交通政策フォーラム

 22日から23日、愛媛県松山市で開かれた私鉄総連主催の「交通政策フォーラム」に参加、生活路線バスや鉄軌道の再生など地域公共交通を巡る課題等について勉強してきました。
 松山市への訪問は3回目。直近では昨年 月、まちづくり・公共交通対策特別委員会でICカード導入と活用について視察した自治体です。

報告いただいた伊予鉄道株行会社の河野・政策課係長


 22日は午前9時から、プレ企画として、松山市地元の交通事業者である伊予鉄道株式会社から「伊予鉄道の交通施策と地域内交通の今後について」をテーマにお話をいただきました。私鉄総連の交通対策委員と自治体議員の合同勉強会です。
 講師は、伊予鉄道自動車部政策課の河野係長。交通事業者に「政策課」というセクションを置いているところが一味違います。鉄道部にも同様に政策課が置かれているそうです。
 「サービス向上宣言」や「いきいき交通まちづくり宣言」など、交通事業者としての公共交通再生への取り組みをはじめ、松山市周辺市町(東温市・伊予市・松前町)の住民ニーズに沿ったバス交通の確保、行政と連携した地域公共交通ワークショップや小学生を対象としたエコ交通まちづくり教室の取り組みなどの報告を受けました。
 
 公共交通カバー圏域のサービス向上、交通不便地域の移動手段確保に向けて、行政・地域住民と目標を共有化し、役割分担を図り、交通事業者としての責任を果たすとする事業者の姿勢が印象的でした。
 とりわけ、路線の維持やデマンド交通への転換などについて、「公共交通は必要だという意見が多いが、どちらかというと他人事。これでは公共交通を維持することはできない。なぜ、その地域に公共交通が必要なのか、どんな移動手段が必要なのか、地域の人と一緒に考えることが不可欠」と語っていたことが印象に残ります。

 また、松山市における「松山のまちづくりを支えるモビリティ・デザイン」「松山市総合交通戦略」などについても触れました。改めて、研究して、長野市の公共交通ビジョン策定に反映していきたいものだと思います。

 午後は、全国から250人余りの参加者を集め、「公共交通利用促進運動キックオフ集会」、そして「交通政策フォーラム」本番となりました。

公共交通利用促進運動キックオフ集会。緑のジャンパーは中部地連の参加者です。

 
 私鉄総連・労働組合としての公共交通利用促進運動は6年目となります。
 キックオフ集会には、協賛団体として日本民営鉄道協会や日本バス協会、全国ハイヤー・タクシー連合会からそれぞれ常務理事も参加し、労使一体で利用促進を図っていく取り組みが確認されました。

 交通政策フォーラムでは、名古屋大学大学院の加藤博和准教授「労働組合がカギを握る地域公共交通確保・維持・改善…地域公共交通会議等でどうふるまうとよいか」を演題に基調講演。

加藤博和・名古屋大学大学院准教授の講演の場面より


 加藤氏は国交省の交通政策審議会委員を務めるなど、地域公共交通のプロデューサーとして著名な専門家です。辛口の問題提起で知られているといった方がよいかもしれません。私自身、氏の著作や資料には結構、目を通している一人です。
 
 冒頭から、長野電鉄屋代線の廃止~代替バス運行が取り上げられました。「廃線処理を敗戦処理に終わらせないために」、住民参加によって運行ルートや停留所の場所などを決めて代替バス運行計画を策定した経過が触れられました。
 法定協議会において過半数の議決で廃止を決めたことを「良し」とはしないが、「移動手段は鉄道だけではない。いかに住民に利用される移動手段を地域に確保するのかが課題」「公共交通崩壊は地域崩壊につながる。だから誰でも乗れる公共交通が必要なのだ」と指摘しました。

加藤博和・名古屋大学大学院准教授の講演の場面より。スライドは屋代線代替バスのチラシです。

 
 更に、地域公共交通会議の形骸化を指摘し、「“体たらく”状態を打開するためには、現場を一番よく知っている乗務員=労組代表の意見が活発に提起されなければならない。“自分も取締役会の一員である”と思って会議に臨むこと」と強調しました。
 具体的には、現場の状況を伝え、問題点と改善方法について、なるほどと思えるような具体的・実現可能な意見を述べること、公共交通にとって安全・安心が大切であること、それをどのようにすれば確保できるかを客観的に説明することがカギと述べました。

 労働組合には耳の痛い強烈な話もありましたが、「住民の移動手段を確保するために、現場力を発揮すること、そこに地域公共交通会議等における乗務員組織代表=労組代表としての責任は果たせない」との指摘は、その通りです。今後の奮闘に期待したいものです。

 長野市の新交通システムの導入、公共交通ビジョン策定などについて、相談に乗ってもらえる約束をしました。加藤氏は県内では、旧屋代線の代替バス運行の他、南信州地域の地域公共交通網の整備や駒ケ根市のデマンド交通にコミットされているそうです。
 市の交通対策審議会や法定協議会に参画している有識者の皆さんへの気兼ねもあるようですが、これから、専門的な知見を活用させていただきたいと考えます。

23日午前中のバス分科会。講演中の国交省の谷川仁彦・事故防止対策審議官


 翌23日には、22日の基調講演を受けて、バス部門、鉄軌道部門、ハイタク部門に分かれ、分科会や分散会が行われました。

 バス分科会では国土交通省自動車局安全政策課・事故防止対策審議官から「バス事業における新たな安全対策~ツアーバス事故を踏まえた新高速乗合バス運行について」、鉄軌道分科会では国土交通省鉄道局鉄道事業課長補佐から「地域鉄道の活性化に向けた取り組みについて」、それぞれ講演を受け、地域の公共交通再生の取り組みの事例報告などを交え、活発な意見交換が行われました。
 私は、バス分科会に参加。新高速乗合バス運行の課題等について学ぶことができました。

 分散会では、乗務員・運転手不足が共通の課題として指摘されていました。2~3年前までは、大都市の問題だったのですが、急速に全国に広がり、地方都市においても顕著な問題として浮上しています。長野県や長野市域においても同様です。会社側で支度金制度や大型2種免許所得合宿への補助金制度などを作っているところもありますが、会社の体力もあり、一様にはなっていません。バスを動かせる人材確保、喫緊の課題です。

道後温泉駅前で。手前が坊っちゃん列車、後方が通常の路面電車。


 羽田経由の飛行機往復で松山市を訪問。21日の午後10時過ぎに前泊で松山入りしました。21日は雪の中での長野マラソンでしたが、四国は穏やかでした。
 刺激的な2日間を過ごすことができました。一番は加藤准教授の講演です。 加藤氏の講演内容は、使用したパワーポイントが近々入手できますので、改めてポイント等を報告したいと思います。

道後温泉駅近くの坊ちゃん公園で。道後温泉本館の前にあります。


21日早朝の我が家の庭、降りましたね…。マラソン選手には気の毒な雪でした。

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