公共交通対策特別委の視察➋…浜松市編

 1月22日に訪問した浜松市の取り組み報告です。

浜松市

(1)静岡県西部(遠州)に位置する政令指定都市で三遠南信地域の拠点都市。人口800,866人、面積1558.04㎢。H17年に周辺11市町村を編入合併し、高山市に次ぐ面積を保有。7つの行政区で構成される。
IMG_1827
(2)浜松市はH9年にオムニバスタウンの指定を受け、ICカードやバスロケーションシステムの導入などバス交通における走行環境間改善、円滑化、利便性向上などにいち早く取り組んできた自治体である。
(3)今回の視察のテーマは、ミニバスターミナル構想と交通空白地域の有償運送である。都市整備部交通政策課から説明を受ける。【写真下】
IMG_1823

総合交通計画を策定

 合併・政令市移行を踏まえ、将来の都市づくりに向け、様々な都市活動を支える交通計画として、H22年に策定。今後の交通の取り組みとして、円滑性・利便性・地域性を柱に、H42年(2030年)頃の「交通の姿」「交通の展望」を示すものとされる。

広大な中山間地域を抱える浜松市

広大な中山間地域を抱える浜松市


 「暮らし」に対応した交通計画の位置づけで、使いやすい公共交通ネットワークの形成、市民生活を支えるために必要な公共交通サービスの保障、地域が主役となって育てる維持可能な公共交通、交通ネットワークの核としてのサービスレベルが高く移動しやすい都心交通を目指すものである。
【参考】浜松市総合交通計画のページ

ミニバスターミナル構想

➊将来公共交通ネットワークに基づく交通結節点づくり
 浜松市総合交通計画で設定した将来公共交通ネットワークと、拠点に配置した交通結節点(ミニバスターミナル)のネットワーク化方針により、具体化される構想。

➋3分類されるミニバスターミナル
 ミニバスターミナルは、その役割やサービスレベルに応じて、「交通広場型」「交流促進型」「簡易乗換型」に3分類される。
 「交通広場型」はJRや遠州鉄道の鉄道駅での鉄道とバス・タクシー・自転車・自動車との乗り換えを担うもので駐輪場の整備などが行われている。
 「交流促進型」は病院や商業施設(イオンモール)を拠点とするもので、主要施設への公共交通での移動、バスとバス・自動車・自転車間の乗り換えを担う。バス停の上屋・ベンチ、バスパース、駐輪場等が整備される。
 「簡易乗換型」は、団地や高校、バス車庫などを拠点に基幹路線・支線路線を結ぶもので、バスとバス・自転車間の乗り換えを担う。バス停や駐輪場の整備となる。

➌利用促進に「お帰り切符」サービス
 商業施設・イオンモールは、バス利用者に対し「お帰り切符」サービス(帰りのバス運賃無料サービス)を実施し利用促進に取り組んでいる。
 因みに「お帰り切符サービス」は遠州鉄道グループでも実施され、さらに調べて見たら、県内ではアリオ上田店・イトーヨーカドー上田店でも別所線利用で実施されている。
 また、「交流促進型」とされる聖隷三方原病院では、7割が通院、3割が乗換の拠点として利用されているとのこと。

➍中山間地域と市街地の結節点はこれから
 将来公共交通ネットワークの構想では、基幹路線・準基幹路線・環状路線・支線路線を類型化し、交通結節点の設定をめざす。
 現状では、旧浜松市域での整備と思われる。市北部に広がる中山間地域と市街地を結ぶ結節点の整備はこれからのようである。
 私としては、策定中の公共交通ビジョンにおける交通結節点の考え方、中心市街地に入る路線バスの集中と交通渋滞を緩和する意味での中継乗り継ぎ拠点や運賃の乗り継ぎ割引のあり方、中山間地域で生活圏域内の交通網の拠点、市街地への乗り継ぎの拠点のあり方という視点で関心を寄せていた課題であるが、さらに先進事例等を調査・勉強したい。

交通空白地域の有償運送=過疎地有償運送

➊NPO法人による過疎地有償運送
 過疎地有償運送は、地域州民が主体となるNPO法人等が実施するもので、過疎地等における交通空白地位の解消や公共交通を補完する地域交通として期待されているものの、車両購入などに多額の初期投資が必要となること、運賃の上限規制等により採算をとるのが難しい事業であることから継続していくために多大な負担を強いられるなどの課題があるとされる。

➋浜松市の補助金交付要綱
 浜松市では「過疎地有償運送支援事業補助金交付要綱」を定め、支援している。
 内容は、車両やパソコン等の初期投資にかかる経費に対し1/2以内(上限350万)、設備更新の刑に対し1/2以内(上限100万)、運行支援として前年度欠損額の1/2以内(上限100万)、最低3年間の事業継続を条件とする。

➌1億円の基金…旧町営バスを引き継ぐ「NPO法人がんばらまいか佐久間」
 現在の過疎地有償運送は、旧佐久間町で運営される「NPO法人がんばらまいか佐久間」の1団体のみであるが、今年4月から春野町でNPO法人による運行がスタート、2団体となる。
 「NPO法人がんばらまいか佐久間」は、合併前・町時代の1億円の基金(個人の寄附)を活用し運行されていた町営バスを引き継ぐもので、道路運送法の改正と合併に伴い、NPO法人による過疎地有償運送に移行したものである。
 春野町におけるNPO法人立ち上げも、個人篤志家の1億円の寄附を元手にスタートするという。何とも羨ましい限りというか、条件に恵まれているといえる。

➍年間200万の赤字
 NPO法人の会員及び同伴者が利用するもので、月~金の9時から16時の時間帯でデマンド方式、ドア・ツー・ドアの運行を行う。車両は普通乗用車2台を保有。運賃は地区ごとの定額制(500円から4700円)+迎車料金100円。法律でタクシー料金の概ね半額とされている。
 会員は約2,800人、一日約19.7人が利用する。買い物や公共施設、病院への移動手段として利用、高齢者が主である。
 年間の運賃収入は、340万円で200万円の赤字を市補助金100万円と基金繰出100万円で補てんする。
 1億円の基金があることから、毎年100万円を取り崩しても100年間は維持できることになる。

➎利用者減、運転手の確保、区域外への移動が課題
 高齢化の進展に伴う利用者の減少にいかに対応していけるかはこれからの課題である。また、佐久間町以外への移動需要に対する対応が課題とされ、今後、事業区域の拡大の可能性を探りたいとしている。
 最大の課題は運転手の確保であろう。過疎地有償運送は2種免許取得者に限定されておらず、国交省の認定講習の修了者や国交省が認める要件を備えている者とされる。現在は1種免許取得者で70歳までとしているが、5年間無事故無違反で74歳まで拡大するとされる。
 ドア・ツー・ドア運行だけに利用者の安全、区域内の交通事故防止は重要な課題である。

➏タクシー事業者との共存も課題
 運賃が「タクシー料金の概ね半額」とされることから、既存タクシー事業者との競合が課題となる。佐久間町内にはタクシー事業者がいないことが幸いしているが、今後、区域外への移動を拡大すると浮上してくる問題となる。
 既存タクシー事業者との共存、住み分け、連携は大きな難問である。

地域バスの実証運行と収支率2割の維持基準

➊11路線で実証運行
 浜松市では、中山間地・過疎地域、交通空白・不便地域、路線バス廃止地域などで、11路線の地域バスを遠州鉄道バスへの運行業務委託で運行する。
 それぞれ、市行政と交通事業者、地域・利用者による「地域交通検討会」を設置し、車両をはじめ路線・ダイヤ・運賃などを協議決定し、現在は2年間の実証運行期間が終了し、本格運行に移行する時期である。
 交通空白地域における新規バス路線の導入=小型車両による「みおつくしバス」、中山間地でのデマンド運行=「水窪ふれあいバス」などが特徴的な取り組みとされる。

➋公共交通「維持基準」と「最低保障運行」
 実証運行から本格運行に移行するにあたり、地域の公共交通を支えるための新たな仕組みとして、公共交通「維持基準」を導入するとともに、市による「最低保障運行」を規定している。
 「維持基準」は「収支率2割以上」(負担割合で市負担が8割、地元2割を目標とする)とするもので、この「維持基準」を満たさない場合において、なおかつ地域での維持基準達成に向けた更なる協力が見込めない場合に「最低保障運行」レベルを市の責任で実施するというものである。
 「最低保障運行」は、市民生活に必要最小限の水準として「週2回、1日2往復まで」で「集落中心から感染の最寄りバス停まで」とされる。

 一方、「維持基準」を満たし、地元でさらに利用促進の取り組みがなされる場合には「上乗せ運行」ができるとされる。

 「地域交通検討会」で協議される地域の主体的な取り組み如何でサービス水準を変動させるものであるが、路線廃止を除外し市が責任を持つ「最低保障運行」を定めている点が特徴的である。

 「収支率2割」という「維持基準」は、税負担・税の有効活用という観点から客観的で合理的であると考える一方で、採算的・金銭的数字のみによる「基準」の一人歩きが懸念されるところでもある。
 しかし、「最低保障運行」を定めることで、最低限の公共交通サービスの維持が裏打ちされていることから、市民の一定の安心感は他も保たれるのかもしれない。市民・利用者の生の声を聴きたいところである。

 長野市では、市営バス、デマンド交通、乗り合いタクシー、地域コミバス等を運行しているが、維持基準は「1日あたり利用者数」を目安としている。
 「1日あたり利用者数」は「収支率」と連動する数字ではあるものの、収支率達成の考え、「最低保障運行」の在り方について、路線の維持・拡大、利用促進を図っていく上で、利用者の当事者意識を高めていく観点から、さらに検討・検証し、長野モデルを構築したいものである。

 【下の写真は浜松市役所の入口玄関マットと庁舎内のバスロケーション…おもてなしと利便性】

IMG_1828
IMG_1826