11月議会運営委員会の視察より[その2]…堺市議会・下関市議会編

 議会運営委員会の視察報告[その2]です。堺市議会と下関市議会の取り組みより…。

◆堺市議会(11月13日)

中央の建物が堺市役所(右)と堺区役所(左)、左の建物上部が議会棟になっている。

中央の建物が堺市役所(右)と堺区役所(左)、左の建物上部が議会棟になっている。


堺市議会事務局の課長さん達

堺市議会事務局の課長さん達


1.委員会のインターネット中継…アクセス数の評価は難しい
 堺市議会の本会議中継は、庁内テレビ放送でH16年からスタートし、H23年からインターネット中継を導入。委員会のインターネット中継は、常任委員会と特別委員会を対象にH25年8月定例会から導入された。2つの委員会室にカメラ3台を設置、委員長席・議員発言席・理事者席を撮影する。システムはパナソニック製でマニュアル操作。テロップは発言者名・役職名または議事の状況等を盛り込む。理事者は全員の役職・氏名を盛り込むそうだ。
 堺市議会は委員会審査に申し合わせで発言通告制をとっており、1人30分の持ち時間で質疑するそうだ。通告制をとっているため、理事者全員のテロップ挿入が可能となっている。
 委員会室へのシステム設置に1250万円、中継業務(本会議と委員会)費用として55カ月の債務負担で1490万円、月額にして30万円程度とされる。いずれも契約金額。
 録画中継の配信は、会期ごとの会期終了日から1年間とされる。サーバーの容量のためと思われるが、短い印象は残る。
 因みに8月市議会でのアクセス数は、生中継で市民1903、職員15,900。録画配信では市民8,900、職員15,000とされる。システム上、市民のアクセスはインターネット経由、職員は庁内LAN経由と、市民のつながりやすさの確保が図られている。
 アクセス数をどう評価するかは難しいところだ。

2.議会報告会…年2回議場で開催、市民との懇談を重視
 昨年から取り組まれているもので、視察の折は3回目の直前であった。開催回数は年2回で、3月定例会の主な議案・予算審議の結果と8月定例会の主な議案・決算審議の結果をそれぞれ柱としている。開催日は日曜日の午後である。
 2部制を取り、第1部は「議会報告」、第2部を「議員との懇談」とする。「議員との懇談」は市政や議会に関する市民と議員の意見交換という位置づけ。報告に20分、懇談に90分を予定するが、懇談は発言者が多く時間オーバーの状態にあるそうだ。
 議場(52席)と傍聴席(80席)を会場とすることから、事前申込制をとる。第2部の「議員との懇談」での発言希望者は、事前に申し込み用紙に発言内容を記入する方法をとっている。
 出席議員は、正副議長、議運正副委員長に、会派毎に按分で選出された議員、18人程度とされる。議会報告は議運副委員長が一括して概要をパワーポイントを使って報告する方法をとっている。質疑の時間はなく、第2部の懇談・意見交換の場で質疑を含めて進められている。報告は簡単に、質疑・意見交換を重視する考え方と理解する。
 市民への周知では、議員によるチラシ配布、市の施設や市内各駅へのポスター掲示が特徴的である。
堺市議会の場合も課題は参加者にある。1回目が67人(発言者16人)、2回目は65人(発言者21人)と推移したが、3回目は4日後に開催日を迎える中で申込者数は36人にとどまっているとされた。(3回目の開催状況は今日段階で不明)
 長野市議会の議会報告会は、報告を主に意見聴取も行うという形をとっているが、堺市議会の報告と懇談の取り組みはかなりアバウトな決め事になっている印象ではあるが、懇談・意見交換に重きを置いている点は注目したい。

議会棟の受付。報告会のポスターが掲示されています

議会棟の受付。報告会のポスターが掲示されています


3.特別委員会の提言書…独特な政策提言の試み
 堺市議会の特別委員会における調査研究は独特である。特別委員会として、調査テーマに沿って「都心のまちづくりに関する提言書」、「百舌鳥古墳群の世界文化遺産登録に向けての提言書」など、市当局に対する提言書をまとめている点は学びたいところである。「提言書」は議長を通じ市長に送付され、場合によっては市長との懇談が行われる仕組みというか慣例になっているようだ。特別委員会の委員長報告として本会議で議決し、議会の意思として市当局に提示する、あるいは対置させる方法はとられていない。この点が独特なのだが、長野市議会として拘束力を持つ「特別委員会の提言の在り方」を考える上では、貴重な取り組みといえる。

4.議員研修
 堺市議会基本条例に研修の章を起こし、議員研修の充実、一般選挙後の基本条例の研修を定める。最近では国交省すら講師を招き「公共交通とまちづくり」について研修が行われている。
 また、市当局が職員対象に行う研修のうち、議員が聴講できる研修を照会し、議員に周知し参加を促すことが行われている。長野市でも職員研修の位置づけの後援会が議員にも周知されることがあったと思うが、制度化されている点が特徴だ。

5.予算審査特別委員会・決算審査特別委員会…全議員で構成する特別委員会方式
 視察テーマではないが、堺市議会の予算・決算議案の審査は、それぞれ特別委員会を設置し対応している。予算・決算審査の特別委員会は全議員で構成し、常任委員会ごとに分科会として分割付託・審査する方法をとっている。各分科会の審査報告を全体会に行い採決する。
 横須賀市議会は常任委員会方式をとっているが、堺市議会の場合は特別委員会方式といえる。審査の方法はほとんど同様である。

6.議会力向上会議…ネーミングがいい!
 地方分権時代にふさわしい議会のあり方について協議し、議会機能の強化及び活性化を図るため、議会力向上会議を設置している。13人で構成される議会活性化の推進組織である。「議会力向上会議」というネーミングは面白い。

市役所前の通り沿いにある自転車置き場。自転車利用、放置自転車対策としては、導入検討の価値あり。

市役所前の通り沿いにある自転車置き場。自転車利用、放置自転車対策としては、導入検討の価値あり。

◆下関市議会(11月14日)

下関市議会・議会事務局の皆さん

下関市議会・議会事務局の皆さん


1.委員会のインターネット中継…最少の経費で最大の効果を狙うとされるが
 H24年4月から実施。放送設備のある1委員会のみの配信に限定されている。同時アクセスは、庁内用で100件まで、インターネット用100件まで可能なシステムとして構築、システムの運用・管理は議会事務局が行う。導入経費は約530万円、管理運営経費は約400万円とされる。議会事務局職員で運用される形で、増員なしで対応しているとされる。負担が大きいのではないかと推察される。
 アクセス件数は、本会議と委員会の区別がないが、年平均でライブ中継が1日当たり172件、録画中継が1日当たり20件。
 傍聴ができなかった市民には好評とされる。他市と同様、職員のアクセス数が多いようである。

2.市民と議会の集い…市民との情報共有に重き
 下関市議会の議会報告会は「市民と議員の集い」という形で運営されている。「報告会」は一方的な情報提供であり、「集い」は市民と一緒に情報共有するとの位置づけだ。議会基本条例に書き込んだことからスタートしている。
 1回につき複数会場で実施、市民の議会への関心が高まる効果があるとされる一方、ここでも市民の参加者数が課題となっている。H24年6月の1回目は市民会館1カ所で200人、同年11月、日曜日の午前・午後の2会場で計120人、H25年11月の3回目は中間集約で90人といった具合だ。また、「報告の話や資料がわかりにくい」との不満や批判があり、報告資料等のまとめ方が課題ともされる。
 内容は、40分くらいで4つの常任委員会の報告をし、「質疑応答」という形で意見交換を図るものである。
 「集い」という位置づけの試みや、開催日について平日夜間や日曜日開催など試行錯誤が繰り返されている点に注目したい。

3.各常任委員会で活動方針を作成…独特!
 常任委員会の審査において、執行部提案の議案審査が受身となることから、能動的に議会が動こうとの問題意識で、常任委員会ごとに取り組むべき課題を活動方針として整理し、提言をまとめている。若干、言わずもがなの取り組みとも言えないではないが、常任委員会での討論を政策提案に結びつけようとの問題意識は共有したい。下関市議会では、調査・研究テーマを絞り込んだ特別委員会を設置していないことも背景にあると思われる。特別委員会は「市出資法人調査」と「決算審査」の2つを常設としている。

関門海峡

関門海峡


下関といえば”ふぐ”

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