談合・富士通との随意契約、何が問われているのか【続報】

 11日のブログ「談合・富士通との随意契約、何が問われているのか【中間報告】」において、私の考えを述べましたが、12日、13日の常任委員会の議案審査で、市長専決処分は「承認すべきもの」との決定がなされました。
 明日16日は本会議において、委員長報告に基づき、議案の採決が行われます。
 委員会審査の状況と所感をまとめました。長いだけで余りまとまってはいませんが。

福祉環境委員会…市長の専決処分を「承認」

 今議会の焦点の一つ、談合・富士通との随意契約、国保特別会計補正予算の専決処分の承認を巡り、承認議案が付託されていた福祉環境委員会は13日、談合した富士通との随意契約となる国保システム改修に必要な497万円を計上する国民健康保険特別会計補正予算の専決処分案件である「承認第6号」を賛成多数で「承認すべきもの」と決しました。
 「承認すべき」としたのは新友会(4)・公明(1)、「不承認とすべき」としたのは改革ネット(2)・共産(2)で、5対4の議決です。
➡信濃毎日新聞9月14日付
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 委員会に出席した副市長は冒頭に「議員への説明に適切さを欠き、信頼関係を損ねる結果ととなったことに深くお詫びする」と謝罪したうえで、「公正取引委員会から処分を受けている企業に対する対応として問題意識が希薄であった。今後、取り扱いを検討したい」、「国や県と事前協議をするという考えに全く至らなかった。緊張感をもって対応するよう指導したい」と述べ、事実上の「幕引き」となった感じです。
 この内容は、前日の総務委員会での発言と同様です。若干修正補強がされていましたが…。

 これにより、16日の本会議の議決では「承認」される見通しが確実です。
➡朝日新聞・信濃毎日新聞9月13日付
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 改革ネットでは、13日朝8時半から団会議を持ち、前日の総務委員会での審査状況も共通認識としたうえで、「不承認」で臨む確認をしました。

 福祉環境委員会に先立ち、12日に開かれた総務委員会での審査状況を簡単に報告します。

委員長提案の「協議会」を取りやめ、本審査に副市長等の出席を求める

 9日夜、12日の総務委員会の前段に、承認議案に関連した所管事項調査として「協議会」を開く旨、急遽連絡が入りました。
 「協議会」は、理事者側と議会側の共通認識をつくるために適宜開催される「協議の場」となります。公開はされますが、議事録は作成されません。

 理事者側からの開催要望を受けて委員長が招集したとされるものですが、承認議案と関連し、談合・富士通との随意契約に基づく補正予算案が総務委員会に付託されていることから、私から、「協議会」ではなく、本委員会として、必要な理事者の参加を求め、審査することを提案しました。

 協議の結果、提案通りに本委員会で審査することになりました。

 背景に、最大会派の新友会と公明党が9日に市長に申し入れした折に、総務委員会に説明をしたいとの理事者の意向が伝えられ、協議会が招集されたようで、最大会派といえ一部会派のみの対応で委員会の開催(協議会といえども)が左右されるようでは、主体性ある議会の取り組みを軽んじ、民主的な委員会運営とはなりません。

副市長…謝罪し、課題解決の道筋を示すのだが…

 樋口副市長、総務部長、財政部長の出席を求めた総務委員会では、副市長が冒頭、「議会に適切な説明を欠き、信頼関係を損ねたこと」を謝罪し、二つの課題を整理し理解を求めました。

副市長発言は次の通り(議会事務局作成の議事録より。下線は筆者)。

★「専決処分の案件に関し、市政運営のパートナーである議員への説明に適切さを欠き、信頼関係を損ねる結果となったことに深くお詫び申し上げたい」

★「今回明らかになった課題は2点ほどある」としたうえで

★「1点目は、公正取引委員会からの処分を受けている企業に対する認識、取り扱いがあまりに事務的で手続き上の処理のみにとらわれ過ぎているという感は拭えない。処分を受けている企業に対する対応として、説明責任という点について、ある意味の反省も込めて、問題意識が希薄であったというふうに感じている。今後、公正取引委員会からの処分が下った後の取り扱いについて、検討したいと考えている」

★「2点目は、国・県との事前に協議をすべきではなかったかという意見に関し、職員には、国からの指示は変更できないという認識があって、対象となる市民に迷惑をかけないためにも、スケジュールを厳守することのみを考え、国・県と協議をするという風に全く至っていない。今後は、職員研修などの機会を通して、より緊張感をもって対応するよう、また国・県との協議、相談の実施等についても指導していきたい」

★「一連の経過について国から示されたスケジュールに合わせることを前提として進めてきたということを理解いただきたい。今後、このようなことがないよう努める」

”上から目線”の弁明…深刻さの認識が中途半端

 現状として「事務的で手続き上の処理のみにとらわれ過ぎている」実態があるというのは理解します。国の政策・施策が目まぐるしく変更される中で、これに対応せざるをえず、仕事に追いまくられている厳しい職場環境にあることは間違いないからです。

 副市長の弁明は、一連の事態を率直に振り返っているとはいえ、極めて“上から目線”の発言で、事務を統括する特別職としての責任が全うされているとはいえません。
 議会対策上の弁明に過ぎず、市民感覚に応え得る説明責任を果たしているとは言えないのではないでしょうか。

 さらに、市長がどのように認識しているのか、窺い知れません。

 副市長の「ある意味での反省も込めて」というのは、いかなる意味なのか、極めて中途半端と言わざるを得ません。(翌日の福祉環境委員会では「ある意味での」の部分はカットされていましたが…)

 かかる副市長の弁明がなされるまでに10日間もかかっています。少なくとも、9日の本会議の市長答弁として述べられるべきであったと思います。

 「議会に適切な説明が何故できなかったのか」との掘り下げた反省が問われていると私は考えます。

 委員会では、企業の不正行為・不法行為に行政としていかに向き合うのか、不正を野放しにしてはならないという倫理観、モラル、危機意識が希薄となっている深刻な問題であると強く指摘しました。行政事務上の限界があったとしてもです。

 担当課の現場が仕事に追われているからこそ、この状況を俯瞰し、必要な倫理意識、問題意識を喚起していく行政システムが必要であると思うのです。

 この深刻さが理事者側に共通認識になっているとは言い難いと言わざるを得ません。
➡【関連記事】160910「談合・富士通との随意契約…何が問われているのか【中間報告】」

公取委処分後の取り扱いの検討の道筋は?

 公正取引委員会での行政処分決定後の対応について質問したところ、財政部長は「審査委員会は毎月末に開催しているが、書面表決を含めて迅速に対応できるよう検討したい」と答弁しました。

 一つの方向性として評価したのですが、翌日の福祉環境委員会では「停止処分・停止期間等の設定には県の判断が重要な要素であり県に応じた対応を図る」と後退し、「書面表決」には一切触れられませんでした(質問がなかったからという問題ではないですね!)。

 それどころか、財政部長は「指名停止は運用上の措置で処分ではない」とか「システム関係は審査委員会の審査対象外」といった新しい説明を展開、「指名停止の決定そのものは重いものではない」みたいなニュアンスが強調されると「違うでしょう」と言いたくなります。真意が違っていても…です。
 自治体としての指名停止決定が運用上の措置であっても、自治体としての社会的制裁措置という意味合いはあると思うのですが…。

 何か首尾一貫していません。より問題の深刻さが浮き彫りになっていると言わざるを得ません。

 今日の財政部への聞き取りでは、行政処分は社会的制裁としての公正取引委員会の決定がすべてで、地方自治体がとりうる「措置」は、例えば富士通を2か月間、契約相手としない事実行為に過ぎず、制裁的意味合いを持つものではないとのこと。また、システム関係は情報政策課がすべてを所管し、審査委員会の審査対象外になっているとのことでした。

 市民感覚では理解できない制度上の問題がありそうです。きちんと勉強しなくてはなりません。

富士通との随意契約に基づく補正予算案に反対

 付託されている一般会計補正予算案の中に、システムのセキュリティ強化に関し、富士通との随意契約に基づく予算が計上されています。

 専決処分の承認議案と関連し、十分な議案説明が行われなかったことから賛成しませんでした。

 明日16日は、議案等の採決となります。
 本会議での対応は、各常任委員会の審査状況を踏まえて、会派として統一対応できるよう協議を進めたいと思います。

いろんなことを考え直す機会に

 今回の一連の事態の中で、市行政としての倫理観、規範意識の問題をはじめ、国の施策に翻弄される地方の実態、指名停止処分の実効性、そして自治体の情報管理システムのあり方、システムの開発・改修・保守における民間企業の著作権の問題などなど、いろんなことを考え直す機会になったように思います。

 例えば、住民基本台帳、社会保障、税、そしてマイナンバー対応など自治体の市民個人情報管理システムを一元的に構築することが求められる中、それぞれの自治体が個別に民間企業と契約するのではなく、ベースとなるシステムはオープンソースとし、全自治体で共通利用する、カスタマイズはそれぞれの自治体が独自に行えるようなシステム構築が地方6団体と国との協議でできないのかなどと考えてしまいます。

 今のままでは、自治体の情報管理分野は、競争入札から始まるにしても、結果、大きな企業のいわば独占市場です。
 莫大なシステム構築費・システム改修費・維持管理費が企業の収益となります。民間企業の知的財産・スキルを活用せざるを得ない事情は理解しますが、このままでいいのだろうかと思います。

 今回の事態を眺めると、富士通側にすれば、公取委の行政処分を受けても、システム関係の自治体との契約には実害が及ばないことになります。企業側にも「甘え」を生む構造的弊害が現れているのではないでしょうか。
 蛇足ですが…。

 それにしても、行政のモラルを問う以前に、議会のモラルが問われる事態が明らかになっています。富山市議会で相次ぐ政務活動費の不正請求問題です。

 我々議会側もしっかり襟を正さねば!と強く思います。
 忸怩たる思いが募ります。

専決処分の承認に反対

 明日の本会議での議決に際しては、専決処分の承認に反対討論をせざるを得ません。
 議会への説明責任という問題はもとよりですが、市長、副市長をはじめとする特別職及び理事者の皆さんへの規範意識を問い、問題意識の喚起を促す反対討論にしたいと思います。

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