災害時における廃棄物処理とアスベスト(石綿)対策を考える【昨年12月議会の質問と答弁/5月19日公開学習会の案内】

アスベスト(石綿)リスクとは?

建設資材等に含まれるアスベスト(石綿)は粉塵を吸い込むと30年から40年後に肺がんや中皮腫などを引き起こすことから「静かな時限爆弾」といわれ、健康被害を防ぐことが大きな課題となっています。

アスベストは、ビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、S50(1975)年に原則禁止さ れました。その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。

アスベストは、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。

私は、R元年の台風19号災害において、災害ボランティアによる被災家屋の整理活動や住家の公費解体工事、さらに災害廃棄物の処理過程におけるアスベスト対策について、アスベストリスクに警鐘を鳴らすとともに、アスベスト粉塵対策の徹底を指摘し続けてきました。

➡災害時の指定仮置場「アクアパル千曲」のアスベスト含有建材の分別管理の様子

今日、大雨による甚大な災害が相次ぎ、被災からの復旧復興過程におけるアスベスト対策が十分に講じられること、また、老朽化した建築物の解体・更新がピークを迎える中、吹付や建材に含有するアスベストの飛散・ばく露による健康被害の発生が危惧され、的確な対策の早期具体化が問われています。

昨年9月には、R元年台風19号災害で、被災家屋のアスベスト対策に取り組んできた県アスベスト対策センターとNPO法人東京労働安全衛生センターの共催で「台風19号災害におけるアスベスト対策に学ぶ」報告・シンポジウムが市営長沼体育館で催され、被災地の市議の一人として携わってきました。長野市の後援もいただき、環境部からはパネラー派遣を含め全面的に協力いただいてきたところです。

9月3日、長野市をはじめ県内東北信に甚大な被害をもたらしたR元年(2019年)10月の台風19号災害における被災家屋のアスベスト(石綿)対策...

このシンポジウムでは専門家をはじめ長野市からも被災住民からも、大規模災害の経験を踏まえた課題として「平常時における準備が大切」が強調されました。シンポで出された意見等を踏まえ、昨年12月議会の代表質問に取り上げてきました。

5月19日に、県アスベスト対策センター主催で「災害時の廃棄物処理、アスベスト対策を考える学習会」」を計画していることから、論点整理の意味も込めてまとめてみました。

災害復旧・復興のプロセスでアスベストによる健康被害を発生させない!…6月8日、県アスベスト対策センター(代表=鵜飼照喜・信大名誉教授)の皆さ...
12月23日、長野県アスベストセンター(代表=鵜飼照喜・信州大学名誉教授)の台風19号被害建築物等のアスベスト調査に同行、災害廃棄物の仮置場...

案内:5月19日に災害時の廃棄物処理、アスベスト対策を考える学習会

長野県アスベスト対策センターでは、長野県と長野市に後援をいただき、2019年秋の台風19号発災後の被災地住民・長野市行政の災害廃棄物処理とアスベスト対応の経験に学び、その教訓を共有化することを目的に「災害時の廃棄物処理・アスベスト対策を考える学習会」を開きます。

県内77市町村の災害廃棄物処理を担当する部署にも参加案内状を送付し、広く参加を呼びかけています。ZOOMによるオンライン参加もOKです。是非、ご参加ください。

平時からの準備…石綿飛散調査の民間団体との協定や専門職員の育成は

昨年12月定例会の代表質問より、災害時におけるアスベスト対策について、答弁を中心にまとめました。下線・強調は筆者。

9月のシンポジウムでは、長野市から「災害時のアスベスト飛散防止の手順書の作成や飛散調査に関する業界団体との協定締結、専門技術職員の派遣制度の重要性」が指摘された。いずれも必要不可欠な課題。かかる課題の解決に向けた取り組みの進捗状況はいかがか。また、環境省の「災害時における石綿飛散防止に係る取扱マニュアル」の改定を踏まえた対応、専門的な職員の育成の取り組みはいかがか。

【環境部長】本市では、令和元年東日本台風災害時における対策として、国からの通知及び災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアルに基づき、被災家屋の所有者に向けた家屋アスベスト調査等を実施するとともに、災害廃棄物仮置場等でのモニタリング調査を継続して行った結果、基準経過は見られず、通常の一般環境と変わらない状況であったことから、適切に対応したものと考えている。しかしながら、事前の予測なしに突然発生する災害に対応するためには、議員指摘のとおり幾つかの課題を認識しているところである。

災害時の石綿飛散防止の手順書作成、業界団体との協定締結、専門技術職員の派遣については、国において、令和4年度災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル改訂検討会が設置され、11月30日開催の第2回検討会でマニュアルの実施責任主体、災害の段階に応じた工程、作業内容や手順、応急対応における技術者等が所属する企業団体等との協力体制の構築等について協議、検討が進められている。今後、国から示される改訂版マニュアルの内容等を踏まえ対応していく。

また、職員の育成については、環境省主催の建築物等の解体等工事における石綿の飛散防止対策技術講習会に参加し、専門的な知見の習得に努めており、今後も研修等の受講等を行っていく。

環境省の「災害時の石綿飛散防止の手順書」の改定内容を踏まえ対応するとの方針を示した答弁。専門的な知見が必要とされることから、「国の方針を踏まえた対応」は止むを得ないところですが、東京都の取り組みや熊本、岡山などの水害被災地の策定状況も検証して、実効性のある「手順書」にしていくことが大切です。長野市の「手順書」作成にあたり、県アスベスト対策センターや専門家との協議、意見交換を行いたいと考えています。

石綿含有建材レベル2・3のデータベース化を

吹付など危険性が最も高いレベル1アスベスト使用に関しては、台帳が作成されているが、アスベスト含有建材等のレベル2、レベル3についても、固定資産台帳や建築確認申請等を利用した建物データベース化を図れないか、見解を伺う。

【建設部長】断熱材や設備配管の保温材などに使用されているレベル2の建材、また屋根スレート、外壁サイディング、内装下地の石膏ボードなどに使用されているレベル3の建材については、いずれも一般的な建材として過去には数多くの建物に施工されていた。このため、0.1%を超えるアスベストの使用が原則禁止となったH18年(2016年)9月以前に着工された全ての建物にはアスベスト含有建材が使用されている可能性がある。

また、製造メーカーから一部の製品リストが公表されているものの、建物に実際に使用されている製品や製造時期を特定できないことが多いため、建築年を手がかりに必要な建材に絞って個別に確認する必要がある。

以上のことから、現状においてはレベル2及びレベル3のアスベスト含有建材が使用されている建物を特定し、データベース化することは難しいものと考えている。

なお、国においては、災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル改訂のための検討会議が設けられ、アスベスト含有建材が使用された建物の把握についても現在議論されているところであり、市としては、国の動向も踏まえながら、災害時も含めた解体作業時のアスベスト飛散対策について引き続き研究していきたい。

「引き続き研究」との答弁は、行政的には「意見として聞置く程度で先送り」という意味合いです。レベル2・3のアスベスト含有建材の管理台帳の作成は、実務的にハードルが高いことは承知していますが、国の動向に注視したいと思います。建設部長の答弁に関連し、「建築物に係るアスベスト対策の現状」を簡単に触れておきます。

➡R2年9月作成の「長野市建築行政マネジメント計画」の中で「建築物に係るアスベスト対策の取り組みと推進策」がまとめられています。

※アスベスト台帳=、平成17年に吹付アスベストの使用実態調査を行い、既存建築物のアスベスト対策が実施されてきました。 平成29年5月には、国の社会資本整備審議会建築分科会のアスベスト対策部会において、民間建築物における今後のアスベスト対策のあり方について提言され、優先的に把握すべき建築物のアスベスト調査台帳の整備を進めることとされました。

※レベル1の吹付アスベスト対策においては、新たに中小規模建築物を対象としたアスベスト台帳を作成し、実態把握に努めると共に、台帳を活用した啓発に取り組み、一定の成果が得られたとしています。

※「建築物に係るアスベスト対策の推進」については、下記のように記されています。

災害ゴミの分別基準や仮置場の拡大、勝手置場の在り方に明確な指針を

災害廃棄物処理計画は地域防災計画の改定を踏まえ、見直しを図るとされている。地域防災計画において、アスベストリスクの課題を対応の基本を明記するともに、災害廃棄物処理計画において、アスベスト対策を明確に位置づけることを提案する。

また、災害時における廃棄物の分別について、国が9分別を指導する中、混乱する現場では6分別で合意してきた経過がある。災害実態に即した分別基準、水害や地震など災害態様に応じた災害廃棄物の仮置場の指定の拡大(現在、37カ所)を図ること、地域における「勝手置場」の在り方の整理等が必要である。市の認識と対応は

【環境部長】現在、市民意見募集中の長野市地域防災計画の改定案における災害廃棄物処理については、災害廃棄物処理計画に基づき対応することを記載している。現在の災害廃棄物処理計画の処理方針の中で、アスベストなどを含む有害廃棄物は廃棄物処理法の規定に基づき適正に処理することが明記されていることから、地域防災計画の改定案には記載していない。なお、資料編には災害廃棄物処理計画の全文を掲載する予定。

災害時のアスベスト対策を含め、廃棄物の種類に応じた処理方法や留意事項等については、R5年度に予定する災害廃棄物処理計画の見直しの中でより明確に位置づけていく。

議員指摘の災害実態に即した災害廃棄物の分別基準、災害対応に応じた仮置場の指定及び市民設置の仮置場、いわゆる勝手置場の対応についても、災害廃棄物処理計画の見直しにあたり大変重要な検討課題と認識している。

令和元年東日本台風災害の対応では、災害廃棄物の分別については、当初9分別をお願いしたが、甚大な被害を受けた地域においては、被災者の負担感を考慮し、一時的に6分別とした経過がある。また、仮置場に関しては、地理条件等を勘案した適地を選定する中で、青垣公園運動場やアクアパル千曲など、災害廃棄物処理計画に掲げた候補地以外の場所にも開設した実態がある。 一方、被災者の被災した家財を一刻も早く片づけ、生活再建を進めたいとの心情から、市民設置の仮置場が多数設置された。市民設置の仮置場にはあらゆる種類、性状のゴミが分別管理がされない状態で集積され、火災発生の危険性や周辺の生活環境への影響が懸念されたことから、早期解消に向けて自衛隊との連携作業、「One NAGANO」が実施されたところである。

今後は、これらの経過や経験等を十分に考慮しながら、仮置場の抜本的な見直しや迅速な処理のスケジュール調整、そのための体制づくりなど、適正かつ迅速な処理に向けて有効な災害廃棄物処理計画の見直しを進めていきたい

➡地域防災計画の改定を踏まえ、R5年度に予定する「災害廃棄物処理計画」の見直しにおいて、「アスベスト対策をより明確に位置付ける」との前向きな姿勢が示された点は評価します。しかし、一方で災害実態に即した分別基準、水害や地震など災害態様に応じた災害廃棄物の仮置場の指定の拡大(現在、37カ所)を図ること、地域における「勝手置場」の在り方の整理等は、これからです。

➡災害廃棄物の処理に関して、関連資料として➊「東日本災害対応の検証報告書」にまとまられた課題と改善策、➋改訂版の地域防災計画における災害廃棄物処理の記載部分、➌現行の災害廃棄物処理計画のポイント、➍仮置場の手引き(勝手置場の課題)を掲載しました。若干コメントを入れていますが、課題の整理を進めたいと思います。

資料1=東日本台風災害対応の検証報告書(82P)「災害廃棄物」の箇所より

 (1)概要

被災家庭から出される災害廃棄物を受け入れるため、災害廃棄物仮置場を設置したが、それ以外の複数の場所にも災害廃棄物が持ち込まれたため、関係機関、応援自治体、ボランティアなどの協力を得て処理にあたった。 また、災害廃棄物仮置場からの災害廃棄物の撤去は、自衛隊や他市の応援を得て行われた。

(2)今後の災害対応につなげられる点

  ア 早朝、深夜、休日での作業に、全庁的に職員を要請し対応を行った。  イ 仮置場の設置が完了した段階で、職員による進入道路等の定期清掃、道路清掃車両の巡回清掃により、粉じんの発生を防いだ。  ウ 仮置場での災害廃棄物の荷下ろしは時間を要すことから、場内を一方通行とし、まとまった人数のボランティアに荷下ろしを協力いただき、道路渋滞も一定程度に抑えることができた。  エ 災害廃棄物の仮置場周辺部において、大気汚染、騒音、粉じん、大気中アスベスト濃度及び悪臭の調査を実施し、現況を確認した。  オ 災害廃棄物の仮置場の管理を民間事業者へ委託したことで、他の優先的な災害対応業務を行うことができた。

(3)課題と改善策

ア 災害廃棄物仮置場の設置を速やかにする必要がある。

【改善策】 ・被災者は、水が引いた直後から片付けをして災害廃棄物を出し始めることから、平常時から設置に必要な物品(コーン、バー、誘導棒等)や仮置場候補地の災害時利用について調整を行う。

イ 災害廃棄物仮置場は、土のグラウンドのため、雨によりグラウンドの状態が悪くなり車両が動けなくなることから、鉄板や砕石を敷設する必要があるが、鉄板の確保が困難であった。

【改善策】 ・設置に必要な資機材やオペレーター付き重機について、平常時に協定等の準備を行う。

ウ 災害廃棄物の仮置場の候補地として河川敷運動場が指定されているが、河川の増水及び運動場への浸水により仮置場を設置することが困難であった。

【改善策】  ・今回の仮置場の設置場所である篠ノ井運動場、青垣公園運動場、(県の協力による)アクアパル千曲を参考にして、候補地として指定されていない場所でも、被害がなく、被災地域からそれほど遠くない場所を仮置場として開設する。

エ 災害廃棄物仮置場(一次)を被災地区に身近なところに設置する必要がある。二次仮置場への搬出や悪臭等の衛生面への配慮から、被災地区から若干離れた位置に一次仮置場を設置したが、被災者は仮置場でない身近な場所へ搬出を始めた。

【改善策】 ・被災地区に身近な場所への一次仮置場の設置とともに、若干離れた場所への設置も実施し、仮置場の分散と仮置場でない場所への搬出防止を図る。

オ SNSなどで誤った情報を得て、災害廃棄物仮置場に指定していない支所等に災害廃棄物を持ってきたり、受入れ時間や分別方法を理解していない方がいた。

【改善策】 ・庁内で仮置場の場所、受入れ時間、廃棄物の分別方法などの情報を共有するとともに、SNSを含めて正確な情報発信を行う。

カ 職員が災害廃棄物の作業をする場合の安全対策が必要である。

【改善策】   ・災害廃棄物を扱う職員には、破傷風予防接種を実施し、現場における安全対策のため、防護服、ゴーグル、手袋、アスベスト対応防塵マスク、踏み抜き防止用中敷き等を装着できるよう、必要な物資等の備蓄を行う。

キ 処理困難な廃棄物が多く、処分先が確保できないところへ、短時間に大量の廃棄物が搬入されたため、仮置場の運営が常にひっ迫していた。

【改善策】   ・平常時に民間処理業者との協定等の準備を行う。 ・重機により廃棄物を整理することで保管量が増えるため、オペレーター付き重機の確保について、平常時に協定等の準備を行う。 ・廃棄物の分別がされていれば、処理できる事業者が増えることから、平常時から市民へ災害廃棄物の分別方法について周知を行う。

ク 災害廃棄物仮置場での市民の活動はできないが、ボランティアに活動させてしまった。

【改善策】・業務委託を行うなどにより作業員を確保し、ボランティアに活動を依頼しない。 

(4)検証

災害廃棄物仮置場の候補地は、平常時から災害時利用の調整を行い、災害発生直後に災害廃棄物仮置場を設置するとともに、早急に広報する必要がある。

災害廃棄物仮置場の候補地として指定している河川敷運動場については、増水時に迅速に廃棄物を撤去することが困難であることから、仮置場の候補地から外すとともに、候補地となっていない場所を含め、候補地を見直す必要がある。

 赤沼公園は、災害廃棄物仮置場の候補地として指定されていたが、水が引いた直後から大量の未分別の廃棄物が持ち込まれてしまい、仮置場とすることは困難であった。 複数の仮置場の同時開設及び運営、大量の災害廃棄物の処理には、国や県のほか事業者の協力が必要であり、多くの職員などの人手も必要となることから、必要な物資等の備蓄を含め、地域防災計画の記載を修正、明確化する必要がある。

資料2=改訂版・地域防災計画より

R4年度において、防災アセスメントの調査結果、災害対策基本法の改定、東日本台風災害対応検証報告などを踏まえ見直された計画。R5年度から執行。

地域防災計画改定の趣旨と修正点(221108時点)

第2 災害廃棄物処理

1 災害廃棄物処理体制の確立

 (1) 組織体制

環境部は、「長野市災害廃棄物処理計画」に基づき、必要に応じて部内に環境部長を長とする長野市災害廃棄物対策調整会議を設置し、廃棄物処理活動全般を指揮統括する。

 (2) 災害廃棄物処理実行計画の作成

環境部廃棄物対策班・生活環境班は、災害廃棄物の発生量、処理体制、処理スケジュール、処理方法、処理フロー等を具体的に示した災害廃棄物処理実行計画を策定し、災害廃棄物を処理する。 なお、次の表にある生活ごみ及び避難所ごみ並びに事業系一般廃棄物は、長野市一般廃棄物処理実施計画で定める方法で処理する。

〈災害時に発生する廃棄物〉

区分

内容

災害廃棄物

被災した住家を片付ける際に排出される片付けごみ(一般家庭から排出されるもの)と、公費解体に伴い発生する廃棄物がある。 木くず、コンクリートがら等、金属くず、可燃物、不燃物、廃家電、廃自動車等、腐敗性廃棄物、有害廃棄物、その他適正処理困難物に区分する。

生活ごみ

家庭から排出される生活ごみ、粗大ごみ

避難所ごみ

避難所から排出される生活ごみ

事業系一般廃棄物として管理者が処理するもの

し尿

仮設トイレ(災害用簡易組み立てトイレ、レンタルトイレ及び他市町村・関係業界等から提供されたくみ取り式トイレの総称)等からのくみ取りし尿、災害に伴って便槽・浄化槽等に流入した汚水

➡アスベストは「有害廃棄物」にくくられ、その処理は「災害廃棄物処理計画」及び「同実行計画」によるとする。

2 災害廃棄物の処理

 (1) 仮置場の設置

災害廃棄物は、排出時に分別を徹底し、可能な限り資源化を推進することにより、処理・処分量を軽減する。 環境部生活環境班は、災害廃棄物の排出場所として被災地域内の空地等に一時的な集積所である「近隣仮置場」を設置する。

また、環境部廃棄物対策班は、近隣仮置場の排出量等の状況に応じて、一定期間、分別・仮置き・選別・破砕等を行うための一次・二次仮置場を設置する。

➡台風19号災害で「赤沼公園」は当初「勝手置場」とされ、1か月後に「指定仮置場」に位置づけ直しされた経過がある。一次的な集積所として「近隣仮置場」が新たに位置付けされたものだが、災害前から国では使用されていた表現でもある。「勝手置場」との違い、区分はどのようになるのか?「検証報告書」との整合性を確認必要があろう。

 (2) 収集・運搬処理

環境部生活環境班は、生活ごみの収集運搬を継続するため、ごみ収集車及び収集作業員を確保する。 また、被災地や近隣仮置場からの収集運搬体制を速やかに確立するため、協定に基づき長野市委託浄掃事業協同組合へ協力要請する。処理能力・収集体制が不足する場合は、災害廃棄物中部ブロック広域連携計画に基づく要請を行う。

3 広報・相談

環境部環境保全温暖化対策班・生活環境班は、企画政策部広報広聴班を通じて、収集方法・分別・排出抑制・平常時収集体制への見通し等について広報するとともに、自主防災組織単位のごみの集積を住民・事業所等へ呼びかける。 また、住民からの問合せ等について対応する。

4 事業系廃棄物処理の支援

環境部廃棄物対策班は、事業者の産業廃棄物等の処理事業者あっせん、作業の指導等を行う。

  ➡廃棄物処理に関する部分の新旧対照表(拡大してみてください)

資料3=現行・災害廃棄物処理計画(71P・79P)・災害廃棄物処理」実行計画より

災害廃棄物処理計画概要版より

★「適正処理困難物の処理方針」において、「アスベスト等の有害廃棄物は、排出者の責任において適正な処理を行うよう指導」と記載。

★「分別・減量化・再利用等」においては、「アスベスト等含有物質は所定の指針に基づく適正処理の徹底」とのみ記載。

【仮置場における9分別方針…災害廃棄物処理実行計画より】

(2)仮置場    被災現場で発生した災害廃棄物を仮置きする場所として設置する。仮置場では搬出者自ら若しくは仮置場管理者が手作業または重機等で、不燃物、金属くず、危険物(石膏ボード、スレート、消火器、バッテリー、乾電池、農機具)、タイヤ、木くず、家電、畳、可燃性混合物、土砂混じりがれきの9品目に分別し、仮置きする。 

➡災害廃棄物の「9分別」は国の方針で。この「9分別」できていることで補助金の対象となる。このため、応急処理とはいえ、例えば「6分別」を推奨できないという自治体のジレンマがあるといえる。

➡アスベスト対策の明示化という観点からは「危険物(石膏ボード、スレート…)」との分別基準は曖昧さが残る。石膏ボードやスレートがなぜ危険物なのか、そのリスクを明示化する必要があろう。住民へのリスクの周知という点からも改善が必要である。

➡災害廃棄物処理計画の資料編では、「仮置場の区分…注意すべき個別品目」の中で「廃石膏ボード・スレートはボード類として混合しない」「石綿含有かどうか手選別となる」と注意喚起されてはいる(下記)。資料編ではなく本編での特記が必要である。

【資料編:仮置場の設置・運営の留意事項】

【資料編:仮置場候補地・37ヵ所】

資料4:災害廃棄物の仮置場に関する「手引き」等

R2年3月環境省中国四国地方環境事務所がまとめた「一次仮置場設置運営の手引き」より抜粋(ネット検索の結果。環境省ページを調査したうえで改訂予定)。倉敷市などでの水害の経験に基づきまとめられたものと思われます。仮置場の定義と勝手置場の対策等がまとめられています。福岡・広島・滋賀など県単位でまとめている自治体もありますが、長野県は未作成と思われます。

この「手引書」からは、いわゆる「勝手置場」の実態と課題は長野市の被災以前から問題となっていたことが伺えます。勉強不足でした。今後、さらに「環境省・災害廃棄物対策指針」及び「技術資料」をきちんと調べたいと思います。

いずれにしても、災害廃棄物処理の根幹をなす「幹」を見ながら、「枝」となるアスベスト対策を考えることが重要であることを改めて痛感しています。

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