ミャンマー民主化を支援する信州の会が発足

ミャンマーで軍がクーデターを起こしてから8月1日で半年

ミャンマーでは去年11月の総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏率いるNLD=国民民主連盟が圧勝しましたが、国軍は選挙に不正があったとして今年2月クーデターを起こし8月1日で半年となりました。軍政に抵抗する市民に対する軍の弾圧で死者が増え続けていることに加えて、新型コロナウイルスの感染が急拡大し、混乱と混迷は深刻化する一方となっています。

ミャンマー国軍が設置した最高意思決定機関「国家統治評議会」は1日、議長で国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官を首相とする暫定政府を発足させたと伝えられています。総司令官はクーデターから半年に合わせた国営テレビでの演説で、非常事態宣言終了後の2023年8月までに再選挙を実施すると表明、東南アジア諸国連合(ASEAN)の特使を受け入れる姿勢も示したとされます。

そもそも軍事クーデターには正義も道理もありません。クーデターにより民主化勢力を残虐な弾圧で封殺しようとする暫定政府を認めることはできません。国際社会の道理のある正しい対応が求められるところです。

「日本政府は国軍の暴挙を止めるための具体的な行動を」…20市民団体が共同声明を発出

8月1日、NGOメコン・ウォッチなど20市民団体が「日本政府は国軍の暴挙を止めるための具体的な行動を」の共同声明を発出しています。紹介します。

210801「共同声明」【PDF】

共同声明PDF版はこちら 【共同声明】ミャンマー:クーデターから半年日本政府は国軍の暴挙を止めるための具体的な行動を 2月1日にミャンマーで国軍によるクーデターが発生してから、半...

ミャンマー民主化を支援する信州の会が発足

さて、7月17日、長野市内で「ミャンマー民主化を支援する信州の会」の発足総会が開かれました。2週間以上経ってからの報告です。

長野市出身でミャンマー人と結婚した東京在住の知人女性からの支援の呼びかけをきっかけに、「ミャンマーで今、何が起きているのか」緊急学習会を催し、ミャンマー国軍の軍政に不服従で抵抗し民主化を求める民衆を継続的に支援しようと発足したものです。

代表に若麻績敏隆さん(白蓮坊住職)

ZOOM併用で開いた総会には、在日ミャンマー人や市民ら約70人が出席。代表に就いた善光寺白蓮坊(びゃくれんぼう)住職の若麻績敏隆さんは「ミャンマー問題に取り組むことで、少しでも状況が改善し民主化に向かうきっかけにしたい」と挨拶しました。

ミャンマー民主化支援カンパや政府への要請活動など展開へ

今後、ミャンマー民主化活動へのカンパをはじめ県内各地での報告会・学習会、県内在住ミャンマー人との情報交換・連携、日本政府や国会に対しミャンマー軍政に加担しないよう求める署名や要請行動、県内自治体・議会への働きかけを行っていくことなどを確認しました。

佐藤友則・信大教授が「ミャンマー事情と日本の多文化共生」をテーマに講演

総会では、信州大学グローバル化推進センター教授の佐藤友則さんが「ミャンマー事情と日本の多文化共生」をテーマに記念講演。佐藤教授は、ミャンマーからの留学生やミャンマーに帰国した同窓生との交流や支援を続け、ミャンマー民主化支援のためのクラウドファンディングにも取り組まれています。

弾圧続くミャンマー…コロナ・ワクチンも軍が独占、深刻な医療崩壊

軍事クーデターから5カ月以上経つ中、政治犯支援協会の調べで死者が881名、拘留者6,370名、逮捕状が出された人は1,966名にも及び、実際にはこの数字を上回る弾圧が行われていること、医療機関が機能せず、コロナ感染が急速に拡大・深刻化し、軍が酸素ボンベ製造工場を攻撃・閉鎖するとともに酸素ボンベやワクチンを独占、協力者にのみに接種等を実施、コロナ感染を利用して抵抗を抑止しようとしていること、20万人以上が新たに国内で家を追われ、さらに数万人が国境を越え難民となり、隣国への避難を強いられているものの難民キャンプでの医療が禁止されているなど、極めて劣悪な生活環境にあることを報告。

絶対的権力をもつ国軍…「軍に従わないものは犯罪者」

また、ミャンマーの現代史を振り返りながら、国軍の特異な存在とクーデターの世界への悪影響を指摘。

2015年のスー・チー氏の国民民主連盟(NLD)が政権をとるまでは、「国軍が国民の父であり母」であり、国軍は一般市民社会と隔絶され、市民生活のことはまるで知らないこと、貧困で行き場をなく幼少期から軍隊に入った軍人は、軍隊がすべて、軍に従わないものは犯罪者であると刷り込まれて国軍が成り立っていること、一方、2015年以降、「スー・チー氏が国の母」になり、国軍の国民に対する影響力が低下するなか、巨大な権力と莫大な富を手にする軍関係者が自分たちの権益の維持を最優先し、クーデターを起こしたとクーデターの原因を指摘。

若者たちは「絶対に元に戻さない強い意志で軍に立ち向かう」

しかし、民主化の中で育ったミャンマーの若者たちは「絶対に元に戻さない強い意志で軍に立ち向かっている。どんなに弾圧されても諦めない」と指摘、国内でデモ、募金やチラシ配布等の活動を継続し、メディア報道・情報発信に結びつけ、国民の関心を呼び起こしていくこと、「忘れていない」と民主化支持の声を上げ続けることが重要だと強調しました。

さらに、ミャンマーから日本への技能実習生希望者が急増する中、国内・県内で移民社会化が進むことを見据え、私たちが「共生」に向き合うことの重要性、クーデターが成功すると、世界の民主主義がさらに後退し、日本にも悪影響を及ぼすことを見極め、政府に正しい対応を求めていくことの重要性を強調しました。

とても分かりやすくミャンマーの歴史と現状、ミャンマー民主化支援の意義についてお話しいただきました。

ミャンマーの子ども支援を続ける団体や信大生が取り組みを報告

➡活動報告では、佐藤教授のもとで多文化共生を学ぶ信州大学2年生の小古井遥香さん(松本市在住)が、多文化共生イベント「こいこい松本」で「ミャンマー問題」を話し合うブースを設け、ミャンマー支援の交流を行ったこと。

➡20年以上にわたりミャンマーの子どもたちの教育支援を続けている「アジア子ども交流支援センター」の青木正彦さん(長野市在住)からは、ミャンマーに文房具などの学校用品を送る際に現地の人々が「良いことは手伝わせてください。手伝わせてもらってありがとう」と応じてくれる、「ミャンマーは感謝の国」と強調しながら、日本文化との違いを話していただきました。

➡さらに、ミャンマー労働者など外国人労働者に連帯する活動に取り組んできた小山正樹さん(上田市在住)からは、労働組合の歴史を知らないミャンマー労働者に団結して権利を守ることの重要性を広げ、民主化が進むミャンマーでも労働組合の組織化に取り組んできたこと、そして今日、軍政の弾圧の中で民主化を支援する活動に取り組んでいることが報告されました。

ミャンマー現地から「今」を報告…「国軍を利する資金提供を止めて」

ミャンマーのヤンゴン在住でエンターテイメント会社を経営する新町智也さんがオンラインで参加。

「ヤンゴンに7年。コロナの打撃は大きく、20人いた社員も縮小の一途で存続が厳しい状況。コロナ前の3,500人いた日本人は今は300人位に。最初はクーデターは他人事だったが、数百万人の人がデモに参加する中、我が家に催涙弾が撃ち込まれる事態で、外国人も安心ではないと痛感した。何とか、この地に残ってできることはないかと仲間たちと考える毎日」と話し、「日本で、ミャンマー軍に利するような税金の使い方を改めさせ、食料や医療の人道的支援などミャンマー国民のためにこんな税金の使い方を提案してもらいたい」と訴えました。

「小さな声に耳を傾けて!支援を広げて!」

支援する会発足のきっかけとなった長野市出身の女性は、「私のような小さな声に耳を傾けていただきありがとうございます。あと何人なくなれば国際社会は動いてくれるのかと思っていたが、今は自分たちが動くしかないと思っている。日本政府にはNUGの新政府を認めてほしい。長野にも207人のミャンマー人がいる。声を聴いてほしい。メディアの記事になるような活動を広げ、日本の皆さんの支援を広げたい。18日にはデモが全国各地で行われる。声を上げ続けたい」と訴えました。

在日ミャンマー人の方からも「コロナ禍でも国軍は国民の拘束を止めていない。マスクや消毒液を民衆から取り上げている。不服従の抵抗運動を支えるために、政府にNUGの新政府を認めるよう働きかけてほしい。生活を支援する寄附を広げてほしい」との切実な訴えが相次ぎました。

ミャンマーの今に関心を持ち続け、ミャンマーの民衆と一緒に一日も早く民主化を実現したい!心打つ集いとなりました。

8月11日に支援する会の運営委員会が予定されています。具体的な取り組みを相談します。これからです。

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