6月議会の質問より➎子どもの権利条例制定と子どもの意見表明権の保障を質す【その2】

子どもの権利条例の制定に関わる続編です。子どもの意見表明権を保障する仕組みづくりなどを取り上げました

待ったなしの子どもの意見表明権の保障

独自の子どもの権利条例制定を待つまでもなく、子どもの意見表明権の保障は待ったなしです。4月に施行された「子ども基本法」は子どもに関わる政策に子どもの意見を反映させることを国や自治体の責務としました。

しかし、青木島遊園地閉鎖の局面では児童センターの子どもの感謝の意を表す機会が大人の的外れで間違った考えにより奪われてしまいました。子どもの意見表明権に対する認識、問題意識の欠落が招いた悲しい事態といえます。そもそも、遊園地の廃止に関し、遊園地を使用するこどもの意見を直接聴くことはありませんでした。

国では新制度として「子ども若者★いけんぷらす」の取り組みが始まり、県内からも62人が登録され、東京都は小学生、中学生など及び未就学児の保護者を対象に「こども都庁モニター」に取り組みます。

➡本市における具体化、少なくとも、子どもに関わる政策決定プロセスにおいて、当事者である子どもの意見表明の機会を保障する仕組みをつくることが不可欠です。政策・施策の実効性を高めることに確実につながります。

見解を質しました。

「国の動向を注視。多様な声を聞く機会の確保は今後検討」

こども未来部長は「子ども施策の当事者たる子どもや若者たちの意見を聞くことは、対象者のニーズや状況を的確に踏まえることができることから、施策がより実効性のあるものになる。意見をどのように聴取し、施策につなげ、反映させていくかが大切なことと考える」「悩み事などについて、声を上げられない子どもたちの声を確実に受けとめるために、子ども食堂、あるいは子どもカフェなど、子どもたちが居場所としている場所に出向き、信頼関係を築いた上で子どもたちに寄り添い、心の声に耳を傾ける取り組みが必要ではないか」との認識、問題意識は示したものの、具体については「国の動向を注視するとともに、他の先進事例を参考としながら、子どもが安心・安全に意見表明できる体制の整備を図るとともに、子どもたちの心の声に耳を傾け、多様な声を聞く機会を確保するよう、今後検討していく」との答弁で、まさに“これから”といった具合です。

➡「国の動向を注視」「今後検討」と答弁は、市の常套答弁です。本気度が問われます。

「子どもアドボカシー」や市独自の児童相談所の開設を提案

「子どもアドボカシー」や市独自の児童相談所の開設を提案子どもの心の声をくみ取ることは、決して容易ではありません。自分自身で声を上げられない子どもが少なからず存在しています。虐待などの傷を受けている場合はなおさら声を挙げにくい状況にあることは論を待ちません。

現状の日本社会では、子どもを権利の主体としてではなく、保護の対象として見る傾向が根強くあります。「守ってあげてる。やってあげてる」といった大人の発想から転換しなければなりません。こうした中で、子どもの意見を聴いて代弁する仕組み「子どもアドボカシー」の整備など、意向を把握し権利を擁護する態勢の構築が急がれます。「子どもアドボカシー」は福祉環境委員会で視察した尼崎市でも模索されています。

*子どもアドボカシーとは…子どもが意見や考えを表明できるようにサポートすること。アドボカシー(advocacy)は、ラテン語の「voco(声を上げる)」に由来するそうです。子どもアドボカシーを実践する人を「アドボケイト」といい、現段階では公的な資格ではありませんが、NPO法人などがアドボケイトの養成講座を実施しています。保護者や学校など子どもに関わる人や組織から完全に独立していることが大きな特徴です。

子どもアドボカシーに対する理解が広まって欲しい! アドボカシーを実践するアドボケイトを育成しようと、2020年8月に発足したこどもアドボカシー研究会が2022年8月に子どもアドボカシー学会になりました。 子どもアドボカシーの深まりと拡がり、そして子どもの人権を尊重する文化を築くために、多くのみなさまのご参加をお願いしま...
子どもの権利条約の理念を基本とし、子ども・若者とのパートナーシップのもと、子どもアドボカシー活動を推進する団体・個人の交流と連携を通して、子どもの声を大切にし、すべての子どもの権利を尊重する社会の実現に寄与することを目的とする団体です。

全国の自治体では、兵庫県川西市が1999年に国内初となる「子どもの人権オンブズパーソン」を設置し、現在までに30以上の自治体に同様の機関が置かれ、また、家事事件手続において、子どもの手続代理人制度が設けられるなど、「子どもの意見の尊重」を実現するための自治体の機関の設置や法的な制度の導入が進められています。「子どもの意見の尊重」をより一層促進するため、国の権利擁護機関の創設が待たれるところですが、自治体において具体的な仕組みをつくることが急務であるといえます。

こうしたことを踏まえ、「子どもアドボカシー」や市独自の児童相談所の開設を提案し、早期実現を迫りました。

子どもの意見表明の仕組み…「しっかり検討する」と答弁

こども未来部長は、尼崎市の“子どもの育ち支援条例”や豊田市の“こども条例”や、本市のこども総合支援センター「あのえっと」において子どもの権利を守り、権利侵害があれば救済するという姿勢で子供の悩みや意見を聞く、相談対応を進めていることに触れながら、「今後、子ども権利条例を制定する過程において、他市を参考にしながらも、子どもの意見表明を確実に支援できる実効性のある体制が構築できるよう、しっかり検討していく」と答弁。

➡「実効性ある体制づくり、しっかり検討」を約束した答弁、具体策はこれからですが、決意表明として前向きに受け止めましょう。

県の中央児童相談所と相互連携で協力…市独自の児相は当面予定しない

市独自の児童相談所の設置については、「本市を所管する長野県中央児童相談所と連絡も密にとり、連絡会議などを通じて情報共有を図りながら、本市の担う支援機能と児童相談所の一時保護等の介入機能が連携し合っている状況で、迅速かつ強固な連携体制が構築できている」とし、「当面、児童相談所の設置は予定していない」と答弁しました。

そのうえで、今後の取り組みとして、国がR6年度以降の設置を努力義務としたこども家庭センターの設置を目指し、まずはこども家庭総合支援拠点の機能をしっかりと果たしながら、母子保健分野と児童福祉分野において、一体的連携を図り、市民に寄り添った継続的、長期的な支援を行いたい」としました。

*独自の児童相談所開設は、中核市62市中、福祉環境委員会で視察した奈良市を含め、4市(横須賀市・金沢市・明石市)が設置。また尼崎市を含め、8市が設置を検討中。

予想された答弁です。視察した奈良市や尼崎市の状況から、場所や専門スタッフの確保など課題が多いことは理解していますが、市内の子ども達のSOSに一貫して切れ目なくサポートできる意義を重視し、市独自の開設へ決断を求めたいものです。

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