うつ病経験者の声を聴く…安茂里地区人権の集い

安茂里公民館で開かれた人権を考える住民の集い。要約筆記で内容が伝えられました。

 21日、安茂里公民館で住民自治協議会主催による「安茂里地区人権を考える住民の集い」が開かれました。今年度のテーマは「障害がある人も、ない人も、ともに暮らすまちづくり」で、障害をもつ当事者をパネラーに体験談を聴きながら、考えようとの趣旨です。

 長野市社会事業協会に属する長野市障害ふくしネットの伊藤さんがコーディネーター役で、精神障害者の当時者会である「NPO法人ポプラの会」に所属する、安茂里在住の穂苅由香里さん、社会事業協会が運営する知的障害者のグループホーム、「小市ホーム」で生活する皆さんがパネラーに。

体験談を話す「ポプラの会」の穂苅さんと「小市ホーム」の大日方さん。

 穂苅さんは、重度のうつ病の経験者で、現在は寛解(病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態)を経て、リカバリー(回復)し、ソーシャルワーカーの経験を活かし、精神障害者の当時者会の「ポプラの会」で活動しています。
 「精神障害は怖いという偏見が根深く残っている。特に家族の偏見が強い」と述べたうえで「重度のうつ病で入院することになった時に、夫から『情けない』と吐き捨てるように言われた」と振り返ります。今は夫も自分を受け入れて支えあっているとのことです。
 子育てが落ち着いた頃からソーシャルワーカーの仕事に就き、責任ある仕事を任されていましたが、信頼する同僚が辞めたことから、一人で仕事に没頭することに。「ある日突然に大量の書類を前に張りつめていたものがポッキリと折れ」(穂苅さん談)、仕事に力が入らず、軽症のうつ病と診断。投薬治療で回復し、異なる職場でワーカーの仕事に戻ったものの、パートナーが病休となり、一人で仕事を背負込むことになり、今度は重度のうつ病で仕事を辞めることに。
 「自分は責任あるソーシャルワーカーの仕事をやめてしまったダメな人間。死にたい…」と自殺願望に苛まれる苦しい日々を送ったことを告白します。しかし、「子どもを残して自殺はできない」と長期入院の末に回復し、その後、作業所の所長の理解あるアドバイスから「ポプラの会」の創設に関わり、「当事者経験のあるソーシャルワーカー」としての自分の居場所を見つけることができ、今日に至るそうです。

穂苅さんが紹介したスライドより

 「精神疾患は脳の中のアンバランスによる病気、精神障害は落ち込みやすく疲れやすい、このことを偏見を持たずに理解してもらいたい、早期発見・早期治療が大事」と訴えました。
 また、治療にあたっては「クリニックが増えているものの、待ち時間が長く、話をじっくり聞いて治療するということが難しく、薬の処方に偏りがち。地域の保健センターの保健師さんに話を聞いてもらうことがまず重要」と指摘しました。

穂苅さんが紹介したスライドより。

 小市ホームは、障害者が地域の中で当たり前に生活できる施設に位置づけられるグループホームで、安茂里小市団地の一角で4人の障害者が共同生活をしています。参加した4人の皆さんから、生活ぷりを話してもらいました。地域の方やヘルパーの共同生活援助を受けながら、それぞれ、ホームから事業者や授産所の仕事に通っています。
 春原さんは、篠ノ井の授産所に通っていますが、毎日、小市団地からバスでJR安茂里駅に向かい、そこから電車に乗って篠ノ井駅へ、さらにバスに乗り換え授産所へ。電車に乗るのが好きで、遠い篠ノ井まで通っているそうです。ホームでの生活費は障害年金に依りますが、2級で月額6万3千円ほど、1級でも月額9万5千円。授産所の工賃が低いため、交通費が障害者で半額になるとはいえ、負担が大きいことが問題だとします。授産所での仕事の確保、工賃の保障、さらに交通費への支援などが課題となっています。

 安茂里地区の人権の集いは、ここ数年、「部落差別」をテーマに催されてきましたが、今回は、障害を持つ当事者の皆さんの生の声を聴き、障害者とともに、認め合い、支えあい、地域の中でともに暮らすことを考える、素晴らしい企画でした。

 来賓挨拶で私は、今年度から向う10年間の新しい障害者基本計画が策定されたことに触れつつ、「障害者に対する無理解による偏見と差別が残っている現実を直視し、障害を個性として認め合い、人間として尊厳しあい、お互いに支えあって生きる、あったかい地域社会を一緒に創っていこう。また障害者に対する差別をなくすための条例(障害者差別禁止条例)の制定に向けても力を入れたい」と述べさせてもらいました。

 夕方からは、長野地区労働者福祉協議会と川バス労組北部分会の新年会を梯子。長野地区労福協の新年会は、連合長野・長野地協が中心なのですが、主催者側からは、大震災の復興支援・ボランティアの取り組み、連帯の重要性が語られたものの、労働者を取り巻く環境の厳しさ、非正規雇用の問題、春闘の闘い、雇用・労働条件の確保、地域の政策課題など、労働組合としての役割と課題が大いに語られなかったこと、来賓であいさつした樋口・長野市産業振興部長だけが「雇用の確保の重要性」を指摘したことが印象的でした。労働組合が委縮してしまっていては、社会を変革する力に足り得ないと思ってしまいます。労働現場でしっかり存在感を発揮することを期待したいですね。