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「TPP交渉の現状と日本の参加問題」

公開日: 農林業

 12日、食とみどり水を守る長野県民会議の総会が開かれ、東洋大学名誉教授・日本農業研究所客員研究員である服部信司さんの「TPP交渉の現状と日本の参加問題」と題する講演を聴きました。

講演する服部信司氏…市内の県労働会館にて


 ポイントを紹介します。
➊当初、ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4カ国でスタートした「TPP4」に対し米国が拡大TPP交渉に加わった理由は、アジアにおいて米国が関与・主導する経済連携を形成する必要があるため。アジアへの輸出拡大、特に対日輸出拡大が狙いであること。
➋米国は、自国の製薬会社に有利な特許権保護や、加盟国における薬価決定への米国製薬会社の介入、国際的な紛争処理機構による米国企業の海外投資の保護、環境や労働分野における紛争処理機構決定の義務化・拘束化など、米国企業の利益を露骨に追求する提案を行い、TPP交渉を主導していること。
➌酪農品(対ニュージーランド)や砂糖(対豪州)、繊維品(対ベトナム)など、物品自由化で得るものは少なく、日本の参加により、物品自由化による恩恵を独り占めしようとしていること。
➍TPP参加による日本のメリットは小さいこと。内閣府の試算では「一定期間後のGDP0.66%(3.2兆円)の増」とされるが、一定期間を10年とすれば年平均0.066%(3200億円)程度のGDPの伸びにすぎないこと。全品目平均関税率は日本が2.5%、米国が3.3%であり、そもそも関税率が低いこと。また日本の自動車企業は、既に米国での現地生産・現地販売が平均で75%あり、そもそも関税は問題とならないこと。そして農林水産省の試算によるように、TPP参加により日本の農産物の生産額は約3兆円減少し、食料自給率は40%から27%に減少し壊滅的な影響を被ることになること。
➎「アジア太平洋の成長(需要)を取り込む」とされるが、アジアの成長センターは中国であり、日本の最大の貿易国も中国であることを考えれば、中国や韓国、インドネシアなど可参加しないTPPにおいては、アジア経済圏の成長を取り込むことは幻想であること。
➏従って、日本政府がとるべき道は、日中韓、「ASEAN+3」や「ASEAN+6」(RCEP)の経済連携を具体化させる方向であること。
➐安倍首相は「『聖域なき関税撤廃』は前提とされていない」、故に「聖域は担保された」とするが、「関税撤廃を前もって約束する」ことはいずれの交渉参加国も行っておらず、当然のことをごまかしているに過ぎない。また「センシティブ(考慮すべき)品目があることを認める」との声明も、それらについての扱い(関税撤廃の例外=除外なのか、長期の関税撤廃とするのか、関税割り当てにするのか)については一切言及されず、玉虫色であること。
➑「日米関係の強化は、安保重視よりもTPPへの参加にある」「米日関係を活性化し強化するために最も役立つのは、対話の強化ではなく、案是補償問題に一層の重点を置くことでもない。両国の経済関係をより開放し、競争と連携にさらすこと」とキャンベル国務次官補が述べている通り、米国の戦略は、「経済関係の開放」=日本の関税撤廃⇒米国の対日輸出拡大に他ならない。日本の立場からすれば、日米の産業構造の違いを無視して、日本の農業生産体制を弱体化させて日米同盟の強化はないということ。
➒TPP交渉は徹底した秘密交渉となっている。問われることは情報公開である。大多数の生産者がTPPに反対し、多くの国民がTPPに危惧を持っているのだから、安倍政権は、約束通り「随時、交渉についての情報を公開し、それを国民的議論に委ねる必要がある。

 極めて明快でわかりやすい講演を聴くことができました。中野剛志氏の著作「TPP亡国論」以来です。

 折しも、12日、TPP交渉参加に向け、日米が事前合意しました。自動車分野をはじめ、米国から大幅な譲歩を強いられたものです。前途多難であることは明白です。とはいえ、この流れを転換させることは、極めて厳しい状況にあります。しかし、引き続き、TPP交渉参加撤回を目指しつつ、情報の全面開示と国民的議論を求めていくことが重要です。その上で、対米追従からアジアを基軸とした経済連携に転換することが日本の選択すべき道であることを訴えていくことが重要であると考えます。

 長野市長は、「自由貿易主義で発展してきた日本の歴史を考えれば、TPP参加は止む無し」とする考えを表明していますが、TPP参加問題は、自由貿易の推進という一般論で片付く問題ではありません。米国のお家事情をしっかりと見抜き、アジアの中における日本を考え、そして自国の産業を守りつつ、経済連携を図る“もう一つの道”を熟慮してほしいものだと思います。

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