私は、これまで何度も「子どもの権利条約」に基づく「子どもの権利条例の制定」について質問し、条例制定を求めてきました。
子どもの権利条約とは?
2019年今年は、子どもの権利条約の国連採択30年、日本の批准25年という節目の年にあたり、2月の国連子どもの権利委員会の勧告では、多項目にわたり懸念の表明と勧告が提示されました。子どもの権利に関する包括的な法整備を改めて指摘するとともに、緊急の措置が必要な分野として、子どもの意見の尊重、子どもの参加権、意見表明権の確保、家庭を含めたあらゆる場面での体罰の禁止措置などを指摘しています。
条約批准国として国内法の整備は一義的に国の責任ですが、国の施策が追い付いていない中、いじめや体罰、虐待が大きな社会問題となる中、子どもの権利条約に基づく子どもの権利条例を自治体からつくりあげ、権利の主体としての子どもの育ちを支えていくことが大きな課題になっています。
子どもの権利条約…4つの権利
子どもの権利条約では、大きく分けて、子どもの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つの権利を守り保障することを定めています。
➡【参考】子どもの権利条約ネットワーク
県の「子どもの支援に関する条例」は「子どもの権利条例」とは目的・趣旨が異なる
今回、改めて取り上げたのは、市において条例制定に向けた問題意識がどんどん後退し、去る3月議会では市長が、長野県がH26年に制定・施行した「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例」の理念のもとに、「長野市として定めた子ども・子育て支援事業計画をベースに、的確に事業を展開し、実効性を高めるとともに、子どもの人権に関する研修や広報を充実させて、虐待などで苦しむ子どもを一人でも出すことのないよう努めていきたい」と答弁し、さらに「県条例と今連携をとりながらやっており、現状の中で、子どもの権利条例をあえて上乗せで作るということは考えていない」として、事実上、制定する考えのない姿勢を明確にしたからです。
また、また、国がH28年5月に児童福祉法を改正し「児童は適切な養育、健やかな成長・発達や自立を保証される権利を有する」との理念を明確にし、児童虐待の禁止や児童相談所の体制強化を盛り込んだことなどから、「ここ数年で、子どもの権利を守るための法的・組織的な整備が進んできている」といった新たな状況が背景にあるともしました。
法整備が徐々に進んでいることを否定しませんが、いずれにせよ、市の認識は「県条例で十分」とするものです。
私は、県条例は子どもの権利条約に基づく子どもの権利条例とは目的・趣旨が異なると認識しています。
県条例において、子どもの人権救済機関として「こども支援委員会」を設けたことを評価していますが、そもそも条例の趣旨は、いじめ、虐待、体罰や不登校といった様々な問題を抱え、悩み苦しむ子どもたちをいかに支援するかを課題とし、困難な状況にある子どもたちや子どもの育ちに関わる人たちを支援することにあるからです。
総じて、子ども支援、子育て支援のための条例ということです。
さらに、「子どもの権利の尊重」「子どもにとっての最善の利益の実現」という表現は使われていますが、子どもの権利とはそもそも何なのかを明示してはいないからです。
「子どもの権利」は抽象的に論じても意味がありません。
県条例に欠落・不足している事柄を指摘し、条例制定迫る
「国や県で取り組まれているから」とする他力本願ではなく、市独自に子どもの権利条約に基づき、子どもの権利を尊重し施策展開を図っているとの主体的なメッセージを市民に、子どもたちに届けることが重要であり、市独自の子どもの権利条例が必要であることを強調し、二つの視点から、県条例に欠落あるいは不足している事柄を指摘し、市としての県条例の評価を質しつつ、市独自の条例制定を迫りました。
「県条例に上乗せなければ」とした市長に「独自に上乗せする事項がありますよ」という指摘です。
➡詳しくは質問内容をご参照ください。
一つは、川崎市の「子どもの権利に関する条例」を例に、具体的な権利を明示していることをあげ、県条例に上乗せしなければならない重要な規定であると考えるがどうか。
二つは、県条例は子ども支援策という施策展開には活用できるが、子ども達に権利の主体としての自覚・自信を回復させ、自己肯定感を醸成するメッセージとして活用するには限界があると考えるがどうか。
という視点です。
市長をはじめ、こども未来部長の答弁は、「市独自条例が必要でない」とする都合の良い県条例の解釈・評価が述べられただけで、かみ合わなかったというのが印象です。
『議会だより』の原稿としてまとめたものをダイジェスト版として掲載します。
➡詳細は、市議会のインターネット中継をご覧ください。
問 市独自に子どもの権利条例を制定する検討はトーンダウンし、3月議会では制定する考えのない姿勢を明確にした。極めて残念。県の未来を担う子どもの支援に関する条例は、子どもの権利を具体的に明示しておらず、子どもの権利条例とは目的、趣旨が異なる。県条例の評価は。
市長 県条例は子どもの人権をうたいつつ、子どもの育ちを支える仕組みをつくることに主眼が置かれ、制定プロセスを含め評価している。法改正を含め引き続き県と連携を図る。
問 児童の権利条約に基づいた子どもの権利条例が必要。県条例の足らざる点を上乗せ、補って市独自の条例制定につなげていくことが重要。
こども未来部長 県条例は条約に定める基本的な四つの権利を包含していると認識する。川崎市のように権利を明示されている条例もあるが、条約に基づいた条例づくりは、県と連携し情報共有する中で、県の考えを聴いていきたい。
こども未来部長の答弁は、再質問に対する答弁部分ですが、「県条例は条約に定める基本的な四つの権利を包含していると認識する」というのは、あまりに手前勝手な解釈ではないでしょうか。また、「条約に基づいた条例づくりは、県の考えを聴いていきたい」とする答弁はあまりにも他力本願で、残念ながら主体的な市の姿勢が全くうかがえません。
明確な問題提起をしたつもりですが、届きませんでした。
引き続き、問題提起をしていきたいと考えますし、市議会側として問題意識を共有できる議員と連携し検討協議の場を作っていくことも必要であろうと考えます。
今後の課題にしたいと思います。