長野県森林づくり県民税と国の森林環境税

8日、長野市内で社民党の自治体議員団政策研修会が催され参加しました。

今年の研修テーマは、
➊「県森林づくり県民税と国の森林環境税・森林環境譲与税(仮称)について」、
➋松本地区でNPOとして取り組まれている総合的な労働相談事業「ユニオンサポートセンターについて」、
➌「上田市における子ども・子育て支援事業について」の3つでした。

研修会の後は、6月議会の取り組みの報告・交流を行い、その後は暑気払いに。

研修会の最中に翁長県知事の急逝のニュースが飛び込んできました。追悼の暑気払いとなりました。

森林づくり県民税や環境森林税については、長野県林務部森林政策課の福田雄一課長からレポートしていただきました。備忘録として簡単にまとめました。

森林づくり県民税が5年間継続へ…里山整備など市町村に有効な施策展開を

大北森林組合の補助金不正受給問題が発覚し、森林づくり県民税の継続の賛否が分かれる中、長野県は継続を決定し、H30年度から5年間の第3期が始まっています。

第3期森林づくり県民税では、「基本方針」を定め、「防災・減災」や「住民等による利活用」のための里山整備をはじめ、森林の多面的な利活用を推進するとされます。

個人県民税に県民一人当たり年額500円、法人県民税では均等割り額の5%程度の超過(上乗せ)課税を課す森林づくり県民税は、年間で約6.7億円の税収を見込みます。

県では2期までの残余金5.2億円を基金にし、H30年度では基金からの取り崩しを含め7.5億円の事業を予算化しています。

森林税の不正利用の再発防止と税の運用の透明性を高めるため、第三者機関を設置し検証することになっています。

➡長野県の森林づくり県民税のページ

長野市においても森林づくり県民税は 間伐事業や松くい虫防除対策事業、鳥獣被害対策のための緩衝帯整備事業等に活用されてきていますが、計画面積等の事業採択要件による制約もあり、森林税が十分に活用されないことが課題となっていました。

第3期にあたり、里山整備をはじめ市町村が使いやすい税の運用が図られるべきです。新しい事業スキームが市町村にとって有効に作用するのか

チェックしたいと考えます。

とくに、「住民等による利活用」では、地域住民が地域協議会を立ち上げ、里山整備利用地域として県から認定されることが必要となっています。県では5年間で150地域の認定をめざすとしています。長野市内で該当し活用できる仕組みとなるのか、私自身の調査も必要です。

国が年間1000円の森林環境税を導入、課税はH36年度から

一方、国では、国民みんなで森林を支えるため、H31年度税制改正で、国税として森林環境税及び森林環境譲与税(仮称)を創設するとしています。国民一人当たり年額1000円で、H31年10月には消費税率10%への引き上げや東日本大震災の復興財源の確保のため住民税均等割の税率引き上げ(1000円)がH35年度まで行われていることを考慮し、H36年度からの課税とする考えです。

初年度は約300億円の税収、平年度ベースで約600億円の税収を見込みます。

県と市町村に譲与税として交付

森林環境税は、地方の固有財源とし、その全額を状税特別会計に直入したうえで、市町村と都道府県に対して、森林環境譲与税として譲与(交付)、市町村が行う干ばつや人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発と馬の森林整備及びその促進に関する費用に充てることになります。

また、都道府県に対しては市町村による森林整備に対する支援等に関する費用に充てることになります。

H31年度で、長野県には1.2億円、市町村には5.0億円が譲与される予定とのこと。H34年度からは県に1.9億円、市町村に7.4億円と増額し、H45年度以降は県に1.9億円、市町村には16.6億円と試算されているようです。

市町村に厚く配分されることになりますが、77市町村への配分を考えると、長野市にとってもさほど大きな財源とはならないような気がします。

森林環境税の前倒しで「新たな森林管理システム」をスタート

今年5月には、新法である「森林経営管理法」が成立し、H31年度から林業の成長産業化の実現と森林資源の適正な管理の両立を図る森林管理制度がスタートします。

以下は林野庁の説明から引用。

我が国の森林の所有は小規模・分散的で、長期的な林業の低迷や森林所有者の世代交代等により森林所有者への森林への関心が薄れ、森林の管理が適切に行われない、伐採した後に植林がされないという事態が発生しています。

83%の市町村が、管内の民有林の手入れが不足していると考えている状況であり、森林の適切な経営管理が行われないと、災害防止や地球温暖化防止など森林の公益的機能の維持増進にも支障が生じることとなります。

加えて、所有者不明や境界不明確等の課題もあり、森林の管理に非常に多くの労力が必要になるといった事態も発生しています。

このような中、適切な経営管理が行われていない森林を、意欲と能力のある林業経営者に集積・集約化するとともに、それができない森林の経営管理を市町村が行うことで、森林の経営管理を確保し、林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることを目的とした森林管理システムということのようです。【林野庁のHPより】


要するに、経営管理が行われず野放し状態となっている森林を市町村が仲介役となって森林所有者と林業経営者をつなぐシステムを構築して担い手を探すということです。また、所有者不明森林の問題にも対応するとされています。

市町村では、森林所有者の意向調査を始めることになります。それぞれの森林がどんな状態でどれだけの価値があるのか、県の航空レーザ測量の成果等を活用して、実態把握することも併せて必要になるようです。

市町村では10月から準備段階に入らなければなりません。忙しい話です。

林業に従事する人材確保が不可欠

温室効果ガスの発生抑制、水源のかん用など森林が持つ多面的な機能を維持するとともに、間伐材の活用をはじめ国産材の利用促進が重要な課題であることは言うまでもありません。

しかし、県にしても国にしても税の使途に市民・県民の理解が不可欠です。

さらに国の新たな管理システムが有効に作用するには、市町村段階での森林保全に関する専門的な知見が集積されていること、そして何よりも林業に携わる人材の確保が欠かせません。

人材確保をいかに図るのか、その具体的な道筋がいまいち見えてきません。絵に描いた餅に終わりかねない際どさを感じます。

長野市では、森林整備と農地保全の担当が統合され「森林農地整備課」が担当することになります。市の担当課により具体的なレクをお願いしたいと考えています。

県税と国税のすみわけも欠かせない課題

長野県のように森林づくり県民税を独自に設けている県は32府県に及ぶそうです。

県事業と国事業に対象の違いがあるとはいえ、森林保全に関する県と国のダブル課税は、県民の理解が不可欠でしょう。第3期森林づくり県民税の課税はH34年度までの5年間で、国税の課税のタイミングとずれてはいます。県税と国税のすみわけを明確にする検討が必要ですし、県税の廃止、国税への移行も選択肢となるのかもしれません。

いずれにせよ、第3期森林づくり県民税の取り組みが市町村にとって有効なものになることをまずはしっかり検証していくことが重要であると考えます。

さらに、県税の活用状況や国税の活用の見通しについて、長野市の取り組みをチェックすることも重要です。「森林県から林業県へ」…県の掛け声を支えるのは市町村ですから。

まだまだ勉強が必要です。


研修会でのあと二つのテーマの報告は割愛しますが、松本のユニオンサポートセンターの取り組みをはじめ、興味深くかつ刺激となる研修でした。