南北交通軸で新交通システム導入の検討へ

 先週の10月26日、長野市交通対策審議会の新交通システム導入検討部会(部会長=柳沢吉保・長野工専教授)が開かれ、LRT(ライト・レール・トランジット)、BRT(バス・ラピッド・トランジット)など市街地における新交通システムの導入に向け、検討ルートの設定を確認しました。
 屋代線の廃線を契機に、改めて利便性の高い公共交通ネットワークの再構築に向けて新交通システムの導入可能性を調査検討するもの。
 既に旧屋代線へのLRT導入は「現時点では困難」との結論を出しています。

新交通システム導入検討部会。出席者全員の意見を聴く会議運営は良かったと思いますが、今後調査を進めるうえでの課題や論点がもっと整理されるとわかりやすかったのになと思いながら傍聴しました。


 この日の部会では、長野市街における交通課題の現況をおさらいした上で、第4次総合計画後期基本計画や都市計画マスタープランなどの上位計画を踏まえ、新交通システムのあり方を整理し、南北方向軸を新たな基幹となる公共交通軸として強化するため、5つの検討ルートをケーススタディとして設定することを確認しました。

★協議・確認された新交通システム導入検討のポイントを紹介します。

1.将来の公共交通の方向性として6点を整理
 ➊集約型都市構造の実現に向けた利便性の高い公共交通の整備
 ➋持続可能な交通体系の整備
 ➌環境負荷軽減のための自動車利用の抑制
 ➍観光振興に寄与する交通の整備
 ➎公共交通機関同士のネットワークの構築
 ➏「自分たちの交通機関」としての市民意識の醸成と「自動車からの転換と利用促進」が図ら
  れる交通サービス

2.新交通システム導入は「新たに基幹となる公共交通を導入すること」と位置づけ
 ➊公共交通ネットワークの軸(生活拠点を結ぶ新たな公共交通機関軸)
 ➋高い明示性(安心して目的地に行けるわかりやすさ)
 ➌既存公共交通よりも高い利便性(定時性・速達性など自動車と競合できるサービス)
 ➍まちづくりへの寄与
 ➎ユニバーサルデザインへの対応
 ➏一定の需要の見込み
などを視点におき、検討ルートを設定する。

3.検討ルートの設定にあたり
 ➊中心市街地と北長野・篠ノ井・松代を結ぶ軸
 ➋国道18号や117号の渡河部での渋滞緩和
 ➌川中島・更北、篠ノ井、大豆島などの人口増加地区や交通流動の多い地域
 ➍善光寺や観光地の回遊性の向上
を考慮し、南北交通軸と東西交通軸で構成される公共交通軸の内、南北交通軸を強化する。

4.5つの具体的な検討ルート
[南北交通軸に沿ったルート]として
 ➊長野駅東口~ビッグハット~国道18号~古戦場~松代
 ➋長野駅東口~中央通~善光寺
 ➌長野駅善光寺口~中央通~若槻
[参考に検討するルート]として
 ➍長野駅東口~ビックハット~国道18号~古戦場~オリンピックスタジアム~篠ノ井駅
 ➎長野駅東口~須坂インター線から綿内

5.来年1月の部会で方向性決定
 今後、各ルートの周辺状況調査、利用者予測、費用便益、既存交通への影響などを検討し、来年1月の部会で新交通システム導入の可否を協議することになりました。さらに同部会がまとめた導入案について市民意見を募集し、最終的には交通対策審議会の答申にまとめられる計画です。

 協議では、概ね原案に賛同する意見が大勢でしたが、「交通需要に関する定量的な情報や検討ルート周辺の人口密度や人口動態を押さえないとしっかりとした判断はできない」との指摘や「丹波島橋南での交通結節点のあり方を検討すべきでは」「市街地中心で中山間地域はもっと不便になるのではと心配される。周辺地域との関わりを十分に考慮したものにしてほしい」などの意見が出されました。もっともな意見だと思いながら聴きました。

 「南北交通軸」「東西交通軸」という概念が地勢的にストンと落ちないところはありますが、南北で中心市街地と地域拠点を高速で結ぶことのできる新しい交通軸を設定しようとの意図は見えてきます。当然、鉄道機関軸であるJR・しなの鉄道(新駅検討を含め)、長野電鉄の利便性向上、そして鉄道とのアクセス向上も検討されることになるでしょうし、公共交通網とリンクする道路網の整備(特に外環状線の完成に伴う交通流動の変化と影響を考慮したもの)も併せて検討されるでしょう。
また、それぞれの検討ルートでLRTやBRTなどの新交通モードが比較検討されることになるのでしょう。詳細な調査結果を見ないと全体的な評価はできませんが、需要調査をはじめ検討手法は要チェックです。部会に提出された資料の読み込みが重要です。

★「LRTは無理」…市長発言の虚しさと無責任
 ここで気がかりな点は、市長が10月10日の記者会見で大型プロジェクト事業に関連して「LRTをやりたいという方々はたくさんいらっしゃるが、今の財政状況では無理ではないかと私は思っている。だから、プロジェクト事業には入れていないということ」と述べていることです。財政面からのしわ寄せが既に表れてきています。
 市長自身は既にBRTに関心が動いているのかもしれませんが、首長が無理だと判断していることを審議会で検討するというのは、何とも虚しい話ですし、余りにも軽率で無責任な発言だといわざるを得ません。

 先だっての県の新交通ビジョンの勉強会の折に、裏話となりますが、黒川洸氏が「調査業務を請け負っているパシフィックコンサルタンツならば、JRT導入を結論付けるのではないですか。もっとも行政のオーダー次第ですけどね。首長の姿勢でしょう」と述べていたことが思い起こされます。

 議会では11月9日に公共交通対策特別委員会が開かれます。新規委員会での勉強会ではありますが、新交通システムのあり方や検討手法等について、さらには長野市版公共交通ビジョンの策定に向けての課題や問題点を探りたいと思います。

 旧屋代線の跡地活用、ICカード「くるる」の利用状況などの課題もあります。長野市における新たな公共交通システム導入について、多角的、多面的に、かつ集中的に調査研究し、独自案の提案に結び付けたいと考えているところです。
 皆さんの知恵を借りたいと思います。

10月30日付「長野市民新聞」より。地図があってわかりやすいのでお借りしました。

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