経済文教委員会の視察報告➌金沢市「起業支援と学生のまち推進」

5月18日、経済文教委員会の3日目視察地、金沢市の報告です。

金沢市

言わずと知れた「加賀百万石」の金沢市。
面積468.64㎢、人口465,810人。人口密度は957.16人/㎢。長野市と同じ中核市であるが、10万人近い差があり、人口密度も長野市の倍である。
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金沢市の視察テーマは、「創業支援策」「学生のまち推進事業」の二つ。

市役所では金沢市経済局商業振興課の松下有宏・課長補佐、堤宏平・主査から、学生のまち市民交流館では、市民局地域コミュニティ活性化推進室の安江一智・室長、市民協働推進課の中村吉宏・主査から説明を受ける。

金沢市経済局商業振興課の皆さん

金沢市経済局商業振興課の皆さん

起業支援相談…若い世代の受け皿に

金沢市創業支援事業計画は国の第1回認定を受けている。

金沢市の企業支援の仕組みは、一つに起業支援相談窓口

H25年4月から開設、担当職員3人の他、シルバー人材センターの政策金融公庫OBなどの金融専門家が対応。H29年度予算で170万円(委託費)。

新幹線開業に前後して金沢でビジネスチャンスをつかもうとする動きが継続していて、H28年度では300件の相談があり過去最高を更新している。

300件のうち、30代が169件。20代から40代の合計でほぼ9割、若い世代の起業受け皿になっている点が大きな特徴だ。

商業活性化アドバイザーの派遣事業

二つ目が商業活性化アドバイザーの派遣

市内で起業を考えている方や起業して3年以内の方を対象にする。アドバイザーは19人。

1回につき2時間程度、年4回、合計8時間までを無料で実施。H29年度予算200万円。

H28年度で113件、利用者の7割が女性。企業に向けた第一歩を踏み出す人が増えているそうだ。

中心市街地の空き店舗は、H28年の32から、H26年には13にまで減少しているそうだ。

起業支援PRプロジェクト「はたらこう課」…若年層の掘り起こし

三つ目が、「チャンスのあるまち金沢」を発信する、起業支援PRプロジェクトが「はたらこう課」(ウェブサイト)である。

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「はたらこう課」の目的(視察資料より)

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「はたらこう課」のウェブサイト

金沢での起業を増やし地域を活性化させることを目的とする。

H28年4月に開設。ウェブサイトの運営委託費やフリーペーパーの発行費に年350万円の予算。

ウェブサイトでは、市内で活躍する若手起業家をロールモデルとして紹介。起業ストーリーなど「人」に焦点を当てている。

陶芸や和食、町家や検知地区など金沢が持つ個性的な「素材」を活かした起業のカタチを紹介する。

また、サイトで紹介された起業家らによるトークセッションや参加者を交えたディスカッションなどの交流イベントにも取り組まれている。起業の魅力や苦労話を共有できることがポイント。

クリエイターとの連携

これらの企画は、金沢市のクリエイター誘致事業第1号の広告制作会社である「ホッチキス」(代表は金沢美術工芸大学卒のアートディレクター)に委託されている。

「ホッチキス」のウェブサイトから「はたらこう課」

行政の弱点である「クリエィティブなデザイン・映像」や「首都圏への幅広いネットワーク」の活用を補完し、これまでリーチするのが難しかった、地方での起業を検討している首都圏等の「起業予備軍」に向けた情報発信が可能になったとされる。

ウェブサイト「はたらこう課」を通じて、起業相談件数を前年度比10%(+30件)増やすことで、起業件数を10%(+3件)増やすことを目標とする(H28~30年度目標)。

H29年度では、より実戦的なノウハウを学べる講座を追加する「ビジネス塾」を拡大・展開し、起業家の育成を目指すとする。

若者の起業支援の課題と解決策(金沢市資料より)

若者の起業支援の課題と解決策(金沢市資料より)

他の起業支援策

◆かなざわ女性起業塾(検討期)…60万円

◆コミュニティビジネス起業塾(検討期)…50万円

◆コミュニティビジネス支援事業(創業期・育成期)…1100万円

◆起業チャレンジ若者支援事業(創業期)…1400万円

自分らしい働き方、生き方をめざす若者をターゲット

金沢市が保持する豊富なコンテンツ(伝統工芸・食・建築・IT・デザイン)を活かし、自分らしい働き方、生き方をめざす若者が増えていることを踏まえ、2号・3号店を出店・拡大させるよりも「自分らしさやコンセプトを大切にしたい」との若者のニーズに応えられる「起業のまち」「起業が受け入れやすいまち」をめざすとする。

このコンセプトの重要性は昨今、指摘されるところであるが、行政側の問題意識として根っこに据えられている点は着目すべき事項であろう。

「学生のまち推進条例」制定と「まちづくり学生会議」

金沢市内には現在、18の大学・短大・高等専門学校と29の専門学校が集積する。
第四高等学校(四高=現・金沢大学)以来の伝統を引き継ぐ「学都」としての歴史を刻む。

学生数は約3万5千人を数え、人口10万人当たりの高等教育機関数では、群馬、東京に次ぎ第3位。人口1000人当たりの学生数は全国第7位を誇る。

因みに長野県は、確か全国最下位だったように記憶する(要確認!)。

大学の郊外移転により市中心部に大学が存在しなくなり、市民とのかかわりが希薄化する状況等を踏まえ、学生と市民、学生とまちとのかかわりを深めるため、全国初の条例として「学生のまち推進条例」をH22年4月に施行。

学生当事者の組織として「金沢まちづくり学生会議」を設置するとともに、地域では「学生のまち地域推進団体」を位置づけ、「金沢学生のまち推進会議」のもとに総合的な施策展開を推進するとされる。

「金沢まちづくり学生会議」には、H28年度で第7期生54人、9大学から学生が参加。
「まちなか学生交流街マップ」の作成、商店街と連携した「まちなか学生まつり」の開催、交流イベント等に取り組まれている。

交流イベントの拠点…金沢学生のまち市民交流館

学生の活動拠点として、H24年9月、中心市街地の一角である「片町」に、大正期の金澤町家を改修し「金沢学生のまち市民交流館」を整備

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金沢学生のまち市民交流館のサイト

学生と市民の交流の場、まちづくり活動に関する情報交換や学習の場などとして活用されているそうだ。

交流館には、まちづくりNPOのメンバーや学生会議OBなどがコーディネーターとして常駐する。

学生団体では、インカレの団体やサークルなど約40団体が利用しているそうだ。

金沢市では、学生まちづくり部門で「協働のまちチャレンジ事業」を実施。H28年度では、9団体から応募があり、商店街のオリジナルグッズやキャラクターの作成による商店街活性化や学生による地域の高齢者訪問事業、九谷柄紙コップ配布プロジェクトなど4提案が採択され事業化されている。

学生会議の活動が、こうした施策展開のすそ野を支えているそうだ。

金沢市では、金沢に愛着を持ってもらい、まちの元気の担い手としての学生に期待をかけ、学生の自主性を尊重しつつ、学生と市民をつなげるプラットフォームをつくり、まちづくりをより楽しいものにするプランニングなどが行政の役割とする。

金沢市の取り組みの参考点

➊長野市では創業支援策として、「実践起業塾」「創業者向けパンフレットの発行」、中心市街地における商店街の活力と賑わいを創出し、活性化を図るため、 中心市街地の空き店舗、空き家、空き倉庫等を賃借して行う事業に対して 改修・改築費の一部を補助する「まちなかパワーアップ空き店舗等活用事業補助金」事業、長野市若者未来創造スペース整備事業などを展開、また、「ICT産業誘致・起業プロジェクト」を設置し検討が進められている(進捗状況の確認必要)。

しかしながら、若者対策としては、「UJIターン就職支援事業」や就職情報サイト「おしごとながの」の開設・拡充など就労支援がメインであり、金沢市のように若者世代に特化した起業支援の取り組みは希薄と思われる。

『自分らしい働き方、生き方をめざす若者が増えていることを踏まえ、2号・3号店を出店・拡大させるよりも「自分らしさやコンセプトを大切にしたい」との若者のニーズに応える起業支援策』は、十分に検討したいものである。

➋起業支援では、これまでに愛知県岡崎市の岡崎ビジネスサポートセンター(OKa-Biz=オカビズ)や静岡県の富士市産業支援センター(f-Biz=エフビズ)を視察し、商工業活性化や起業支援で総合的なワンストップの「相談窓口」の設置などを提案してきているが、実現に至っていない。

長野市は、「商工会議所や商工会の経営指導員による相談や、県中小企業振興センターに設置された” よろず支援拠点”の相談業務、またものづくり支援センターにおける支援等によって、広く相談の機会は提供されている」とし、「f-BizやOKa-Bizのような専門コンサルタントによる相談窓口の設置は今後の研究課題」との考えを示すにとどまっている。

経済団体等が行う相談窓口や”よろず支援拠点”の相談機能が、個人経営者等の相談ニーズに応えるものになっているのか、相談を通して、新規創業や売り上げアップにつながる事例をどれだけ創り出せているのか、若者世代の起業ニーズをどのように把握し、対策が講じられているのかなど、十分な検証が必要である。

起業支援、個人事業者支援の「スキマ」を埋める視点で、次につなげたい課題である。

➌長野市内の学生数は、H27年度学校基本調査によると、大学2校・3,607人、短大3校・1,075人、工業高専1校・1,023人で、合計5,705人。専修学校や各種学校の24校で3270人を合わせても約9000人弱で、金沢市の4分の1と比ではない実情にある。

「学生のまち」と言える状況にはないが、学生を一つの核とするまちづくりの模索は、UJIターンを促進する観点から、問題意識をしっかりと持つ必要性を痛感する。

これまでも各大学・短大と連携協定を締結し、まちづくり・地域づくりの連携が図られているが、県短大の4年制化=県立大学の創設、三輪キャンパスと後町キャンパスの存在をまちづくりに活かしていく視点を持ちたい。

また、後町キャンパスの整備による中心市街地活性化・権堂地区の再生に寄与し得る学生力の掘り起こしも課題である。