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09年2月1日
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議会基本条例検討特別委員会で行政視察…その3・三重県伊賀市議会編


 視察報告その1・福島県郡山市議会その2・三重県議会|その3・三重県伊賀市議会

三重県伊賀市議会の議会基本条例

1.伊賀市の概要
      
 三重県の北西部に位置する伊賀市は、H16年11月に1市3町2村の6市町村が合併した新市で、人口10万1900人、面積558?を擁する。人口規模では飯田市くらいに相当する。北は滋賀県、西は京都府、奈良県と接し、近畿圏と中部圏の中間に位置する。伊賀忍者や松尾芭蕉生誕の地で知られる。3月の議員改選を控え、あわただしくなる時期での視察となる中、前田議会事務局長をはじめ、途中から市議会議員2氏にも合流いただき、意義ある意見交換を行うことができた。議会基本条例は現在38自治体議会で制定されているが、市レベルでは初めて制定された伊賀市議会基本条例を主たるテーマとした視察である。
【写真は三セクで運行する伊賀鉄道の上野市駅前の様子、市役所は駅の反対側にある。右は伊賀忍者をあしらった鉄道車両】

2.条例制定の背景と経過

(1)伊賀市自治基本条例が出発点

伊賀市はH16年12月に伊賀市の憲法である「伊賀市自治基本条例」を制定。第5条で「分野別の基本条例の制定に努める」とされ、また第5章で「議会の役割と責務」が定められたことから、議会に関わる基本条例の制定に乗り出すことになる。さらに、自治基本条例が「住民自治の仕組み」として38小学校区単位の「住民自治協議会」(自治組織)を組織することを定め、この住民自治協議会に「諮問権」「提案権」「同意権」「決定権」を権能として保持することを定めている。こうしたことから住民自治協議会の立ち上げの過程で「議員不要論」が出たことから、議員の役割、議会の役割を明確にすることが迫られたことも条例制定の起因となったようである。伊賀市の自治基本条例は、長野市の都市内分権、住民自治協議会の具体化にあたり、モデルとして参考・検討された条例でもあり、注目と検証を要する。


(2)3段階で市民の意見を聴取し条例案作り

H18年5月に議長の私的諮問機関として設置された「議会の在り方検討委員会」(議員7人)で素案づくりが始まる。まず市民と議会の意見交換会(56会場、83団体、約500人の市民が参加)で寄せられた意見をもとに素案をまとめ、次に市内6カ所でのタウンミーティング(住民説明会)を経て議長への答申をまとめ、さらに議会として市民に対するパブリックコメントを実施(85件の意見)。こうした経過を踏まえ、条例の議長私案が作成され、全会一致での採択を求め、7回に及ぶ議員全員懇談会で議論、修正・削除が行われ、最終的な条例案がまとめられる。

(3)3分の2の賛成多数で可決

H19年の12月議会で「22対11」の賛成多数で採択される。3段階で市民の意見を聞き、案作りが進められたこと、結果として全会一致にならなかったことに注目したい。「3分の2」の賛成多数での可決は、議会モニター制度、行政への反問権付与、議会報告会の開催について異論があったことに加え、当時の議長に対する個人的な思惑が作用したことが背景にあるようだ。


3.条例の7つの特徴


(1)第一に、市民との意見交換の場である「議会報告会」の設置。

 議員の6班編成で、38の住民自治協議会を対象に実施するもの。1協議会に対し年1回とし、定例会の終了後に分担して行われており、報告内容は議会での「委員長報告・要旨」を基本にしている。「議員個々の意見や見解は述べない」ことが原則である。「議員は一部団体及び地域の代表でなく、市民全体の代表であるとの自覚と市民の意識の変革、さらに市民への情報提供、説明責任を積極的に進めていく」(議会報告会の基本的な考え方より)という考えによる。


(2)第二は、「一問一答方式の導入」と「行政への反問権の付与」

市民にわかりやすい議会議論と審議論点の明確化のために盛り込まれた。注目される「反問権」は「市長等は議長または委員長の許可を得て、議員の質問に対して反問することができる」(第8条)と規定される。これまでに市長が1回、教育長が2回行使したそうだ。質問の内容を確認するものと対案を求めるものとに大別されるという。議会事務局長によれば、理事者の方で議員に「対案」を求めて答えが返ってくるかどうかも見通しながら、反問権が行使されているという。これには我々一同大笑いだったのだが、反問権は抑制的に行使され、現実的な対応がされているということなのだろうか。


(3)第三は、行政に対し「情報の発生源など7項目」の提出を求めていること

政策の公正、透明性の確保と議会審議での論点情報の形成のためとされる。議員への戒めとしても、この条項が盛り込まれたという。7項目は①政策の発生源②提案に至るまでの経過③他の自治体の類似する政策との比較検討④市民参加の実施の有無とその内容⑤総合計画との整合性⑥財源措置⑦将来にわたるコスト計算。この規定は今のところ具体化されていない。


(4)第四は、「政策討論会」の設置

 二元代表制の一翼を担う議会としての共通認識の醸成を図り、合意形成を得るための仕組みである。議会の合意形成の規定も持ち、「議会は言論の府であることを十分に認識し…議員間相互の自由討議を中心に運営」「議会は…議員間相互の議論を尽くして合意形成に努める」と定めている。「政策討論会」はこれまでに5回開催、議員が案件を提案し、ディベート方式で議論、議員間での認識が深まるという効果を上げているそうだ。三重県議会での「検討会」に相当する規定である。


(5)第五は、「出前講座」の実施

常任委員会、特別委員会の活動の一環として実施されてもの。商工会議所や青年会議所などの申し出により4回行われている。事務局職員は同行せず、議員のみで行っているとされる。


(6)第六は、議案に対する「議員の対応」の公表

議案等に対し賛成しなかった議員の氏名を公表、討論における意見もポイントを紹介している。


(7)第七は、議員定数、報酬の改正を「議員提案」で

議員定数にあたり「人口」だけでなく「面積、財政力、市の事業課題並びに類似市の議員定数と比較検討する」ことを規定。実際に定数見直しがされているが、法定数34人に対し、先の要件を平均すると26人になるところを合併の過渡期であることから2人追加し28人と定めている。


4.最高規範性を明記

 条例第22条で「議会における最高規範であって、議会はこの条例の趣旨に反する議会の条例、規則等を制定してはならない」と規定し、最高規範性を謳っている。三重県議会条例との相違点の一つである。


5.総括的に

(1)やはりここでも、議会報告会などを段取りする議会事務局は大変だそうである。また同席した議員からは「議会報告会など継続することが鍵、議員もより勉強することになる、大変だけれども」と述べていた。


(2)伊賀市の場合は「自治基本条例」と「議会基本条例」が車の両輪として相互に補完しながら規定されている。「自治基本条例」の制定も長野市の課題となるところである。


(3)三重県議会と伊賀市議会との条例の共通点、相違点を整理し、また、他の自治体議会の条例を調査研究し、将来を見越しながらより先進的で市民に理解・浸透できる「長野市議会基本条例」の制定に取り組まなければならない。

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