長野県「公契約」条例の行方

 19日、連合長野主催の「長野県公契約条例制定に向けた推薦自治体議員との懇談」に参加。
 県が発表した『「長野県が行う契約」に関する条例化の考え方の検討案』(以下、『検討案』)について考察と対応を考える意見交換会です。

連合の須田・総合労働局長。「県条例は理念条例、課題は多い」と指摘。その通りです。

連合の須田・総合労働局長。「県条例は理念条例、課題は多い」と指摘。その通りです。


公務労協の花村副事務局長。全農林所属で長野県の出身、古い友人の一人です。久々の再会でした。

公務労協の花村副事務局長。全農林所属で長野県の出身、古い友人の一人です。久々の再会でした。

 連合・総合労働局の須田孝局長が「公契約法・公契約条例制定に向けた連合の取り組み」を、公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)の花村靖副事務局長が「公共サービスキャンペーンの取り組み」を提起。
 また、県議会議員から「県が示した条例化の検討案についての対応」が報告されました。

 公契約条例は、自治体発注の建設工事や委託業務などに従事する労働者の賃金について下限額を設け、賃金・労働条件の確保を図ろうとするものです。
 公正な競争、公正な労働を実現する観点から、自治体発注の仕事にワーキングプア―をつくらず、公共サービスの安全と質の確保を図ることを狙いとしています。
 千葉県野田市を皮切りに川崎市、相模原市、多摩市、渋谷区、国分寺市、厚木市など9市・区で制定されています。

 阿部県知事の公約に端を発した「長野県公契約条例の制定」は、現在、県の技術管理室がまとめた『「長野県が行う契約」に関する条例化の考え方の検討案』に沿って検討が本格化しています。
 県が策定を進めようとする条例は、「事業者に対する労働者の適正な賃金の支払い」を主目的とした先行自治体の公契約条例とは異なり、理念条例に止まっていることが課題として上げられます。
 「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講じるよう努める」と定めた公共サービス基本法の施行条例的な側面が強くにじみ出ているように感じます。
 とはいえ、企業・事業者の社会的責任に言及し、総合評価落札方式における加点システムの拡充など、一歩前進となるものとは言えます。

 検討案では、県下行う契約に関する事項について意見を聴くため第三者委員会を設置することにしています。賃金下限額も、この第三者委員会に諮るものとされていますが、第三者委員会の権能については、明確な定義が公表されていません。
 賃金下限額、適正な賃金支払いの実効性がどのように担保されるのか、第三者委員会に調査権限を付与するのか、労働者側委員が構成員となるのか等々、県議会での議論に期待したいと考えます。
 また、建設労連から指摘された「労働者の範囲が明確でない。一人親方を含め対象とする条例を」との意見も重要です。

 9月市議会の一般質問で私は、大規模プロジェクト事業に関連し、設計労務単価引き上げの実効性の確保について第三者機関によるフォローアップを含め、質問しました。

 財政部長は「元請けと下請け間で締結された請負代金額の見直しや労働者の賃金水準の引上げ等について適切に対応してもらえるよう文書で要請しているところで理解が得られていると考える」と述べるにとどまりました。
 文書で要請すれば適正な賃金が確保されるとの考えには、呆れてしまいます。一般論ですが、何故、ブラック企業が絶えないのか、行政は真剣に考えるべきでしょう。“性善説”では解決しません。

 また、この質問に関連し、公契約条例制定の考え方も示されました。「県の検討案は他都市の公契約条例の方向性とは異なる」との認識を示したうえで、「賃金や労働条件は関係法令によって決定されるべきと考えるが、引き続き県をはじめ他都市の状況を注視しつつ、方向性を検討していく」と述べ、従来の考えを繰り返すにとどまりました。

 今後、県が策定する条例が「鍵」となりますが、県条例ができれば市町村は県に準じることになってしまい、市町村条例の発展形を阻害することになります。

 いずれにせよ、自治体発注の建設請負契約や業務委託契約において「事業者に対する労働者の適正な賃金の支払いを確保」する「公契約条例の原点」を活かしていくことがポイントです。

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