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09年2月1日
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議会基本条例検討特別委員会で行政視察…その2・三重県議会編


 視察報告その1・福島県郡山市議会|その2・三重県議会|その3・三重県伊賀市議会

三重県議会の議会改革と議会基本条例

1.地方分権の推進役であった北川正恭元県知事(1995年から2003年)の存在と、この知事に対抗するべく議会改革に取り組み都道府県レベルの先導役となったことで知られる三重県議会。議会活性化と議会基本条例をテーマに視察。岡田議事課副課長、原田政策法務監から、三重県議会の概要について説明を受けたのち、質疑・質問方式の多様化(一問一答)、議会基本条例、検討会等による政策提言の強化、住民との意見交換等の開かれた議会運営など4点について調査。

2.質疑・質問方式の多様化について…対面演壇方式、大型スクリーンも

(1)三重県議会の質問方式は、一括質問方式、分割質問方式、一問一答方式のいずれかの選択制で、質問時間は答弁及び再質問を含め1人60分程度とされる。実態は質問議員の9割が一問一答方式を含む分割質問方式を採用しているとのこと。

(2)H15年から都道府県議会では初めての「対面演壇方式」を採用。①二元代表制のもと、知事をはじめとする執行機関との間に緊張感ある関係を築くこと、②本会議を通じて政策決定にかかる議論を尽くすことを目的とする。約1900万円をかけて議場改修が行われた。議員発言用の演壇の新設と待機席の併設に500万円、質問議員の正面から映像を映し出す必要があることから大型映像装置(大型スクリーンを含む)の新設に1400万円である。

(3)大型スクリーンの活用は特筆すべきである。議員席・傍聴席からも質問議員を正面から見ることができる効果の他に、オーバーヘッドカメラを併用し、質問議員が提示するパネル・図表等も映し出される工夫が凝らされている。発言通告の際に資料映写の有無、レーザーポインタ使用有無を記載するそうだ。質問議員の4割強が発言の補助手段としてスクリーンを活用している。

(4)代表質問・一般質問は民放の三重テレビで完全生中継(5000万)、またインターネット生中継・録画中継では、本会議のすべてに加え、常任委員会・特別委員会の中継もH17年9月から実施されている。対面式とテレビ放送との関連は、テレビ局のカメラが議場内の執行部席後方に設置されている。

(5)傍聴人を取り締まることを主眼としていた傍聴規則を改め、禁止制限規定を大幅に見直し、必要最小限としわかりやすい規定にする改革も行われている。

(6)導入から5年たつ中で、議論の対象が明確になったこと、質問により緊張感ができたこと、質問内容がわかりやすくなったことなどが評価されるとともに、答弁時間を含む質問時間の設定が課題になっているとする。傍聴者や議員からは概ね肯定的に受け止められているものの、「形式には変化あるが、事前調整済みの問答シナリオは不変」「議論がかみ合わない。執行部の立場だけ言えばいいというものではない。いいわけや繰り返しが多く再質問の時間がない」との批判の声もあるようだ。まだ改革の余地があるということであろう。

(7)演壇だけで500万円とは驚きだが、県議会だからできることも言えよう。パネル活用及びその映写など「県民にわかりやすい議会討論」のための取り組みは大いに参考にしたいものである。

3.議会基本条例について…議員間討議を制度化、反問権は規定せず

(1)三重県議会基本条例は、H17年の「研究会」による調査研究に始まり、策定した条例素案を基にした県民へのパブリックコメント(意見は3件)、全員協議会、知事との意見交換会などを経てH18年に議員提出議案として上程し、12月20日に全会一致で可決、施行されている。都道府県では初めてで、その後県議会では福島・岩手・神奈川などで制定されている。

(2)「三重県議会の基本理念と基本方向を定める決議」の採択(H15年)

 議会基本条例の先鞭がこの決議である。「分権時代を先導する議会をめざして」を基本理念とし、5つの基本方向を決議している。基本方向は①開かれた議会運営の実現②住民本位の政策決定と政策監視・評価の推進③独自の政策提言と政策立案の強化④分権時代を切り開く交流・連携の推進⑤事務局による議会サポート体制の充実の5点。

(3)制定の目的と必要性

条例の目的を、二元代表制のもと、県民に対して議会の役割や議会と県民との関係、議会と知事等との関係などを説明するとともに、議会のあるべき姿、進むべき方向、議会と議員が負わねばならない責務を示すことで、県民の負託に的確に応え、もって県民福祉の向上及び県勢の進展に寄与すること、とする。

また、地方分権の推進が唱えられる中、県議会の役割を県民に理解されやすいものとすること、議会改革の成果を踏まえ、終わりなき議会改革に取り組むとともにこれまでの取り組みを集大成する必要から制定に至ったとされる。

(4)議会基本条例の構成

 条例は、「前文」と「Ⅰ総則」「Ⅱ議員の責務及び活動原則」「Ⅲ議会運営の原則等」「Ⅳ知事等との関係」「Ⅴ議会の機能の強化」「Ⅵ県民との関係」「Ⅶ議会改革の推進」「Ⅷ政治倫理」「Ⅸ議会事務局等」「Ⅹ補則」の10章、28条で構成される。(資料参照)

(5)条例の特徴(課題を含めて)


①二元代表制のもとでの議会の役割を「住民自治及び団体自治の原則にのっとり、新の地方自治の実現に向け、国や政党等との立場の違いを踏まえて自律し、知事等とは緊張ある関係を保ち、独立・対等の立場において、政策決定並びに知事等の事務の執行について監視及び評価を行うとともに、政策立案及び政策提言を行う」と規定。「二元代表制の意義」について「本則」に盛り込みたかったが「前文」になったとする。「監視及び評価」と「政策立案及び政策提言」を一貫してセットにしている。


②条例の位置づけでは、「議会に関する基本的事項を定める条例」とし、他条例とは並列であると規定する。最近の基本条例が「議会の最高規範性」をうたっている点と相違する。


③「議員の責務及び活動原則」の中で「会派」について「政策立案、政策決定、政策提言等に関し、会派間で調整を行い、合意形成に努めるもの」と定めている。


④「議会機能の強化」に関し、地方自治法に規定のない「附属機関の設置」を規定するほか、学識経験を有する者等で構成する「調査機関」や、議員で構成する「検討会」の議会内設置を規定する。その上で、常任委員会や特別委員会、さらに調査機関や検討会等を通して「議員間討議」に積極的に努めるとする。検討会では特別委員会と異なり、テーマに関しエキスパートが集まり実質的な審議ができる良さがあるとする。


⑤「県民との関係」では「参考人、公聴会等の積極的な活用」「県民との意見交換等県民参画にかかる制度の充実」を定める。52年ぶりに公聴会が開催されたという。


⑥議員による「議会改革推進会議」の設置


⑦知事等の議員に対する「反問権」は規定されていない。


(6)条例制定後の議会改革の取り組み状況

①「開かれた議会運営」では、政務調査費の全面公開、海外視察制度の廃止、議長定例記者会見の実施、学校等への議会出前講座の実施、議案等に対する議員の賛否状況の公表、専決処分の見直しなどを実現。


②「住民本位の政策決定と政策監視・評価の推進」では、まず定例会を年4回から年2回へ、会期は2回で約240日間としたこと。議員間討議の機会が増え、参考人など直接県民の意見を十分に聴けるようになったとされる。また、議長等任期の見直しの検討が進められている。


③「独自の政策提言と政策立案の強化」では、14条の「検討会等」を具体化、「県立博物館構想に対する基本的な考え方」「福祉医療費助成制度見直し」をテーマにした「政策討論会議」を設置し、議会全体として知事に提言を行っている。また、議員提出の政策条例では「地域づくり推進条例」や「食の安全・安心の確保に関する条例」など15本を提案・可決するなどの成果を上げている。さらに「調査機関」として「財政問題調査会」を全国初で設置。議員提出条例の検証を行うための委員会を設置し、7条例を対象に議会としての説明責任を果たす取り組みも始まっている。


④議会事務局のサポート体制として、政策立案等に関わるため、衆議院法制局に研修に出しているそうだ。とにかく議会事務局の仕事量は増加する一方で、議会へのサポート役としては極めて大変であることが率直に語られていた。議会図書室には司書が2名配置され、充実していることも印象的であった。


(7)三重県議会の場合は、条例に何を盛り込むのかという条例制定にかかる課題の整理で参考になるだけでなく、議会基本条例を出発点にして、検討会や調査機関を具体的に動かし、政策立案・提言を実現するとともに、議会としての県民への説明責任に力点を置いた取り組みが条例制定後に着実に進められていることに学ぶところが多い。三重県議会では、「改革」が継続・拡大していることを実感した。


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