのではないでしょうか。さらに他自体等の調査を深め、具体的な提案につなげていきたいと考えます。

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